第548話 インターミッション、戦利品とレベル45スキル
他の皆とも合流し、無事を喜びあってから戦利品の回収を始める。
特にカメレオントールの死骸は丸々残っているので、何かに使えるかも知れないのだ。堅牢だった宝石鱗はバキバキに割れてしまったけど……ともあれ、ストレージに回収しておいた。細かい鱗の破片もアメジストのようなので、レスミアが箒で掃き集めてくれる。
その間に、妖人族の2人から、ネクロドッペルミラーを回収して、破壊しておいた。
ビガイルの方は、腰にアイテムカバンを身に着けており(大金貨をばら撒いた時の出所)、中には大金貨のみならず、多数の宝石や魔道具が詰め込まれていた。見覚えのある魔道具もあるので、錬金術師協会から窃盗してきた物も含まれているのだろう。これは錬金術師協会へ返すために預かっておこう。
そして、ビガイルの落とした腕輪も回収した。
【アクセサリー】【名称:運命神のバングル型賽銭箱】【レア度:A】
・黒色の宝石ジェットをあしらった、ミスリル合金製バングル。プレート部分に運命神の紋章が描かれており、付与スキルを使って、いつでも奉納が出来る。金食い虫ではあるが、その効果は抜群。
ジェットを魔法の発動媒体にする事で、闇属性魔法の属性ダメージの威力を上げる。
・付与スキル〈運命神への奉納〉〈魔封耐性 極大アップ〉
・〈運命神への奉納〉:アクティブスキル。大金貨を捧げる事で、回数制限のあるスキルの制限を解除する。
・〈魔封耐性 極大アップ〉:状態異常の魔封になる確率を大幅に下げる。
……賽銭箱? ああ、大金貨を納めるせいか。
レア度も相まって強いとは思うが、大金貨しか受け付けないのは使い難い。1千万円を気軽に使えるのは、領主とか王族クラスだけだろう。闇属性の属性ダメージアップも、手持ちに無いので意味は無い。魔封耐性くらいしか使えんなぁ。
そして、もう1人の妖人族、バグラーダだったか? 瞬殺したので覚えていないが、ミスリルの全身鎧を着た重戦士である。ベルンヴァルトから、〈ミラーシールド〉を使ったと聞いて調べてみたところ、左腕に装備していたサークルシールド?が魔道具であった。いや、見た目は壁掛けの丸い鏡なので、盾っぽくはない。縁の装飾からして、インテリアになりそうな代物なのだ。
【武具】【名称:ミラーサークルシールド】【レア度:B】
・軽くて魔力伝達率が良い金属、ミスリルで作られた円盾。表面が鏡の如く磨かれており、光の反射で敵の意表を突くことも出来る。ただ、魔法は反射出来ないので、付与スキルを使用しよう。
ミスリル武具の特徴として、魔力を通していると魔力で盾全体が保護され、抗魔力状態となり魔法攻撃のダメージを和らげる。
・付与スキル〈ミラーシールド〉
・〈ミラーシールド〉:アクティブスキル。スキル使用後、盾で受け止めた魔法を術者へ跳ね返す。範囲魔法の場合は、発動時に効果範囲内に自身が入って居れば跳ね返せる。発動中に割って入った場合は不可。
〈ミラーシールド〉に回数制限が入っていないので、これも永続使用可能な魔道具のようだ。これを先に回収していれば、カメレオントールの魔法も喰らわなかったのに……
取り敢えず、タワーシールドを失ったベルンヴァルトへと貸し出しておいた。余程嫌な敵だったのか、嫌な顔をされたが、鑑定結果を見せると渋々受け取ってくれた。
「いや、壁掛けの鏡みたいで、俺にゃあ似合わんだろ」
「ふむ、年代物を思わせる装飾であるが、美しい鏡ではないか。私は良い物だと思うぞ」
ルティルトさん(武具好き)の目利きによると、今風ではないがアンティーク調で良いらしい。鏡を覗き込み、映り具合や装飾を見る目は、如実に『欲しい』と訴えかけているよう。ただ、沢山ある戦利品の所有権は、時間がないので後回しだな。盾を失ったベルンヴァルトを優先として持たせておいた。
その他、ミスリルの全身鎧も欲しい。ただ、剥ぎ取っている時間は無いので、ストレージに鎧だけ入らんかな?と試したところ、遺体が丸ごと格納された。生物は入らない筈なので、遺体なら良いらしい。
あまりゆっくりと出来ない状況なので、ありがたく使わせてもらおう。妖人族の2人だけでなく、カメレオントールに頭を喰われた騎士団員の遺体も回収しておいた。勇敢に戦い、亡くなった後も時間稼ぎをしてくれた勇者達である。このまま野晒しにするには忍びないからな。
現場周辺の遺体と遺留品を回収し、ストレージのフォルダを分けておいた。犯罪者である妖人族が混ざらないように、隔離したとも言う。
諸々回収し終えて、仲間の元へ戻る。すると、レスミアが誰かに抱き着いて居るのが見えた……うさ耳が見えるのでプリメルちゃんか。無事だったようだ。
しかし、駆け寄ってみると、重苦しい雰囲気が漂っていた。レスミアやピリナさんは涙ぐんでいるし、テオも左手で右肘を押さえたまま俯いている。よくよく見ると、テオの鎧はボロボロである。ピリナさんの法衣も破れたままであるし、かなりの激戦だったようだ。
テオは俺が戻ってきた事に気が付くと、チラリと目を向けた後、下を向いたまま話し始めた。
「プリメルの声が出ないんだ。さっきの戦闘で喉を切られたみたいでな……俺も右腕が動かない」
「私がもっと早く〈ヒール〉を掛けてあげていれば……」
ピリナさんも涙声で話す。
そこまでの重傷だったとは……確認する暇もなく〈ヒールサークル〉を投げただけで、放置したのは不味かったか?
集まっている人達の中に、救助を頼んだ司教のおじさんが居たので目を向けると、首を振られた。
「〈キュア〉でも治りませんでしたからな。怪我ではなく精神的なものかも知れませぬ。
どちらにせよ、後日〈リジェネレイト・キュア〉の治療を受けた方がよろしいかと」
「ああ、〈リジェネレイト・キュア〉を使ってもらえるよう、俺からも領主様にお願いするからさ。気を落とすな、諦めるにはまだ早い……」
そんな慰めの言葉しか出てこない。すると、ソフィアリーセが前に出て、プリメルちゃんの頭を撫でた。慈愛に満ちた顔ながら、貴族として堂々と宣言する。
「ええ、領主の娘として、負傷者のケアをすると約束しましょう。街を守るために戦ってくれた貴方達のお陰で、沢山の住民が守られたのです。レア種の魔物と賊から、時間を稼いでくれた事を感謝致します。
……しかし、未だ外では戦闘が続いているようです。貴方達はギルドへ避難しなさい」
「お心遣いありがとうございます。見ての通り戦える状態ではありませんので、御前を失礼します」
テオはソフィアリーセの前で膝を突き、貴族の礼をした。そして、立ち上がって背中を向けてから、顔だけ俺の方へ向ける。
「ザックスには無用な心配かも知れねーけどよ。あんまり無茶するなよ、俺みたいになるからよ。
……もう少し遅けりゃ死んでたわ、助けに来てくれてありがとな」
「ああ、こっちも間に合って良かったよ! 傷を治した後にでも、また飲み会しようぜ!」
テオは動く左手を上げて手を振り返すと、プリメルちゃんとピリナさんを伴って去って行った。
いや、ダンジョンギルドはそれ程離れていないので見送るのは良いが、戦闘力が無くなったテオ達だけでは少し心配だ。どの道、外壁上に向かうのでスロープへと向かわなければならない。同じ方向なので、劇団員の皆さんを先導しつつ、テオ達の後を追った。合流せずに、後ろから見守るくらいは良いよな。
今回の戦闘で高レベルの敵を3体倒し(バグラーダ60、ビガイル60、紫水晶獣カメレオントール62)、レベルが3上昇した。その前の道中でも魔物を討伐して1レベル上がっていたので、計4上がった事になる。
その他、各ボスを倒した時にセットしていたジョブが上がっているのだが、コロコロ変えていたのでどのタイミングで上がったのかは把握していない。取り敢えず、現状は以下の通り。
・基礎レベル44→48 ・アビリティポイント51→53
・騎士レベル44→48 ・魔法戦士レベル44→48
・ニンジャレベル40→46 ・トレジャーハンターレベル41→47
・司祭レベル40→45 ・罠術師レベル40→45
・賭博師レベル40→45
騎士レベル45では新しく2つのスキルを習得した。一つはカメレオントールにカウンターした〈イミネントストライク〉。そして、もう一つは、防御スキルである。
【スキル】【名称:イミネントストライク】【アクティブ】
・攻防一体のカウンタースキル。敵の攻撃を盾で受ける直前にのみ使用可能になる。そして、盾で受けた威力と同程度の力で相手の武器(魔物の攻撃部位を含む)を弾き、体勢が崩れたところに手持ち武器で反撃する。
【スキル】【名称:インターベンション】【アクティブ】
・味方1人に対して発動できる。戦闘終了時まで、対象が受けるダメージの半分を肩代わりする。
仲間を物理的に庇うのではなく、ダメージだけ請け負う防御スキルだな。防御力が低いけど前に出て踊るフィオーレとか、精神力の補正が低いベルンヴァルトやルティルトさんを魔法から守る形になるだろう……ただ、便利だからといって、複数人に使うのは不味い。範囲魔法を喰らった場合は、俺のダメージが倍増する事になるからである。
理想は大ダメージを受けそうになる直前に〈インターベンション〉を使用する事だけど、咄嗟に使えるかどうかは難しい。
魔法戦士レベル45では新しく2つのスキルを習得した。一つはカメレオントールの火属性を弱点に変えた〈エレメント・ガードキル〉と、もう一つは珍しい回復スキルである。
【スキル】【名称:エレメント・ガードキル】【アクティブ】
・魔剣術を発動中のみ発動可能。剣に込められた全魔力を消費し、同属性の剣閃を飛ばす。これに当たった敵は、剣閃と同じ属性の耐性が一段下がる。
消費する魔力量が多い程、耐性を下げる効果時間が長くなる。
【スキル】【名称:エレメント・メディヒール】【アクティブ】
・魔剣術を発動中のみ発動可能。対象に〈ヒール〉を掛け、更に全ての状態異常の症状を軽くする。
怪我を治しつつ、状態異常も緩和するダブル効果のスキルである。カメレオントールの雷魔法で麻痺った時に、これを使う事も出来たのだけど、〈エレメント・ガードキル〉で魔剣術を使い切った後だったので、直ぐには使えなかったんだよな。
司祭と罠術師をセットしていたので、〈遠隔設置〉〈ディスパライズ〉の方が早かったのである。まぁ、それも〈無充填無詠唱〉で即連打出来るからの判断だ。もし、魔剣術の魔力が残っていれば、〈エレメント・メディヒール〉の方に軍配が上がっただろう。ただ、『症状を軽くする』なので、過信は出来ない。麻痺が治るのに何回掛けなければいけないのか、データ取りが必要だな。二日酔いに効く〈ディスポイズン〉と比べてみても良いかも?
ニンジャレベル45では新しく2つのスキルを習得した。一つはビガイルの逃走を邪魔した〈多連装手裏剣の術〉と、もう一つは捕縛スキルである。
【スキル】【名称:多連装手裏剣の術】【アクティブ】
・無属性の魔力手裏剣を生み出し、連射する。基礎レベルの半分の数まで連射する事が可能であるが、威力は低い。敵の牽制用やヒット数稼ぎに使おう。
【スキル】【名称:縛鎖の術】【アクティブ】
・縄や鎖に魔力を込めて投擲し、命中した対象を自動で縛り上げる。魔力を沢山込めると、芸術的に縛る。
40層のボス、チェーンヒュドラのドロップ品に似た効果のスキルである。ブラックスネークウィップの〈
ビガイルが逃げる際、〈多連装手裏剣の術〉とどっちを使うか迷ったのだが、咄嗟に投げられる縄なんて身に着けていないので、見送った次第である。ストレージから出す時間があれば、こっちでも良かったな。
……『魔力を沢山込めると、芸術的に縛る』部分が、少し気になるけど。
トレジャーハンターレベル45では新しく2つのスキルを習得した。
【スキル】【名称:サーチ・コンシールドアー】【アクティブ】
・〈敵影表示〉内にある隠された扉を感知出来るようになり、マップにも表示する。
一見して分からないように偽装されているのならば、ダンジョン以外でも効果はある。
所謂、隠し部屋を発見できるスキルだろう。墓地フィールドにあったような、墓の下の隠し部屋とかな。宝箱を発見できる確率が高いので、非常に助かるスキルである。街中でも発動するのは驚きだけど。(※後日、自宅でも隠し扉を発見。レスミアの下の部屋のクローゼットに……)
【スキル】【名称:アサシンアロー】【パッシブ】
・敵に察知されていない場合、矢で与えるダメージが大アップ。更に、急所を攻撃した場合、低確率で即死させる。
また、周囲が暗い状態で弓矢を扱う場合、もしくは100m以上離れた標的を狙う場合、矢を射る音すら消し去り、即死確率を中にアップする。
〈不意打ち〉の弓版である〈スナイプアロー〉がパワーアップしたようだ。暗闇からの暗殺と、遠距離からの狙撃による暗殺、名前通りのスキルである。まぁ、俺は使わないので、品評はレスミアか他の人に任せよう。闇猫と同時に使えたら、〈宵闇の帳〉で暗闇からの〈アサシンアロー〉コンボになるのになぁ。残念。
司祭レベル45では新しく2つのスキルを習得した。
【スキル】【名称:キュア】【アクティブ】
・HPを大回復する。あらゆる外傷を癒し、骨折すら正常な状態へと戻す。ただし、神経を断裂するような大怪我には効き難く、外側の怪我は治せても、内部の神経には効果が薄い。また、手足などの欠損も再生出来ない。
【スキル】【名称:ディスブラインド】【アクティブ】
・対象の身体的な盲目の症状を治し、正常にする。盲目の原因が魔法的、毒物的、肉体の損傷的であれ、盲目に至るものであれば、何にでも効く。
〈ヒール〉が20%回復なのに対し、〈キュア〉は50%回復らしい。骨折も治せるのは嬉しいのだが、テオ達の状況を鑑みると『神経には効果が薄い』とはっきり書かれているのが痛いな。
罠術師レベル45では新しく2つのスキルを習得した。
【スキル】【名称:崩落の罠】【アクティブ】
・指定箇所の地面に、直上の天井が崩落するスイッチを仕掛ける。狭い通路の場合、道を塞いでしまうほどの崩落が起きる為、仕掛ける場所は考えて使おう。
罠術もどんどん威力が大きくなってきたな。道を塞ぐのは〈ロックフォール〉も同じであるが、あっちは属性ダメージが入るのに対し、〈崩落の罠〉は純粋な物理ダメージのみである。その為、倒すためのスキルではなく、敵の群れを分断するとか、逃げる時の足止めが主な使い道になると思う。
【スキル】【名称:ビーストキラー】【パッシブ】
・獣系の敵に攻撃する場合、そのダメージを増やす。
なお獣系とは、全身に毛皮を持ち、4足歩行の哺乳類に近い者と定義する。
闇猫が持っている〈エアリアルキラー〉の獣版だな4足歩行の獣なので、対象は多いと思う。イメージ的には、猪とか鹿を狩る猟師さんだろうか? 猟銃じゃなく、罠で獲る方な。
賭博師レベル45では新しく2つのスキルを習得した。1つはビガイルが使っていた、ズルいスキルだ。
【スキル】【名称:運命神の加護】【アクティブ】
・ギャンブルスキルの結果が出た直後のみ、使用可能となる。その結果を無効化し、最初からギャンブルスキルをやり直しする。ただし、加護が頂けるのは4時間に1回である。
また、いかさま系スキルを使用した後は、このスキルは使用できない。いかさましても勝てない輩には、加護など与えません! 厳正なる闇の神が見逃してくれるのは1回のみです!
……ばっちりと『いかさまは1回のみ』って書いてあるんだな。いや、闇の神様、甘くね?
まぁ、振り直しが強いのは実感したので、自分が使う分には頼りになる。具体的には、ダイエットカードのチャンスが増えた。
【スキル】【名称:ダイスジャベリン】【アクティブ】
・10面ダイスを振り、出目の2~0に対応する属性のランク4貫通型単体魔法で攻撃する。ただし、出目が1だった場合、術者HPに3割のダメージを与える。
〈ダイスマジック〉はランク1の単体魔法だったが、そのジャベリン版だな。スキルなので、魔法陣を充填するより早く使えるのが利点ではあるが、弱点を突けるかどうかギャンブルなので結局使わない。純正の賭博師にとっては、数少ない攻撃方法なのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます