第253話 ダイスマジックの実と新しいセカンドクラス

 通常、ストレージのフォルダは、同じ物をスタックしてまとめてくれる。大きさとか、重さが違えば別々のアイコンとなるが、ドロップ品等の同じ物はまとめた上で数字が表示されるのだ。

 それなのに、袋に入ったダイスの実は2つアイコンが表示されている。取り出そうと選択すると『ダイスの実』とポップアップが出た。実際に取り出しても見覚えのある10面ダイスが入った袋だった。

 では、もう一つは?と、選択すると『ダイスマジックの実』と表示された。取り出して、並べてみるが、違いが分からない。 紛らわしい!


「すまん、片方はダイスの実じゃない。ダイスマジックの実だった。見た目が一緒だから気が付かなかったよ」

「ダイスマジックって、乱れ緋牡丹が投げてきた実ですよね?

 あ! ここだけ赤くなってますよ。ホラ」


 レスミアが指差したのは、袋の中のダイスの一つ。1の出目が赤文字になっていた。他の2~0(10)は黒文字。勿論、食べられる方のダイスの実は全て黒字だった。



【魔道具】【名称:ダイスマジックの実】【レア度:C】

・魔法効果を持った不思議な実。魔力を少し込め、対象へ投擲する事で発動する。出目の2~0に対応する属性のランク1単体魔法で攻撃する。ただし、出目が1だった場合、使用者がランダム属性の単体魔法で攻撃される。

※ダイスマジックの実を割ったり、齧ったりした場合、強制的に出目1の効果が発動する。



 間違えて齧ったら大惨事じゃないか! ドロップ品にまでスリルを仕込むな!


「うわぁ……ドロップ品を拾っても1の目を確認しないと、怖くて食べられませんね」

「後はストレージかアイテムボックスに入れれば、別アイテムとして判別されるから、そっちでも良いな。

 ん? ニードルフルーツもアイコンが2つに分かれている?」


 念の為とストレージに入れ直した時に、隣にニードルフルーツのアイコンが2つある事に気が付いた。どちらも複数個スタックされている。嫌な予感がして、両方取り出してみた。



【魔道具】【名称:破裂の実】【レア度:D】

・暴れ緋牡丹が投擲する実で、魔力で変質したドラゴンフルーツ。ただし、爆発するので食べる事は出来ない。魔力を少し込めると、一定時間後に破裂して針を撒き散らす。また、強い衝撃や、刃を入れても爆発する。取り違え注意。



 ……取り違え注意とか書くくらいなら、見た目に違いを入れておけよ!

 3人でニードルフルーツと破裂の実を見比べてみたが、見分ける事が出来なかった。「本当にコレが爆発すんのか?」と納得いかないベルンヴァルトに、試しに投げてもらう。通路の奥に落ちた破裂の実は、落ちた衝撃で破裂し、針を撒き散らした。


 その一方で、ニードルフルーツも試しに切ってみた。鑑定で判別しているので、爆発しないと分かっているが、ちょっとドキドキする。包丁で縦に割ってみると、中身は赤黒い果肉と、黒い粒々の種が一面に入っていた。TVか何かで見たような覚えはあるので、確かに果物だ。あまり食欲が湧くビジュアルじゃないけどね。



 そして、念願のレベル25に到達した。レア種だけあって経験値が多かったのかもしれない。ベルンヴァルトの戦士と、レスミアのスカウトも同時に上がっている。


 戦士レベル25で新スキルを2つ覚えた。



【スキル】【名称:一刀唐竹割り】【アクティブ】

・魔力を込めた剣を大上段から振り下ろし、対象を真っ二つにする剣技。相手が大きい場合、飛び上がって斬り下ろす。ただし、飛び上がる高さは筋力値によって変わる。


【スキル】【名称:脳天割り】【アクティブ】

・対象の頭部を強打し、低確率で気絶、中確率でスタンさせる。頭部を持たない者に気絶は効かないが、低確率でスタンさせる事は可能。



「〈フルスイング〉と〈一刀唐竹割り〉を合わせたのが〈旋風撃〉ってところか? まぁ、集魂玉が無くても使えるのは良いな。

 それと、〈脳天割り〉の方だけどよ、頭殴れば大抵は気絶しないか?」

「それはそうだけど、注目するのは頭部が無いと効かないってところだな」


 ベルンヴァルトには通じなかったので、推測を話してみる。

 逆説的に頭部が有れば、気絶する可能性があると言う事だ。そう、脳味噌がなさそうなゴーレム系やパペット系等の、人型だけど、無機物っぽい奴にも効きそうな文面なのだ。そしてなにより、『頭部が無い魔物も低確率でスタン』とか、既に脳味噌の有無が関係ないからだ。魔力とかマナだとかの不思議パワーが作用しているに違いない。


「強敵の動きを止めたいときに使うスキルだな」

「なるほどなぁ。ただよ、そろそろ金砕棒は買い替えた方がいいんじゃねぇか?」


 折れた金砕棒は〈メタモトーン〉で修復して、アリンコ鉱山で使用している。ただ、1戦するだけで柄にヒビが入ったり、折れたりするのが現状だ。割引券を貰ったところでもあるし、空いた時にでも武器屋に行くことにした。


 そして、ベルンヴァルトはセカンドクラスの重戦士のジョブを手に入れていた。



【ジョブ】【名称:重戦士】【ランク:2nd】解放条件:戦士Lv25以上、重量武器を使用し、レベルを3上げる。

・前衛系の中でも盾役と物理攻撃役を兼ね備えたパーティーの要。〈装備重量軽減〉スキルで重厚な装備をして、挑発系スキルで敵の注意を一身に引き受け、攻撃を受け止める。そして、重量武器にて敵を叩き潰す。魔法に弱いのは相変わらずなので、回復手段を忘れずに。


・ステータスアップ:HP小↑、筋力値中↑、耐久値中↑、敏捷値小↑

・初期スキル:戦士スキル、装備重量軽減



 因みに、ベルンヴァルトは軽戦士のジョブは得ていなかった。そこら辺を聞いてみると、街中の警備ならいざ知らず、ダンジョンに入る時は、好んで重量武器を使っていたそうだ。解放条件から察するに、重量武器の反対の軽量武器がキーになっていると推測される。俺の場合、使い分けているテイルサーベルは軽いので多分大丈夫……まぁ、上げてみないと分からないが。



【スキル】【名称:装備重量軽減】【パッシブ】

・重量級装備を身に着けた場合、その重量の半分だけ筋力値に補正が掛かる。



「こりゃあ良い! 剣が軽いぞ!」


 ジョブを変更してみたところ、大剣のツヴァイハンダーを軽々と振り回した。空を切る音や、地面を打ち下ろされる衝撃は、重厚なまま。装備品が軽くなった訳でなく、筋力値が上がって扱えるようになるようだ。重量武器の重さという利点はそのまま。


「それはそれとして、無闇に地面に叩き付けるなよ。武器が痛むぞ……」

「おお、すまん、すまん」



 俺とレスミアのスカウトも、新スキルを2つ覚えていた。ただ、一つは〈潜伏迷彩〉、俺は既に罠術師で習得しているので目新しさは無いが、レスミアは喜んでいる。


「この透明になるスキル、使ってみたかったんですよ~。〈不意打ち〉し放題じゃないですか!」

「あー、それ複数ジョブを付けられないと、出来ないんじゃないか?」

「あっ!」



【スキル】【名称:潜伏迷彩】【アクティブ】

・周囲に溶け込み身を隠す。大きく動いたり、喋ったり、攻撃行動を取ったりすると解除される。また、完全に透明になるわけではないので、目や、耳、鼻の良い魔物や、五感以外の知覚を持つ魔物には気付かれてしまう。

 発動にスキル名を言う必要はなく、魔力を込めて念じれば効果を発揮する。



 ただ、そんな〈不意打ち〉好きへの救済措置があった。



【スキル】【名称:スナイプアロー】【パッシブ】

・敵に察知されていない場合、矢で与えるダメージがアップする。また、弓矢を扱う際の音を小さくし、察知され難くする。



 文面的に弓矢版の〈不意打ち〉だ。〈潜伏迷彩〉で姿を消して、狙い撃つとか、暗殺者かな?

 


【ジョブ】【名称:トレジャーハンター】【ランク:2nd】解放条件:スカウトLv25以上、宝箱を開ける(ボス部屋以外)。

・スカウトをさらにダンジョン踏破用に強化したジョブ。罠の看破に解除、魔物の位置や地図を表示、宝箱の鍵開けなど、ダンジョン攻略には欠かせないジョブ。

 ただし、戦闘力は低め。弓系スキルも覚えるが、習得は遅い。〈帰還ゲート〉を覚える関係上、いつでもダンジョンから脱出出来るよう、後方支援に留めた方が良い。


・ステータスアップ:HP小↑、筋力値小↑、敏捷値中↑、器用値中↑

・初期スキル:スカウトスキル、オートマッピング、ドロップアップ



【スキル】【名称:オートマッピング】【パッシブ】

・視界内に地図が表示される。踏破した部分を自動更新する。表示位置やサイズ、ON/OFFは変更可能。



 トレジャーハンターを装備してみると、視界の右上に地図が表示された。HPバーと相まって、益々TVゲーム画面っぽくなってしまった。自分を中心として周囲数部屋分くらいが表示される。地図を注視すると、地図を引っ張って位置を変えたり、枠の大きさを変えたり出来た。ユーザーインターフェースとしては極々普通だな。半透明化も出来るが、全画面にすると流石に邪魔だ。しばらくはデフォルトサイズでいいか……


 レスミアもジョブを変更して体験してもらっていたのだが、地図の扱いが良く分からないらしい。簡単にレクチャーしてあげると、尊敬の眼差しで見られた。とは言え、TVゲームで慣れているなどと言っても通じ難い。取り敢えず、前の世界でも似たような物があったからと、説明したところ、


「ザックス様の世界って、ジョブは無いけど、魔道具が沢山あるんでしたよね? 頭の中に地図があるのが普通なんて、凄すぎですよ」


 なんか、斜め上に解釈された。うん、カーナビは普及していたから、似たような物かな? 流石に脳内表示は、まだSF技術だろう。



【スキル】【名称:ドロップアップ】【パッシブ】

・魔物のレアドロップの入手確率が上がる。



 お目当てのスキルをゲット!

 欲を言えば何%アップなのか、もしくは1.5倍とかの割合なのか詳しく知りたいのだが、詳しい数字は教えてくれない〈詳細鑑定〉さんなのでしょうがない。知りたければ、自分で統計を取れと言う事なのだろう。そこまで、やるかどうかは暇があればだな。今のところは、欲しいレアドロップを狙う時にスカウトを付ければいい。どの道、罠看破も必須なので、常設のジョブになりそうだ。



 修行者も新しいスキルを2つ覚えていた。ただし、新しいセカンドクラスは追加されていない。ENDマークも付いていないので、もう少し育ててみるしかないか。



【スキル】【名称:足払い】【アクティブ】

・素早く敵の足を払い、転倒させる。


【スキル】【名称:反復行動】【パッシブ】

・まったく同じ行動を連続して取ると、MP消費が減り、疲労しなくなる。



 足払いなんて、スキルがなくても出来るのに……ウベルト教官の足払いで転がされたのは、まだ記憶に新しい。まぁ、どこかで試し打ちしてから評価するか。

 そして、〈反復行動〉は、既に持っていた〈反復動作〉が消えて、上書きされた。元々は『同じ行動を連続して取るとMP消費や疲労が少し減る』だったので、上位互換である。

 ただ、『まったく同じ行動』というのがネックであり、あまり活かせたことは無い。あぶらとり紙を作る際にハンマーを振るった事くらいか? もしかしたら、チラシを書き写すのも対象かもしれないが、〈マニュリプト〉の方が楽だからしょうがない。これも使い道は追々だな。



 錬金術師で覚えたのは〈錬金調合中級〉と〈投擲術〉だ。念願の〈錬金調合中級〉は兎も角、今更〈投擲術〉かと思いたくなるが、爆弾を投げるのに必要なのだろう。フルナさんがこれを覚える前に、投げるのに失敗して、自爆し掛けたと笑い話にしていたからな。



【スキル】【名称:錬金調合中級】【アクティブ】

・鍋や釜に入れた複数の素材(レア度C、D)を調合し、新たなアイテムを作成するスキル。MPを注ぐ事で、マナ水に入れた素材を分解、そして寸法や構造、効果などをイメージすることで、再構成される。調合途中でイメージが途切れた場合、完成品が劣化し、最悪の場合消失する。



 これで、銀やチタンの加工が出来るようになる。前回、買えなかったレシピも買いに行かないと……いや、ソフィアリーセ様も誘って行くのも良いかもしれない。錬金術師協会は、レシピや購買のカタログを見るだけでも面白かったからな。丁度、明後日はレシピの書き方を教えてもらう予定なので、その後に誘ってみよう。



 魔道士レベル25も、新しいスキルを2つ……〈初級属性ランク6魔法〉があるから、数だけで言えば5つ……を覚えていた。



【スキル】【名称:魔力回収】【パッシブ】

・自身が充填した魔法陣をキャンセルする際、魔力を回収してMPを回復する。



 地味に嬉しい奴だ。使うまで充填待機させておいたり、〈カームネス〉で待機時間を延長したり出来るけれど、不必要になったら無駄にするしかなかったからな。



【スキル】【名称:初級属性ランク6、特殊魔法】【アクティブ】

・属性毎に異なった指向性の魔法で、敵を翻弄する。

火:ファイアマイン(指定位置に火属性の地雷を設置する。パーティーメンバー以外が踏むと大爆発し、爆炎と共に吹き飛ばす)

水:ツナーミ(大質量の奔流で押し流し、圧し潰す。術者の方には水が来ない親切設計)

風:ダウンバースト(強い下降気流で飛んでいる敵を叩き落す。地面にいる敵も、風で圧し潰す。術者の方には風が来ない親切設計)

土:ベリィ・ピット (指定位置に落とし穴を作る。パーティーメンバー以外が踏むと落とし穴に落とし、同時に頭上から穴の分の土岩を落として生き埋めにする)



 おおう、4種類とも内容がバラバラなのか。これは使って検証しないとな!

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