第479話 ニンジャステと鎖帷子とルール違反再び
レベル40にまで上げたニンジャのステータスは以下の通り。
【複合ジョブ】【名称:ニンジャ】【ランク:2nd】解放条件:軽戦士Lv40、トレジャーハンターLv40。二刀流で魔物を10体以上倒す。50人(もしくは魔物50匹)以上から注目を集める。高い所から名乗りを上げる、もしくは決め台詞で注目を浴びる。
・忍者ではなく、派手さを好む方のニンジャ。目立つ行動を取ると強化されるため、派手に無駄な行動をしよう。
その目立ちやすさから、敵の注目を引きやすく、盾役をすることも出来る。ニンジャらしく高いステータス補正があるため、忍術と敏捷値を駆使して、戦場を盛り上げよう。
また、ジョブ特性として装備重量が軽く、見栄えが派手な程に、スキル後の硬直が短くなる。
・ステータスアップ:HP中↑、MP小↑、筋力値大↑、耐久値中↑、知力値中↑、敏捷値大↑、器用値大↑【NEW】
・初期スキル:軽戦士スキル、トレジャーハンタースキル、二刀流の心得、目立ちたがり屋、名乗りの流儀
・習得スキル
Lv 5:投刃術、アイテムボックス小
Lv 10:毒耐性大アップ、疾駆
Lv 15:火蜥蜴の術、鎌鼬の術、釜蛙の術、土竜の術
Lv 20:麻痺耐性大アップ、緘黙耐性大アップ、知力値中↑
Lv 25:空蝉の術、着地爆破演出
Lv 30:連撃の真髄、強奪
Lv 35:波状の責め立て、幻影乱れ切り
Lv 40:器用値大↑【NEW】、壁天走り【NEW】
今日覚えたのはレベル25以上のスキルである。先程の戦闘の中で、検証していないのはレベル30の2つのみ。ただ、どちらもパッシブスキルなので仕事はしてくれていた。
【スキル】【名称:連撃の真髄】【パッシブ】
・敵に連続攻撃を当てた場合、回数が増える分だけ攻撃力を増加させる。また、効果が続く間に限り、一連の行動全般を補正する。この時、パーティーメンバーが同一の敵を攻撃した分も含めるが、攻撃力増加の効果は術者のみ。
なお、連続攻撃とは、攻撃の間隔が5秒以内と定義する。
軽戦士や武僧で覚えたスキルの上位互換のようだ。パーティーメンバーの攻撃も含む事と、連続攻撃の受付時間が3秒から5秒へ増えている。そのお陰で、連撃効果を維持し易くなっているようだ。
二刀流なので、攻撃間隔が早く連撃しやすい。リーチの短さからくる攻撃力不足を補ってくれるのだろう。
【スキル】【名称:強奪】【パッシブ】
・魔物を攻撃した際、ドロップ品を中確率で盗み、自身のアイテムボックスに格納する。1体に付き1つまでであるが、討伐時のドロップ品は普通に手に入る。
確率判定は攻撃毎にあるので、手数を多くして盗もう。(レアドロップ品は0%なので盗めません)
チェーンヒュドラを倒した後にストレージを覗いてみると、ブラックスネークウィップと大銅貨5枚(牛頭鬼分)が、【強奪】と名の付いたフォルダに格納されていた。
所謂『ぬすむ』系のスキルの様である。魔物に限定されており、盗めるのもドロップ品に限るのは、犯罪に使われないためだろうか?
まぁ、窃盗を繰り返すと、灰色ネームになると聞くし、あくまでダンジョン攻略用なのだろう。レアドロップが盗めないにしても、単純にドロップ品が増える分だけ付け得だな。
……トレジャーハンターの代わりに付けっぱなしにするのも捨てがたいが、目立つ言動が増えるのも困りものなんだよなぁ。
ニンジャを使用してみた総評であるが、回避タンク兼サブアタッカーと言ったところだろう。
ちょいと中途半端感はあるが、注目を集めてステータスアップしてから戦闘する。万が一攻撃を受けても1回だけ〈空蝉の術〉の保険がある。そして、召喚系忍術による魔法攻撃に、スキルを連打する爆発力もある。
今までの複合ジョブ、魔法戦士や武僧、剣客と言った純アタッカーに攻撃力は及ばないが、トリッキーに戦場を引っ掻き回す事も出来るだろう。
一つ気になるのはニンジャ餓鬼が使っていた『カウントを増やして防御無視攻撃』を、まだ覚えていない。もっと、高レベルで覚えるのかね?
その後も周回と検証を続けた。
〈スキル鑑定〉で気になっていた〈魔法生物特攻〉を試すべく、紅蓮剣を使ってみたところ、チェーンヒュドラにも効果がある事が分かった。その効果は、振り回した紅蓮剣の刀身が、蛇首に当たれば動かなくなる。それどころか、首の打ち下ろしを紅蓮剣でガードしても、効果があったくらいだ。剣を上に掲げて受け止めたら、攻撃して来た首が動かなくなって地面に落ちたのだからな。
弱点のコアなんて刀身で軽く叩いたら、粉々になって自壊した。特攻過ぎる。
〈加重〉に関しても試した。どうやら、魔力を流しながら倍率を念じるだけで重くなるようだ。見た目が変わらないのに、重くなるのは少しズルいかも? ただし、俺には重すぎて、2倍でも扱えない。振り下ろす時に〈加重〉するのが精一杯だった。
まぁ、素の状態で牛頭鬼のタワーシールドを叩き割って、本体も唐竹割りするアダマンタイト製武器に、〈加重〉は過剰戦力だと思う。
更に、ブラストナックルの『魔喰抜剣』も試したところ、ブラストナックルのガントレット部分が巨大化し、甲の宝石からは半分になった紅蓮剣が生えて来た……ただ、これはハズレだ。正確には俺には重すぎる。ミスリルソードの時と似ているが、あっちは〈剛腕〉と〉〈軽量化〉があったから、楽に扱えたのだろう。
どちらも無い紅蓮剣では、左右に分かれて重量が半減したとしても、両手にロングソード大の紅蓮剣は重すぎたのだ。まるで、両手に50㎏くらいのダンベルを括り付けられたかのよう。頑張れば腕を上げる事は出来るが、二刀流にする意味がないな。これならば『魔喰抜剣』せずに、紅蓮剣の付与スキルを取り込んだブラストナックルのままの方が、戦い易いまである。
取り敢えず、俺の筋力値がAになるまでは、この形態は封印だな。紅蓮剣を使う時は、大人しくベルンヴァルトに任せよう。
「あっ! 防具っぽいのが出て来た!」
10層ごとのボスが落とす宝箱は、あまり良い物は入っていない。30層、40層は鉄の宝箱になり、中身が増えている気がするものの、結局は同階層で採れる素材かドロップ品だからだ。
まだ周回慣れをしていないフィオーレは、喜んでワクワクしながら宝箱を開けているので任せていたのだが、当たりが出たようである。華やいだ声に引かれて見に行くと、同じく見に来ていたレスミアと二人で宝箱の中に手を入れるところであった。
二人が持ち上げたのは、肩パッド付の黒いTシャツ? いや、揺れる裾が軽い金属音を鳴らし、向こう側がチラチラと透けて見える事から察しが付いた。俺も初めて見るが、ニンジャにはピッタリな奴である。
「おっも! 何これ? 鉄のワンピ?」
「いえ、これはチェーンメイルじゃないかしら?」
「だね。チェーンヒュドラのレアドロップ、ヒュドラチェーンメイルみたいだよ。
これだけ周回して出ないと思ったけど、付与スキルが付いているから、ドロップ率が低かったんだろうな。
休憩所で詳しく見ようか」
二人が持っていたチェーンメイルをストレージに回収し、転移魔法陣で休憩所へと移動した。
休憩所のテーブルにヒュドラチェーンメイルを広げ、鑑定結果を皆に見せる。
【武具】【名称:ヒュドラチェーンメイル】【レア度:C】
・チェーンヒュドラを模した黒魔鉄製のチェーンメイル。プレートメイルよりは軽く、斬撃に強い為、重装備を出来ない者に好まれる。また、肩や背中にブラックスネークウィップを装着する事により、敵の攻撃を自動防御する。
※ブラックスネークウィップは別途用意して下さい。
・付与スキル〈
・〈自動操鎖〉:〈念意操鎖〉を持つ鎖にのみ効果がある。魔力を流している間、装備者への敵意を感じ取り、攻撃を鎖で自動的に防御する。
……チェーンヒュドラを模したって、肝心の首は別売りですか?
いや、沢山ドロップして余っているから良いけどさ。
そんなツッコミはさておき、鑑定結果を紙に〈マニュリプト〉で書き写して見せる。すると、何かを思い出したように、レスミアが手を叩いた。
「あ~、そういえばギルドの中で、背中に鎖をジャラジャラ着けた探索者が居ましたよ。この防具だったのかも知れません。……でも、身に着けている人は少ないから人気は無いのかも?」
「いやいや、チェーンメイルってのは、下に着込む防具だからな。トレジャーハンターや司祭、魔道士が装備して、上から法衣やマントを羽織るから、見えなかっただけだろ」
騎士団所属の僧侶はジャケットアーマーではなく法衣を着るので、中にチェーンメイルを身に着けていたとベルンヴァルトが教えてくれた。
なるほど、重装備を出来ないジョブ向けか。手に持ってみたところ、5㎏は超えてそうな重さである。プレートメイルよりは断然軽いが、女性には重いかも知れない……いや、40層まで歩いてこられる人であり、ジョブのステータス補正があれば大丈夫か?
ウチの女性陣にも使ってみるか聞いてみたのだが、揃って首を振られた。
「私はソフィアリーセ様から頂いたドレス装備がありますから」
「そんな重いの着て、踊れないよ! それに、可愛くないし、大き過ぎ!
ザックスが着たら?」
「あー、俺もウーツ鋼製の追加装甲を発注しちゃったからな。今更、黒魔鉄製じゃ、強度的になぁ……まぁ、付与スキルは気になるから試してみるか」
折角なのでブラックスネークウィップも取り付けてみる。ヒュドラチェーンメイルは、黒魔鉄製の薄手の肩アーマーがあり、その横側と後ろに、取り付けフックが付いていた。後は首の後ろ辺りにも1つ、ここに5本くっつけるらしい。
ブラックスネークウィップは柄の部分、鎖部分、先端部分に分解出来る。長さの調節かと思っていたが、ヒュドラチェーンメイルへの取り付けも兼ねていたのだろう。柄の部分だけ外して、肩アーマーのフックに取り付けた。
ただ、5本も鎖鞭を付けたせいで、重さが倍増した。そりゃそうか、鎖も黒魔鉄製だから、数を付ければ重いよな。
ジャケットアーマーの上からは着られなかったので脱ぎ、鎧下……厚手のシャツの上から着てみた。
それほど重くはない……いや、騎士の〈装備重量軽減〉が効いていたのでは、意味が無いな。ジョブを入れ替えてみると、肩にずしっとした重さが掛かった。ブラックスネークウィップ5本分のせいで、肩が凝りそうだ。男ならば、着て1日くらいは行動できるだろうが、女性だとキツイかも知れない。
着心地は悪くはないが、動くと金属同士が擦れて小さな金属音を立てるのが気になる。これを着て隠密行動は無理じゃね?
まぁ、忍者も類似品の
そんな、感想を話していると、不意に背後から殺気?を感じ、身体が勝手に動いた。横に摺足移動しながら、右手で後ろを払う……軽い感触と共に、棒の様な物を受け流した。
何かと思って後ろを確認すると、口をポカンと開けたフィオーレが、鞘に入ったままのテンツァーバゼラードを握っている。
「あれ? 鎖が勝手に動くんじゃないの?」
「ああ、それで不意打ちしてきたのか……まだ、魔力を込めてないっての。
まぁ、俺くらいになると、自動防御なんてなくても、自力で不意打ちも避けられるけどな!」
甘い、甘いと笑い返すと、フィオーレは口を膨らませてテンツァーバゼラードを構え直した。実際は、〈心眼入門〉と〈格闘家の勘所〉のお陰だけど、セットしている分は俺の力だから間違っていない。
改めて、肩と背中の方へ魔力を流す。普段、流す方向ではないし、5つ同時はなかなか神経を使う。これ以上入らないって、くらいに注いでから、フィオーレに背中を向けて合図した。指で、ちょいちょいってね。
〈心眼入門〉で気配は察知出来る。フィオーレが真っ直ぐ打ち込んでくると思いきや、横にステップして、横合いから攻撃して来た。それに対し、右肩のブラックスネークウィップが勝手に動き出し、テンツァーバゼラードを受け止める。その様子は、牛頭鬼と合体していたチェーンスネークと同じだ。蛇体を
ほうほう、と見ていたのだが、フィオーレがムキになり始めた。実戦さながらに、ステップを踏んで踊りながら、テンツァーバゼラードで攻撃してくる。鞘に入ったままであるし、二刀流でもなく1本のみなので、手加減はしてくれているのだけど、徐々に攻撃間隔が身近短く連続攻撃してくる。
「フィオーレ、もうちょい力を入れて良いぞ。多分、〈自動操鎖〉で受け止められる攻撃には限度がある。重い攻撃は受け止められないと思う」
「むーーーっ! 中々固いって!
これならどうだ! 〈連撃のキトリ〉!」
フィオーレはもう一本のテンツァーバゼラードを鞘ごと引き抜き、二刀流で構える。そして、スキルの力を借りて、強い攻撃をしようとしたのだろう。
しかし、決めポーズをしたところで、テンツァーバゼラードを床に落とした。そして、回れ右をして、休憩所の奥に歩き始める。その様子に呆気にとられながらも、デジャヴを感じた。
「え、え? ええ?? 何?何? 勝手に身体が動くんだけど!」
「……あっ! 休憩所のルール違反?!」
『 ・魔物侵入不可、戦闘スキルや攻撃系魔法使用不可、及び戦闘行為をするものは強制的に41層へ退出させる。』
部屋の案内板に掛かれた注意事項である。
「にゃーーー、寒い!寒い! せめて防寒具ちょうだい!!」
そんな悲鳴を上げながら、41層の雪原へと出て行ってしまった。
不味いな、ルール違反者は12時間の出禁だっけ?
不用意に攻撃スキルを使ったフィオーレが迂闊だったのだが、検証に巻き込んだので俺の責任でもある。
取り敢えず、レスミアとベルンヴァルトには、休憩所の脱出ゲートで外に出るよう指示し、俺は41層へ続くドアをくぐった。
しかし、外にはフィオーレの姿が見えない……と、思ったら、積雪に穴掘って隠れていた。数分で退避するとか、流石は雪国出身である。取り敢えず、フィオーレを回収して〈ゲート〉で脱出した。
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