第459話 (閑話)汝らの忠誠を問う(前編) 

※時系列的にゴールドカードの取引が始まった辺りです。



 勤務地の一つである砦から、王都の離宮に帰還した日は、決まって第1夫人の元に泊まる。妻との夫婦生活だけでなく、子供に顔を見せてやらんと、父親である私の顔を忘れかねんからな。一番上の子は、もう次の春には幼年学校に入る歳であり、子供の成長は早いと実感した。


 ……後10年もすれば、この子も騎士団に入るか。それまでに、損耗率を下げる方策を構築しておかねばな。



 私の名は、レグルスプレームス・プリマーテス・ラントフォルガー。この国の第3王子にして、グラウィスシャフト公爵を拝命し、第0騎士団の団長を務めている。二十歳の頃にダンジョンを2つ攻略し、団長の地位について早2年。慌ただしかった今年も終わりが近く、最後の月へ移り変わる頃であった。




 翌日、王城敷地内にある第0騎士団本部にて、不在時の報告を受けていると、来客の知らせがあった。

 知らせてくれた女性騎士フェリスティは、白黒の虎柄尻尾を揺らし、報告する。


「レグルス殿下、ハイムダル学園長が緊急の要件でお会いしたいそうです。事前に面会予定など入っていませんが、如何がなされますか?」

「……ふむ、学園長ならば面会を優先するとしよう。報告の続きは昼からとする。カードの件もだ。

 少し内密な話をするのでな、護衛はフェリスティだけで良い。他の者は仕事に掛かれ」


 予定にはない面会ではあるが、予想通りとも言える。

 側近達がテキパキと動き始める中、フェリスティの虎耳を撫でてから共に部屋を出た。

 彼女は黒いメッシュが入った白い髪をしている虎人族だ。戦闘の際は邪魔になると大きな三つ編みに纏めているが、長い髪は白虎の毛並みの様に美しく、気に入っている。普段はクールに装っているが、虎耳も撫でてやると、少しだけ表情が緩むところもい奴だ。ベッドの中では甘えて来るので早く鳴かせてやりたいが、明日までは我慢である。序列を守らんと女共が煩いからな。

 周知の事実ではあるが、フェリスティは隣国の虎人族の姫君であり、私の護衛騎士でもあり、第3夫人でもあるのだ。事情を知らない者は、何故妻を護衛にしているかと疑問に思うだろう。

 結婚と出産をした機に、現役引退も勧めてみたのだが、虎人族の気質故に断られた。産まれた子の種族が虎人族だった場合は、隣国にて育てる約定であった為に、子と引き離されている。ダンジョンで暴れている方が、気が紛れるそうだ。私としても、砦やダンジョンにもお気に入りの女を連れ歩けるのだから文句はない。人族の子を成してやりたいものだがな。



 第0騎士団本部の応接室の一つへとやって来た。中に入れば、一人の身なりの良い老人が、給仕役のメイドにお茶を勧められているところだった。


 彼、ハイムダルこそが、我が王国随一の学園シュトルアーデンの学園長であり、世界で唯一のフォースクラスの重要人物だ。故に、貴族としての地位は伯爵でありながらも、国王に対して意見を出来る立場でもある。私にとっても恩師であり、元第0騎士団の参謀という先達でもあるので、頭が上がらない人物だ。


 向こうも私の来訪に気が付いて立ち上がる。

 一応、私の方が立場は上なので、頭を下げる必要はない。胸の前で拳握るだけで、礼とした。


 ……む、立ち位置が良くないな。窓から射し込む朝日が、学園長の禿頭で反射して眩しいではないか。


「ハイムダル学園長、久しぶりであるな。光の女神の威光輝く良き日に、再会出来た事に感謝致しましょう」

「半年振りであるか、レグルス殿下も、息災の様で何よりじゃ。闇の神の試練は乗り越えられたかの?

 儂が神の御許に行く前に、後継が現れて欲しいものだ」

「いや、そもそも試練に会えていない。この半年は各領地でダンジョンの氾濫が多く、救援に潰しに行く事が多かったのだ」


 席を勧めてから、軽く近況報告をする。

 第0騎士団としては本業なのであるが、自身のレベル上げが出来ないのは遺憾である。


 ただ、中興の祖である『積極果断なエストラ女王』が、決めた事であるのだから仕方がない。ドラゴンの侵攻で壊滅した王都の復興には、各領地の協力が不可欠であった。その恩義に報いる為、エストラ女王は各領地が同じ様な危機に陥った際に救援に行くと宣言した。王国の守護者である、第0騎士団の始まりである。


「王族務めとはいえ、殿下の若さで良くやっておる。刈りに専念出来れば、30歳までにはフォースクラスに至れよう」


 私は22歳である為、後8年……。学園を卒業してからレベル65まで上げるのに3年の歳月が掛かったが、残り15レベルを上げるのに、3倍の歳月がいるのか。団長としての仕事をしていては、もっと時間が掛かるに違いない。


「さて、斯様かような話はこれまでにして、本題に入ろう。国王陛下に聞こうにも、政務が忙しくて面会予約が取れなかったのでな。殿下なら、コレについて何か知っておろう?」

「いえ、私にも面会予約は取って……」


 貴族としての無作法を諌めようとして、止まってしまった。ハイムダル学園長が懐から取り出したのは、光の女神が刻印された丸いメダルと、金色に輝くカードであったからだ。


「……驚いた。何処で手に入れたのだ?」


 思わず語気を強めてしまった。父上……国王陛下や兄上が忙しいのは、教会との協議が佳境に入ったからである。教会との架け橋となったのは、自国産の宣誓のメダルだ。先日、件の工房から納品があったと、昨晩聞いたところなのだ。

そして、同じくゴールドカードも、母上や兄上達の第1夫人、私の第1夫人が、昨日の社交界で広め始めたところである。

第0騎士団へ支給されたゴールドカードなど、箱に入ったままだ。つい先程、側近達からの報告の後に、説明をする筈だったのだぞ。


 いずれ、噂話としてハイムダル学園長の耳に入るのは、時間の問題であると考えていたが、現物を手に入れて来るとはな。


 しかし、ハイムダル学園長は、私の疑惑の目など鼻で一蹴してしまう。


「ふんっ、儂の情報網を甘く見るでない。弱味を握った教え子など、そこら中にいるのじゃよ。

 宣誓のメダルはどうでも良い。〈ヒール〉が使えるだけの魔道具なぞ、ダンジョンからも産出するのだ。現神族が量産しておるように、我が国の錬金術師が量産の方法を編み出したのだろう。

 しかし、だ。こちらの金のカードは何じゃ?

 〈ライトクリーニング〉が使える魔道具など、見た事も聞いた事も無いぞ!」


 世界で唯一、光属性魔法が使えるだけに、ゴールドカードに喰い付いたようだ。常々後継者が欲しいと、後進の育成に励んでいるからな。

 興奮した面持ちなので、宥め賺しながら、フェリスティへ指示をだした。


「ハイムダル学園長、機密も絡むことであるから、少し落ち着け……

 そこのメイド、遮音の結界機の準備を。フェリスティ、例のゴールドカードの箱と、彼の資料を取ってこい」

「畏まりました。一時、護衛を交代します」


 フェリスティが踵を返して応接間を出ていくと、代わりに外で立哨していた騎士の一人が、扉の内側へ立つ。そして、応接間に常備してある遮音の結界機がテーブルで起動された。後はメイドが結界の外に出れば、私とハイムダル学園長だけの空間となる。


「……機密とな? 随分と大掛かりに動いておるようじゃが、王族は何を企んどる?」

「企むとは人聞きの悪い。王城内の、引いては国の秩序を護る為の行動に過ぎない。

 ……このゴールドカードを作った人物こそ、貴方が求めていた2人目の光属性魔法の使い手だ。彼の事を知りたくば、我々に協力して頂きたい」

「儂の知らないフォースクラス到達者などいるのか?!

 ギルドに命じ、学園の卒業生の動向を調査させているが、レベル65を超えた者でも数える程しか居ないのだぞ?

 ましてや、70を超えた者もおらん筈じゃ…………市井の中から突然変異でも出たか?

 それで……儂に何をしろと?」



 厳密にはフォースクラス到達者ではなく、特殊なジョブで低ランクの光属性魔法が使えるだけなのだが、嘘は言っていない。

 しかし、市井……今は廃嫡されて平民であり、良く分からない突然変異なのも当っている。ハイムダル学園長の斜め上に撃った魔法が、いつも斜め上に飛んでいくザックスを捕らえたようで、内心笑ってしまった。

 笑いを噛み殺し、努めて穏やかに要求する。


「なに、簡単な事だ。マークリュグナー公爵の権勢を弱める為、学園の教授陣と職員の取り纏めをお願いしたい。

 ご存知でしょう? ここ数年、ダンジョン討伐による貴族認定制度を廃止し、貴族による世襲に変えようと訴えている派閥の事だ」

「ああ、アレか。誠に目障りじゃの。低レベルの貴族など害悪でしか無いのにな。誰とは言わんが、学園の職員にもおる」


 マークリュグナー公爵の主張は、

『統治者である貴族は、政治や領地の運営をするべきであり、命懸けのダンジョンに赴く事ではない。そんな事は、部下の騎士に命じて攻略させれば良いのだ』である。


 そんな甘い主張に、特に戦いに向いていない貴族の文官達が、取り込まれているのだ。

 彼等は、50層の管理ダンジョンを、実家の支援におんぶに抱っこで攻略した者達である。貴族の位を得ながらも、貴族としての志しは低い。そんな彼等にとって、マークリュグナー公爵の甘い言葉と鼻薬が良く効いているらしい。


「既に自国製の宣誓のメダルで、教会を味方に付けた。ダンジョン討伐を掲げる、我ら王族の方が教会の教えに近いからな。

 そして、このゴールドカードで、マークリュグナー領経由で入って来る現神族製の魔道具の輸入量を減らす。

 むろん、学園ダンジョンで護身用に販売している、魔道具の杖も徐々に置き換えてくれ」


 現神族は、我が国では作れないような魔道具を輸出している。そのどれもが有用なのだが、非常に高価なのが問題だ。そして、現神族の国と唯一隣接しているマークリュグナー領も、魔道具の商いによって多いに儲けている。

 国に納められている税金から産出すると、ダンジョンから産出する金額より、輸入魔道具の商いの金額の方が多いのだ。明らかにおかしい。


 その点、ゴールドカードは、カード自体をレシピ調合で生産できる。素材に金のインゴットがいるが、各騎士団が採掘してくる金鉱石で十分に賄える。ザックスが〈フェイクエンチャント〉を施す手間賃もあるが、それを踏まえても総コストは十分の一以下になるのだ。


 ……いったい、どれほど足元を見られて、値段を吹っ掛けられていたのか!


 そんな話をしてやると、ハイムダル学園長も唸り声を鳴らした。


「属性の適性が欠けている者には、それを補う属性魔法が施された魔道具は必須であるからな。学園としても数を確保するのに苦慮しておるんじゃが……このゴールドカードは〈ライトクリーニング〉だけではなく、他の魔法もあるのか?!」

「ええ、作成者が使える魔法とアクティブスキルに限りますが……ああ、丁度届いたようだ」


 遮音結界の外にフェリスティが待機しているのが見えた為、手振りで中に入るよう指示する。


「お待たせしました。こちらが第0騎士団用のゴールドカードで御座います」

「ご苦労。資料は、お前が持っていろ」


 ザックスの詳細な資料など、機密扱いであるからな。身内であるフェリスティに持たせておくのが安全だ。

 テーブルに置いた箱の蓋を取ると、中から金色のカードの束が姿を表す。装飾品ではないが、100枚もあれば、十分に煌びやかである。

 カードの種類が分かるように、紙が各所に挟まれているので、それを読み上げてやった。


「ランク順に並んでいるな。〈ファイアボール〉から順に初級属性のランク1……ランク6の〈ペリィ・ピット〉までか。

 ここからは、僧侶の回復の奇跡だな」

「むっ! 魔法だけではないのか!?」

「ククッ! 宣誓のメダルを作ったのも同じ人物だからな。ほら、ここからは重戦士や軽戦士のスキルもあるぞ。〈ヘイトリアクション〉に、〈稲妻突き〉だ。

 ……信じられないなら、自分で調べてみてはどうだ? 鑑定の魔道具は持っているのだろう?」


 鑑定の魔道具とは、ルーペのような物である。ガラス部分を覗き込めば、見ている対象の名前とレア度が分かるのだ。ゴールドカードの様に回数制限は無いが、情報が少ないのが難点だな。因みに、51層以降の宝箱から産出する魔道具の一種だ。



 私のアドバイスに従い、鑑定の魔道具を覗き込んでは、唸り声を上げている。

 少し、ハイムダル学園長の驚きようが、面白くなってきた。私が在学中に、驚かせた事など記憶にも無いからな。

 更に驚かせる為に、後ろの方にあったゴールドカード2種を1枚ずつ取り出す。そして、片方のゴールドカードをハイムダル学園長に手渡した。


「鑑定の魔道具では、名前しか分からないので、面白くないであろう?

 この〈詳細鑑定〉のゴールドカードを使ってみると良い。カードに魔力を込めるだけだ。対象はこちらのカードにせよ」

「詳細鑑定じゃと? 〈上級鑑定〉や〈中級鑑定〉ではないのか?

 むう…………〈詳細鑑定〉!?

 何だこれは!? 〈ゲート〉のゴールドカード?

 〈帰還ゲート〉と〈トランスポートゲート〉の複合スキル?!

 何じゃこれはっ! このようなスキル、聞いたことも無いぞ!」


 その慌てようを見て、思わず笑ってしまった。我々王族が、ザックスの報告を受けた時と同じだからだ。初見だと訳が分からないからな。


「彼の持つ特殊スキルだ。興味が湧いたであろう?

 これ以上は、機密事項である。我々王族に協力すると誓うのならば、彼についての情報をやろう」

「……その彼とやらは、サードクラスにも至っていない若輩者だな?

 光属性魔法はランク1まで、闇属性は無く、中級属性も無い。そして初級属性魔法はランク6まで。つまりレベル30程度か。戦士系のスキルも、それくらいであった筈じゃ。

 しかし、複数のジョブのスキルを使える理由は分からんな。よもや、毎日教会に通ってジョブを切り替えている訳ではあるまい。特殊スキルとやらもじゃ」


 流石は、魔法のエキスパートである。ゴールドカードの種類から、ザックスのレベルを推測してくるとは……まぁ、知られたところで対した意味はないがな。フォースクラスでないと、バレただけだ。


 暫く唸っていたハイムダル学園長であったが、程なくして我が軍門に降った。


「フッ!……仕方あるまい。王族に協力を約束すると、光の女神様に誓おうではないか。

 学園の教授陣と職員の取り纏めであったな。例の派閥の者を締め上げ、適当な理由で首にするか、閑職に追いやれば良いのじゃろう?」

「いや、首はやり過ぎだ。動向監視が出来る程度に閑職に追いやってやれ。風見鶏なら、旗色を伺って擦り寄ってくる。完全にマークリュグナーと繋がっているのならば、何らかの動きを見せるだろう」


 それから、話し合いを続けて擦り合せをしておいた。ハイムダル学園長の影響力も大きい為である。

 我らはマークリュグナー公爵の権勢を削りたいだけであり、追い詰めるのが目的ではないからな。大領地なだけに、反乱を起こされては困る。嫡男の方が、良識がある貴族である為、今回の汚点を理由に、穏便に代替わりをしてもらいたいものだ。



 フェリスティに持たせていた資料を受取り、最初の数枚だけ取り出してザックスの説明を始めた。彼の生い立ちや、複数ジョブを始めとした特殊スキルの情報迄である。英雄のジョブや、複合ジョブについては伏せておいた。ハイムダル学園長には、今後も協力してもらいたいからな。情報は小出しにして、交渉材料とするべきである。


「むぅ……にわかには信じ難い話であるが……

 ザクスノート・アドラシャフトの名は確か、学園の夏休み中に退学の書類にサインをした覚えがあるのう。退学理由は、事故により記憶喪失となり、廃嫡になった。素行の悪さか、家督争いに負けたのを隠す方便と思っておったよ。

 それが実は、中身が天より降り立った別人になり、複数ジョブと聖剣を操る……まるで、娯楽劇の英雄譚であるな。


 しかしだ、何故学園を退学にしたのだ? そのまま学園に在席するならば、儂が指導をしてやったものを。

 今からでも遅くはない。王都に呼び寄せよ」


 ……やはり、そう来るか。

 ハイムダル学園長は、自身に続くフォースクラスを育てる事を命題としている為、有能な人材には指導をしたがるのだ。主にダンジョンを2つ討伐した碧翼討伐星章持ちの殆どは、その指導を受けていると思って良い。

 ただし、王族としての思惑もあるので、ハイムダル学園長の要請は却下した。


「彼を王都に呼ぶことは、許可出来ない。

 理由は二つ。一つは、ゴールドカードを広めているからである。知っての通り、裏面には王家の紋章と共にザックス工房の紋章と名が刻まれている。そこに、本人が来たのでは、誰が作ったのか一目瞭然だ。加えて彼が平民と知れば、圧力を加えようとする貴族も出てくるであろう。

 そして、二つ目。彼がアドラシャフトに出現した時の情報をまとめた結果、その正体を神の使いと推定している。教会の教えにある天使のような者だな。ただ、聖剣といった特異性はあるものの、伝え聞く天使程の強さは無い。恐らくは、女神フィーア様が天使を使わすかどうかの判断を下す為の、情報収集役ではないかと我々は判断付けたのだ。人族が滅びに瀕しているとは言わないが、ダンジョンと魔物の領域に押されているのは否定できないからな。

 ならば、最初に降り立った場所アドラシャフトにも意味があるのだろう。王都に呼び寄せず、アドラシャフトから好きなように、この世界を見てもらった方が良いのだ。

 現に、放流しているだけで、有益な情報や魔道具が舞い込んできた。あながち、間違いでもなかろう?」


 王族からの干渉が最低限なのは、この考えに基づいている。彼の存在が、新たな風を呼び込んでいるのは、間違いない。ジョブの解放条件に、宣誓のメダルによる教会との仲を取り持ち、ゴールドカードで現神族の影響を減らせている。

 特に私としては、魔法戦士の正しい解放条件が知れた事が大きい。あれがなければ、我が子も死の危険が孕む試練に挑まなくてはならなかったからな。


 そんな、説明をしたのだが、ハイムダル学園長は不服といった表情で、頭を光らせた。いや、日の差す角度が変わっただけである。さり気なく、座る位置を横にずらした。


「しかしのう、その推測も実際に会ってみなければ、誠か分かるまい。

 ……ふむ、呼ぶのが駄目なのならば、儂から会いに行くのはどうだろう?

 丁度先日、アドラシャフト出身の教え子が挨拶に来たから、アイツの伝手を頼ろうではないか。エヴァルトめ、ノートヘルムとパーティーを組んでおった彼奴が、ザックスの事を知らない訳があるまい。このように面白い事を、隠していた事について問い詰めねばな!」


 上級貴族が平民に会いに行くと言うのも変な話ではあるが、確かにそれならば問題は無い。ちゃんと相手側の領主に面会予約を取る事を条件として、許可を出した。すると、別れの挨拶もそこそこに、ハイムダル学園長は足早に返って行った。

 確か、エヴァルト司教は、王族と教会の折衝役として尽力してくれていた筈だ。和解が成立した後は、「ようやく肩の荷が下りる」と、ゆっくり図書館に通うと言っていたが災難であるな。

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