第260話 暗幕に包まる猫
フォルコ君のジョブだけでなく、俺達も色々上がってセカンドクラスを手に入れた。
先ずは俺の戦士から。重戦士も取得していたが割愛して、同時に入手した軽戦士からだ。
【ジョブ】【名称:軽戦士】【ランク:2nd】解放条件:戦士Lv25以上、軽量武器を使用し、レベルを3上げる。
・前衛系の中でも機動力を重視した遊撃担当。遠中距離では弓、近距離では刺突剣のスキルを覚え、敵を翻弄する。ただし、耐久値は変わらず、重厚な装備は動きを妨げてしまい向かない。敏捷値を生かすため軽装を心がけて、遠距離攻撃か一撃離脱に徹しよう。
・ステータスアップ:HP小↑、筋力値中↑、耐久値中↑、敏捷値小↑
・初期スキル:戦士スキル、弓術の心得、フェイントの妙技
予想通り、軽戦士が手に入った。ただ、条件の軽量武器を使った記憶はあまりない。ダガーを少しと、長さはあるけど同じくらい軽いテイルサーベルくらいか? 流石にワンド(木の棒)で解放条件を満たしたとは考え難い。
【スキル】【名称:フェイントの妙技】【パッシブ】
・フェイントを仕掛けた場合、相手に見破られ難くなる。
フェイントか……剣術の方では、あまり習っていないのだよなぁ。何故なら、魔物はフェイント掛けても避けたり、防御したりする事が少ない。今まで戦った魔物では、シルクスパイダーとウインドビーくらいか?
特に最近戦っている植物系なんて、こちらの攻撃なんて気にした様子もない。フェイントを仕掛けても、その分だけ手数が減ってしまうのだ。亜人系魔物が出てくると、また違うらしいが……
「やっぱ、俺には軽戦士は合わなさそうだぜ。チマチマやるより、デカい獲物で叩き切った方が早いぜ」
鬼人族の感性に合わなそうなジョブなのは、良く分かる感想だった。
それはそれとして、無手で戦う鷲翼流では、フェイントを多用する。人間を取り押さえるため、フェイントで惑わして、転がして、取り押さえる為である。鑑定文を読む限り、武器指定が無いから、こっちに効果があるかな?
僧侶レベル25では、新しいスキルを2個覚えた。どちらもフノ―司祭が使っていた奇跡だ。
【スキル】【名称:ホーリーシールド】【アクティブ】
・防御膜を張り、対象の防御力を上げる。ただし、魔法を受けた場合、効果が早く切れる。その場合、少しだけ魔法ダメージを軽減する。
人間だけでなく、装備品まで硬くなる不思議な魔法……もとい、奇跡だ。鑑定文から推察するに、マナ的な防御膜なのだろう。なので、他所からの魔法を受けると、膜が破れると。魔法をダメージ軽減するのも、只の副産物っぽい。ランク0の便利魔法で張った〈フィリングシールド〉みたいに、あっさりパリンッと割れそう。最近、被弾が多いから保険に掛けておく事も考えたが、MPの無駄と考えるか判断に困る。
「それは掛けておきましょうよ。避け損ねた時に、怪我するよりは良いですから」
「レスミアみたいに壁を走れとか、無茶だからな? まぁ、一回試してみるしかないか。」
乱れ緋牡丹を担当する俺とレスミアは、ダイスマジックの実の標的になる事が多い。それにも関わらず、レスミアは被弾0である。直線に飛んでくる初級属性の単体魔法なんて、〈猫耳探知術〉で察知し、〈猫体術〉の柔らかい身のこなしで躱す。誘導性+小範囲を巻き込む中級属性に至っては、少し引き付けてから壁を駆け上がって避けていたのだ。さしもの誘導性も直角に曲がれずに、壁にぶつかって破裂した。
ロボットアニメに出てきそうな誘導ミサイルの避け方であるが、俺がポロッと話してしまったせいでもある。誘導魔法の避け方なんて、パッと思い付くのがそれしかなかったのだ。チャフやフレアは生身では意味ないと思うが、デコイみたいなスキルが有れば良いのだけど……
まだ、誘導性も範囲も上な、上級属性の〈ライトボール〉には(ダイスが)当たっていないので、少し心配である。壁走り中に被弾するとか……〈猫着地術〉があるから大丈夫と、本人は言っているけどね。
【スキル】【名称:インクリースブラッド】【アクティブ】
・対象の血液を増やし、正常な体へと癒す。傷口が開いている場合は出血が増えるだけなので、先ずは回復の奇跡で塞ぐように。また、健常者に掛けても正常値以上には増えない。
大怪我を〈ヒール〉で治した後に、追加で使う奇跡だな。エヴァルトさん曰く、60層以上の魔境で、血を流しながら前線を支える騎士に回復の奇跡を掛ける場合、この〈インクリースブラッド〉も適度に掛けないと、直ぐに動けなくなるそうだ。中々にハードな話ではあるが、思い返すと雪女アルラウネ戦で似たようなことをやっていた。敵の範囲魔法を耐えて、即座に範囲回復で癒すのも、僧侶の仕事らしい。
因みに余談ではあるが、帰ってからレスミアに、こっそりとお願いされた。「私達が体調悪い時にお願いしたら、何も聞かずに〈インクリースブラッド〉を掛けて下さいね」と、少し恥ずかしそうに。体調不良のなか、大通りにある教会まで出向くのはしんどいらしい。まぁ、女性には貧血になる事情があるのは理解しているので、了承した。
教会に訪れる人は怪我人だけでなく、貧血で体調が悪い女性も多いそうだ。混雑時には、怪我人や病人が最優先であり、次点で体調不良の女性、二日酔いの人なんかは後回しにされるらしい。トリアージとか聞いた覚えがあるが、二日酔いは自業自得であるからな。
【ジョブ】【名称:司祭】【ランク:2nd】解放条件:僧侶Lv25以上、他者を20回以上治療する。
・位階が上がり、創造神の信仰を広げる僧侶。神へ魔力を捧げる事で回復の奇跡を授かる。各種状態異常を治し、他者を補助するスキルを習得する。打たれ弱いのは相変わらずなので、パーティーの後方で仲間を回復することに専念しよう。
・ステータスアップ:HP小↑、MP中↑、知力値小↑、精神力中↑
・初期スキル:僧侶スキル、ヒールサークル、充填速度小アップ
解放条件については、ちょこちょこと日常生活で〈ファーストエイド〉を使っていたので、楽にクリアしていた模様。メイドトリオだけでなく、本館のメイドさん達にも使っていたからだ。家事による手荒れだとか、庭仕事の日焼けにも効くため、〈ファーストエイド〉(もしくはポーション)してから、肌のお手入れをした方が良いらしい……とベテランメイドさん達が言っていた。
【スキル】【名称:ヒールサークル】【アクティブ】
・指定範囲内の味方を対象として、HPを中回復する。裂傷や打撲、出血などを癒し、正常な状態へと戻す。ただし、骨折には効き難い
【スキル】【名称:充填速度小アップ】【パッシブ】
・魔法陣に魔力を充填する速度が少し早くなる。
範囲回復が手に入ったのは、非常に助かる。今のところ、範囲魔法を使う魔物は少ないが、今後を考えると絶対に必要だ。中回復だと、最大HPの2割くらい回復出来るので、現状では十分……いや、1割でも痛いものは痛いけどね。
そして、〈充填速度小アップ〉は魔道士でも覚えているので、特筆する事はない。充填完了まで1割くらいは短縮されているので、付けない手は無い。司祭が覚えた事により、魔道士と交互にレベル上げに使えるようになったくらいかな。
鬼足軽レベル25では、新しいスキルを一つ覚えていた。
【スキル】【名称:一天・金剛突撃】【アクティブ】
・集魂玉を1個消費して発動する。金剛の如き耐久力を一時的に得て、体当たりを行う。ノックバック有。
スキル名が必殺技っぽいのだけど、体当たりで必殺とは……いや、ベルンヴァルトの体格で体当たりすれば、人間くらい殺れるか?
どんなスキルなのか気になるが、試し打ちはこの後のボス周回にする事にした。
【ジョブ】【名称:鬼
・前衛系の鬼族限定ジョブ。専用スキル〈集魂玉〉が強化され、強力な魂玉スキルを多数習得する。その分〈集魂玉〉の消費も増えるため、優先して魔物の止めを刺すようにしなければ、攻め手が止まってしまう。
耐久値が低いのは相変わらず。攻撃は最大の防御、ダメージが増える前に敵を粉砕しよう。
・ステータスアップ:HP小↑、筋力値中↑、敏捷値中↑、器用値小↑
・初期スキル:鬼足軽スキル、集魂玉強化、集魂玉解放
鬼人族専用のセカンドクラスだ。ただでさえ強い〈集魂玉〉がパワーアップするとか、ちょっと羨ましい。その強化内容は、
【スキル】【名称:集魂玉強化】【パッシブ】
・自身が魔物を倒す毎に、魔物の力を内包した『集魂玉』を手に入れる。ただし、集魂玉は最大3個までしか持てない。
【スキル】【名称:集魂玉解放】【アクティブ】
・集魂玉を1個消費して発動する。筋力値のステータス補正を一段上昇させ、更に集魂玉の元となった魔物の一番高いステータスと同じ能力値を上昇させる(戦闘終了まで)。
元々の〈集魂玉〉スキルが二つに分かれたようだ。最大3つまで持てるようになるのは、なんとなく予想の範疇である。何故なら、ベルンヴァルト用のグローブの甲に空いている穴が、3つだからだ。左右で6つなので、サードクラスでも増えるのだろう。
そして、〈集魂玉〉をそのまま使う場合もパワーアップしている。要は筋力値以外のステータスも上がるっぽい。集魂玉の元になった魔物のステータスに依るから、ある程度狙って確保しないといけないだろう。この辺の魔物で言うなら、灼躍なら魔法を多用するから知力値。暴れ緋牡丹が耐久値か筋力値で、乱れ緋牡丹なら……敏捷値か?
まぁ、この辺も使って行けば、追々分かるだろう。
そして、最後はレスミアの闇猫レベル25だ。こちらも新しいスキルを2つ覚えていた。
【スキル】【名称:
・自身の周囲に光を通さない闇を生み出し、身を隠す。周囲の暗がりに紛れれば、何者にも察知出来なくなる。
「……よ、〈宵闇の帳〉?」
鑑定文だけでは分からないところもあったので、実際に使ってもらった。狩猫系で初めてのアクティブスキルと言う事もあって少し戸惑っていたが、手にマナを集める要領をアドバイスする事で、発動出来た。料理人ジョブにも〈インペースト〉とかのアクティブスキルはあるが、それらと比べてMP消費が多いようだ。
レスミアの右手から真っ黒な
「レスミア、どんな感じ?」
「え? ちょっと薄暗くなっただけですよね? 闇って程じゃありませんよ」
「いや、外からは全く見えないぞ。真っ暗で姿かたちも分からん……あ! コイツのせいじゃないか? レベル15で覚えた〈猫目の暗視術〉!」
レスミアのステータスを見ていたら、シナジーの有りそうなスキルを見つけた。覚えてから暗い階層が無かったので、忘れかけていたが、こんなところで出番があるとは……
それから、色々動いてもらったところ、手を挙げたり、しゃがんだりすると、それに合わせて〈宵闇の帳〉の円柱も動くようだ。手を伸ばせば、その分大きくなり、しゃがめば小さくなる。明るい所では目立つように思えるが、部屋の隅で丸くなっていると、気付き難い。
そして何より、走ったり、弓を撃ったり、目立つ動きをしても解除されないのだ。〈潜伏迷彩〉は直ぐ解除されてしまうのに……
「つまり、〈不意打ち〉し放題!?」
「暗い階層ならね。今居る26層だと微妙じゃないか?」
「それも試してみりゃ良いじゃねぇか。そもそも、あのサボテン共は目で見てんのかね?」
灼躍は目玉があるのは判明したが、サボテンは良く分からない。乱れ緋牡丹なんて、動いていないと、どっちが前か後か分からんしな。
【スキル】【名称:狩の本能】【パッシブ】
・卓越した狩の本能を呼び覚まし、敵の急所を見抜く。
ただし、相手が格上で、レベル差が大きいと発動しない。
何というか、〈不意打ち〉を決めろと言わんばかりのスキルだ。心臓や肺など、急所の場所が分かるのは助かる。動物型の鹿(サンダーディアー)や猪(ワイルドボア)とか居たけれど、内臓の位置なんて知らなかった。ましてや、植物型の急所なんて分かりようもない。分かるのは灼躍の目玉くらいなものだ。
……急所も弱点として、魔物図鑑のネタになりそうだな。
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