第481話 白銀にゃんこメンバーのレベリングと助っ人2
本日は白銀にゃんこの定休日である。予てより計画していた通り、白銀にゃんこのメンバーのレベリングへと出かけた。フィオーレはレッスンに出かけて行ったので、6人でパーティーを組み、40層のボス周回をする。
ショートカットの段差を降りる際は、輪切り丸太を加工した踏み台で、降りてもらった。本来なら、飛び降りた方が早いのだが、メイド服な女性陣はスカートなので、配慮した次第である。以前から、2mの段差を降りるのは怖がっていたからな。
ただ、折角用意した1mの高さの踏み台も、フロヴィナちゃんは恐々と降りている。
「……よっとっとっと、セーフ~。ザックス君、コレもう一個作って階段にしてよ~。女の子には微妙に高いって~」
「レスミアのお墨付きは貰ったんだけどな。はいはい、高さの違う丸太を連結して、簡易的な階段にするか」
「ミーアみたいに跳び回るのは、一般人には無理だからね!
ついでに、私はレベル35の〈スティッキーペースト〉だけで良いから、途中で帰りたい~」
「それは、却下。3、4週するだけなんだから、頑張ろう。それに、屋台の飾り付けに〈ネイルガン〉があると便利かもだぞ」
「え~、工作系は手伝ってよ~」
「はいはい、ヴィナはしゃんと歩きなさい」
ダンジョンが苦手なフロヴィナちゃんなので、籠入り娘を卒業しただけでも、偉いと思おう。既に、段差と坂道のアップダウンで疲れているようだけど、ベアトリスちゃんが背中を押して、えっちらおっちら坂道を登っていく。
踏み台を回収してから、彼女たちを追い越して、次の段差へと飛び降りる。そこに先程の踏み台と、それより高い丸太と、低い丸太を準備する。高さが合いそうなのを探して、ストレージから出し入れ。高さを合わせてから、聖剣で縦に切り裂き、断面に〈スティッキーペースト〉を塗る。
そんな作業をしていると、フォルコ君が段差を飛び降りてきて、手伝いを申し出てくれた。
「手伝います」
「それなら、そっち側を持ってくれ。二つをくっ付けるから」
「はい、せーのっ!」
因みに、彼の執事服も花乙女の花弁製である。黒に染められているので、花乙女の花弁には見えず、アドラシャフトの執事服にそっくりである。もちろん、防御力は段違いに良いので、小角餓鬼程度なら十分に戦えるだろう。
ただし、
ざっくばらんに階段……踊り場が女性の足で4歩もあるくらい広いので、階段と言っていいのか微妙ではあるが……を作成し、足取りが軽くなったフロヴィナちゃんと共にボス部屋へと歩みを進めた。
ボスであるチェーンヒュドラも、安全策でサクッと倒す。
具体的には、俺が〈アシッドレイン〉と〈遠隔設置〉の〈トリモチの罠〉で、弱体&拘束。レスミアが、お供の馬頭鬼を倒しに行く。最後、ベルンヴァルトが紅蓮剣でチェーンヒュドラを殴り倒せば終了だ。
特殊武器に頼った戦い方ではあるが、非戦闘員の安全を考えたら、やむを得ない。
そんなレベリングを3周し、フォルコ(新興商人レベル40)、ベアトリス(料理人レベル40)、フロヴィナ(熟練職人レベル40)に到達した。そのついでに、俺の残りのジョブも全て上げ終わった。
本日のレベル変動は以下の通り。
・基礎レベル41 ・アビリティポイント50
・戦技指導者レベル39→40 ・鍛冶師レベル38→40
・植物採取師レベル37→40 ・採掘師レベル37→40
戦技指導者レベル40では、新スキルを2つ覚えた。
Lv 40:柔術の心得【NEW】、刀剣術の心得【NEW】
【スキル】【名称:柔術の心得】【パッシブ】
・格闘技の中でも投げ技や関節技、捕縛技、合気など相手と組み合う行動全般を補正する。
相手を傷付けずに取り押さえる事も、逆に破壊するように投げる事も、術者の心根次第である。
武僧で覚えた物と同じなのだが、今思うとウベルト教官から教わった
成り立ちは古いとは聞いたけれど、武僧が知られていないのに、対人技に特化した武術を教えている辺り、このスキルから編み出されたものだったりしてね。
【スキル】【名称:刀剣術の心得】【パッシブ】
・剣の中でも斬撃に特化したサーベル、刀等の扱いを補正する。刃筋を立てて切り裂き、身体の重心を上手く使うことで柳の如く受け流しを行う。武器が破損し難くなる。
剣客が覚える〈抜刀術初伝〉は、刀のみの取り扱い補正だったが、こっちはちょっと違うようだ。サーベルもだが、剣客以外が刀を使うための補助なのかね?
〈抜刀術初伝〉と〈刀剣術の心得〉の両方を付けておけば、刀の扱いがより上手くなるかも知れない。機会があれば試してみるか。
鍛冶師レベル40では、新スキルを2つ覚えた。
Lv 40:アイテムボックス中【NEW】、炉内温度調整【NEW】
【スキル】【名称:炉内温度調整】【アクティブ】
・鍛冶用の炉にのみ使用可能。MPを消費して温度の調整、維持が出来る。
ただし、常温から温度を上げるには、かなりのMPが必要となる。熱源は他に用意し、スキルは補助的な物と思おう。火魔法の亜種。
鍛冶用の炉なんて持っていないので、試しようがないな。まぁ、ネタにするならリウスさん辺りに聞くしかない……領主と王族からの公的資金が投入される事になって、フォルコ君に説明に行かせたけど、あれからどうなったのかね?
奥さんのラーミナさんと相談して決めると言っていたらしいが、折を見て様子を見に行った方が良いかもな。
植物採取師レベル40では、新スキルを2つ覚えたのだが、どちらも既知なので割愛する。
Lv 40:アイテムボックス中【NEW】、品質管理【NEW】
採取師レベル40では、新スキルを2つ覚えた。
Lv 40:アイテムボックス中【NEW】、レア魔鉱脈狙い【NEW】
【スキル】【名称:レア魔鉱脈狙い】【パッシブ】
・鉱石系の素材の中でも、レア度の高い鉱石が出やすくなる。ON/OFF切り替え可能。
いつもの確率操作系のスキルだ。レアと名が付いているが、宝石が出やすくなる訳ではない。普通の金属系の鉱石の事だろう。
階層が深くなる程に、レア度の高い鉱石や金属の含有量が増えるのは、ご存知の通り。ただ、31層から産出し始めたウーツ鉱石や黒魔鉄鉱石などは、それほど多く出ない。40層くらいまで来ても、下位である銀鉱石や鉄鉱石は出るのだ。このスキルは、(現時点では)ウーツ鉱石や黒魔鉄鉱石が出易くなるのだろう。
これにて、レベル40の新スキル確認を終了する。今回の目玉はニンジャジョブと、〈スキル鑑定〉かな?
レベルが10の倍数なので、ステータスアップするジョブが多く、若干大人しめだったと思う。まぁ、レグルス殿下のご所望の複合ジョブの解放条件が得られたから、早めに報告書を作成しないとな。
明日、明後日は雪山攻略、明々後日は伯爵邸にて婚約承認なので、今日中にまとめないと……
レベリングが終わった後は、帰宅して昼食、午後からは各々祭りの準備に取り掛かり始めた。
フォルコ君が屋台の実物を先に見せてもらって、採寸をして来てくれたので、それを基に看板や飾り付けの作成だな。これはベルンヴァルトが木材を切って、フロヴィナちゃんが絵を描く。メインは白銀にゃんこの白猫なのだが、お祭り仕様で周りの図案を少し変えるらしい。寝ころんだ白猫が店名を抱え、その左右に唐揚げ棒と綿菓子を描いて、何を販売するのか見て取れるようにするらしい。
スティラちゃんはキッチンで、綿菓子機の飾り付けをしている。透明のカバーに商品説明を付けたり、小物を取り付けたりと、女性や子供受けしそうなのをお願いしておいた。飾りの小物はナールング商会から借りて来たらしい。
同じくキッチンでは、料理人コンビが続々と唐揚げを量産していた。ただし、二度揚げする内の1回揚げただけの物である。ストレージで時間を止めて保管できるとはいえ、お客さんからしたらアイテムボックスから取り出した作り置きに見えてしまう。その為、屋台で揚げ直し、熱々カリカリの状態で販売するのだ。
ついでに、俺が作った天ぷら鍋(加熱機能付き)の試運転も兼ねている。今のところは順調に稼働しているので問題は無さそうだ。
俺はキッチン台の端で、報告書を書きながら、唐揚げを回収していた。お祭り用と銘打ったフォルダに、味付け別、お肉別(鶏とコカトリス肉)で分けておく。手持ちのコカ肉を全て使ってしまう程の量であるが、補充の当てがあるから問題ない。テオ達が仕入れてきてくれる筈であるし、普通の鶏肉はナールング商会が近隣の村から、お安く仕入れてくれる。
まぁ、作り過ぎて余ったら、ベルンヴァルトの晩酌のお摘みや、フィオーレに回せば良い。あまり店の食材と、普段の食事の食材を混ぜてしまうと、原価計算が大変になるけど……フォルコ君に任せよう(丸投げではなく信頼)。
串に刺して、唐揚げ棒にするつもりなので、大きさが均一でないと困る。ただ、大量に作られる唐揚げの中には、調理の最中に規定サイズよりも小さくなってしまった物も出来てしまう。そういった規格外品は、一口大のお摘み唐揚げに再生された。
外の木工仕事が終わったベルンヴァルトが、匂いに誘われるようにして一杯やり始める。ただ、酒盛りをしたがったのは、他にも居た。
「うっま~~! 何これ?!ヤバい! こんなの絶対、お酒が美味しくなるじゃん!」
「だよね!だよね! よ~し!〈アイテムボックス〉! エール筒竹は沢山あるから、これで宴会だよ!」
「はいはい、レルフェとヤパーニは手伝いに来たんでしょ。先にオーナーのザックス君に挨拶して、手伝ってからね?」
翼を広げてテンションを上げていた天狗族の2人は、呆れた顔のフロヴィナちゃんに引っ張られて、俺の方へとやって来た。そう、彼女達は屋台の追加人員である。29層の採取地で酒盛りをしていた天狗族のギャル娘だな(※329話)。雀の羽根のレルフェちゃんに、ウグイス色の羽根のヤパーニちゃん。郵便配達が仕事で、ウチに配達する内にフロヴィナちゃんと仲良くなっている。
フロヴィナちゃんは知り合いの奥さんを誘う、などと言っていたのだが、先日手紙を届きに来たヤパーニちゃんが面白がって立候補したそうだ。
取り敢えず、俺からも簡単に説明する。最初と最後の2日という中途半端な日程である事や、お給料は売上次第、勤務内容等を話したところ、二人でハイタッチをして喜んだ。
「アハハハッ、毎年遊び回って飲み回って、すっからかんになっちゃうからね~。お給料貰えるし、屋台をやる側も面白そうだから、いーよっ!」
「あー、レルフェ、初日のアレを忘れないでよ。アタシらレースに出るから、その時間だけ外してね」
「レース? もちろん、その時間帯は外しておくけど、どの種目に出るんだい?」
騎士団が主催するレースは、いくつかの種類があると聞いている。街中の大通りを使ったレースや、街の外に作られた障害物レース、南の外壁(スロープ)を登るレース。レース以外だと、南の門外で行われる騎士同士の
小柄な天狗族の女の子が参加するには、厳しいような気がする。馬と一緒に飛ぶのも、体格差で危ないだろうに。そんな疑問を返すと、二人は甲高い声で笑う。そして、その場で手を握り合ったままホバリングして浮かび上がり、くるりと横に一回転してポーズを決めた。
「ふっふっふ~、アタシらが出るのは、スカイループルーフに決まってんじゃん! 天狗女子の花形だよ!」
「まあー、賑やかし要因だけどね。可愛い衣装で飛び回るんだよね~」
初めて聞く競技?だったので詳しく聞いてみると、商業ギルド主催の空を飛ぶレースらしい。
街の建物の屋根に取り付けた大きな輪っかを、順番に潜って早さと芸術点を競う。芸術点とは見た目や衣装、それに輪っかと輪っかの間でのパフォーマンス(宙返り等)で決まる。
なので、商業ギルド所属の天狗族の若い子は、強制参加らしい。
二人の私服を見る限り、ダボダボのセーター(ただし、胸元と翼がある背中はぱっくり空いている)に、短パンである。
……う~ん、健康的な足とかエロさはあるけど、そっちより寒そうなのが気になる。冬場でもミニスカなJKかな?
本人達は、これで飛び回っているから大丈夫なんだろうけど。
「了解したよ。レースの……スカイループルーフの順番が決まったら教えてくれよ。手の空いた人で応援に行こう。
取り敢えず今日は、祭りで販売する綿菓子の作り方を覚えて貰って、その後は屋台の飾り付けの手伝いを頼む。
頑張ったら、今日の夕飯は御馳走するよ」
「わーい! さっきのカリカリのお肉で、お酒飲みたい!」
「ちょっぱやで、終わらせよう!」
……キャッキャと騒ぐのは女の子なんだけど、酒飲みなのはオッサン臭いなぁ。
続きは綿菓子担当のスティラちゃんにお願いした。すると、二人は文字通り飛んで行く。
白銀にゃんこの常連でもあるレルフェとヤパーニは、当然顔見知りだったようで、スティラちゃんを二人掛りで抱えて、空中で撫でまわすのだった。
「スティ猫ちゃんも宜しくね!」
「にゃにゃにゃ! 天狗のお姉ちゃん達、撫でるのは良いけど、空は飛ばないでにゃ!」
「アハハ! 怖くない、怖くないよ~。ほら、アタシの翼も、もふもふでしょ~」
……猫と翼のダブルもふもふ!? そういうのもあるのか?!
興味深く見させて頂いていると、こっそり来ていたベルンヴァルトが俺の肩を小突いて囁いてくる。
「(おいリーダー、アイツらと飲むのは良いが、王都の高級酒は出すなよ。天狗族はザルみたいに飲むからな、安いワインやエールで十分だぞ)」
「(……ああ、了解、了解)」
一瞬、ザルなのは鬼人族も同じだろうと思ったが、黙っておく。まぁ、レグルス殿下のお土産の酒に関しては、使いどころを決めたから、普段の宴会に使うつもりはないさ。
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