第242話 付与スキルの制限
念願の火属性耐性のアクセサリーを手に入れた。2人にも、鑑定結果を教えると、
「ギルドの店で何十万も使うより、こいつを集めた方が良いんじゃねぇか? 数倒しゃ、出るだろう?」
「う~ん、どうでしょうね? リーリゲンの時も、結構な数を倒して1個だけしか、ドロップしませんでしたし……
あ! 幸運の尻尾亭に一泊して、幸運のぬいぐるみを撫でさせてもらうってのは、どうでしょう? レアドロップが出やすくなりますよ!」
「あれは確か……効果も極小だったよな。しかも、1回出たら終わり……オリーヴァルソンから、慣熟オリーブの実が出て効果も終了じゃないかなぁ。
運任せで〈ダイスに祈りを〉って、手もあるけど」
〈ダイスに祈りを〉をダンジョン内で使うと、出目によって採取物が生えたり、魔物が召喚されたりする。村に居たときに何度か試しただけで、アドラシャフトに帰って以降は、殆ど自室で使っている。(悪い出目でも、最悪お金が減るだけで、良いときは、とラブる事もあるので……対象はレスミアだけな辺り、ダイス神は空気が読めるお人だ)
そこまで話して、ふと思い出した。ローガンさんが持っていたスキルがあるじゃないか!
「いや、スカウトのセカンドクラス、トレジャーハンターを取ったほうが早いな。レアドロップが増えるスキルがあるから、習得してから、数を倒したほうが良い。
それに、錬金術師もレベル25で銀を調合出来るようになるから、アクセサリーも自作出来るようになる」
レスミアにプレゼントするという意味で言ってみたのだが、嬉しそうにしつつも断られた。
「嬉しいのですけど、私には、このペンダントがありますし……」
「ん?……ああそうか、同時に使えるように、指輪かイヤリングの方が、良いか?」
「いえ、そうではなく、同時に効果は出ないので、ザックス様かヴァルトが使ったほうが良いですよ。勿論、人数分揃ったら欲しいですけど……」
『同時に効果が出ない』と言うのが理解できなかったので、詳しく聞いてみたところ、付与スキルには装備制限があるらしい。
手に持つ武器類、身に着ける防具類、それ以外のアクセサリー類で各々1つずつしか、付与スキルが発動しない。
レスミアの例で言うと、現在〈HP自然回復増加 微小〉のペンダントを着けているので、同じアクセサリー類のスキル付き指輪を嵌めても、指輪のスキルは発動しないそうだ。
ゲームのように、装備箇所が決まっているようなものと考えれば分かりやすい。俺も雷玉鹿のジャケットアーマーにグローブ、ズボン、ブーツと色々着ているが、効果が出るのは最初に身に着けた物だけだそうだ。
「騎士のジョブが人気な理由の一つだぜ。なにせ、騎士だけは、盾の付与スキルも有効化されるらしいからな」
他のジョブは3箇所までなのに、騎士だけは盾が増えて、4箇所に付与スキルを増設出来るそうだ。
確かにズルい。血統による魔法使いの適性が無ければ、確かに騎士を目指すわ。俺の身体の持ち主だった、ザクスノート君も騎士志望だったな。
結局、誰が使うかは一旦保留にして、階段近くにある採取地を目指すことにした。煙キノコを使った戦法で、それなりに楽に戦えるようになったので、補充もしておきたいからだ。
道中、幾度となく魔物を倒して行く。オリーヴァルソンの慣熟オリーブの実はポロポロ落とすが、灼躍が落とすのは根っ子ばかり。やはり、レアドロップでも確率に差があるな。
辿り着いた採取地は、残念ながら鉱石の土山が立ち並んでいた。最近は先に進むのを優先していたのと、アリンコ鉱山から十分に鉱石が手に入っていたからか、かなり久し振りに感じる。
部屋の壁をぐるりと囲むように出来ている土山は、まだ誰にも採取されておらず、全部で20山。ギルドの半分ルールで10山も採掘出来るのは美味しい。力自慢のベルンヴァルトが、ツルハシでガンガン突き崩し、俺とレスミアで鉱石を選り分けていく。雑談しながら作業するも楽しいからな。
採掘師のスキル〈石炭供給操作〉で、
【宝石】【名称:翡翠】【レア度:E】
・魔水晶の属性が偏り、風属性のマナが凝縮して鉱物化した物。風晶石の成り損ないだが、見た目と希少性から宝飾用として扱われる。魔水晶のように魔道具の動力にすることは出来ない
〈錬金調合中級〉を覚えたら、銀鉱石を調合してアクセサリーにすることを約束すると、更に上機嫌になる。
……色合いを考えると翡翠は単品で、灼躍花チャームは赤いカーネリアンの方が良いか。
そう言えば、チャームをまとめて2つ付けたら、どうなるのだろう?
特殊武具のブレイズナックル等には、複数のスキルが付与されている。1つの武具に複数のスキルが付与出来るなら、2つ付けたらスキルも増える?
採掘作業を終えたところで小休止にして、試してみることにした。
材料は、以前アクセサリーを作ったときの、銀の端材。小さな輪っかを作るくらいは〈メタモトーン〉で簡単に出来る。これで灼躍花チャームを繋ぐだけ。
「レスミア、ペンダントを少し貸してくれないか? チャームを2つ付けたらどうなるか、試してみたいんだ」
「んー、ザックス様に頂いた物なので、構いませんけど、大事に扱って下さいね。宝物なので……」
常に肌身離さず着けているらしく、ちょっとだけ逡巡した後に貸してくれた。胸元から出されるペンダントがちょっと羨ましく、体温で暖かいのが生々しい。
深く考えないようにして、作業を進めた。
【アクセサリー】【名称:百合と灼躍のシルバーペンダント】【レア度:D】
・百合花と灼躍花のチャームが重ね付けされたペンダント。赤と白のコントラストで、お花好きをアピール出来る。
・付与スキル〈HP自然回復増加 微小〉
※レア度が低い為、〈火属性耐性 微小〉のスキルは発動しません。
んんん?
スキルは2つ付いたのに、発動していない?
レア度という文言に、思い付くことがあった。特殊アビリティ設定を変更し、レア度別の武器を取り出してみる。
【武具】【名称:ミスリルソード】【レア度:B】
・軽くて魔力伝達率が良い金属、ミスリルで作られたロングソード。普段は銀色の刀身だが、魔力を通すとエメラルド色に反射するようになる。
ミスリル武具の特徴として、魔力を通していると魔力で刀身が保護され強度が上がり、攻撃は無属性の魔力攻撃となる。
・付与スキル〈剛腕〉〈敏速〉〈軽量化〉
【武具】【名称:プラズマランス】【レア度:A】
・アダマンタイトとミスリルの合金から作られた馬上槍。各金属特有の特徴は失ったが、硬度と軽量化、魔力伝達率が両立している。柄には多数のアメジストが絢爛な意匠と共に埋め込まれ、槍自体が雷属性を備えている。魔力を通すことで穂先が帯電して、敵を麻痺させることが出来る。また、〈プラズマブラスト〉による遠距離攻撃も可能。
・付与スキル〈黒雷〉〈雷精霊の加護〉〈電光石火〉〈プラズマブラスト〉
【武具】【名称:聖剣クラウソラス】【レア度:EX】
・光をモチーフに精霊が作り上げた聖剣。光の7色に因んだ7属性の宝玉が埋め込まれており、スキルにて各属性の光剣を操る事が出来る。
【破壊不可】【盗難防止】【自動回収】。
・固有スキル〈プリズムソード〉★★
火水風土氷雷光の7属性の光剣を生み出し、自動攻撃する。又、使用者の視界内には光剣の剣先にロックオンカーソルが映り、これを目線で動かし攻撃対象に重ねる事で、任意の敵を攻撃出来る。聖剣本体の宝玉に触れる事でロックオンを解除し、自動攻撃モードに戻す事が出来る。自動攻撃の対象は、魔物、赤字ネーム、灰色ネーム。野生動物や無機物、白字ネームは避けるので、攻撃したい場合はロックオンが必要。
【武具】【名称:聖剣
・異世界の神が所持していたとされる剣。逸話の通り火属性に特攻のスキルが付与されている。
その他にも、ダンジョン内の魔素を吸収し、所持者のMPを回復するスキル〈MP自然回復量極大アップ〉や、魔法を切り払い吸収する〈魔法切り払い〉、魔法ダメージをMPに変換して吸収する〈ダメージMP変換〉、聖剣で傷付けた敵のMPを奪う〈MPドレイン〉など、MPを回復する手段が多数ある。
【破壊不可】【盗難防止】【自動回収】
・固有スキル〈火属性即死〉、〈MP自然回復量極大アップ〉、〈魔法切り払い〉、〈ダメージMP変換〉、〈MPドレイン〉
順にレア度Bで3つ、レア度Aで4つ、レア度EXで1つと5つ。いや、聖剣クラウソラスは除外したほうがいいか。
このパターンから推測するに、レア度Cで2つまで、レア度Dのペンダントはスキル1つまでしか有効化されないのだろう。
「つまり、チャームを2つ着けるなら、銀より上の素材でアクセサリーを作らないと駄目ってことか……」
「まぁまぁ、気を落とさないで下さい。そのうち手に入りますよ」
良いアイディアと思ったんだが、まだまだ力不足、レベル不足のようだ。銀の上の素材は何だったか。混ぜ棒の黒魔鉄がCだった気がする。
取り敢えず、灼躍花チャームは取り外し、ペンダントを返した。
「さて、そうなると、接近戦をするヴァルトが一番必要かな?」
「良いですよ。灼躍相手なら、私も弓がメインですからね」
「おう、すまねぇな」
チャームの輪っかを〈メタモトーン〉で再加工し、挟み込むピンに作り変える。
プラズマランスを興味津々で眺めていたベルンヴァルトに、装備させてみた。雷玉鹿のジャケットアーマーには、左胸に勲章を取り付けられるようになっている。そこに、挟み込んだわけだ。
【アクセサリー】【名称:灼躍花のピンブローチ】【レア度:D】
・灼躍花チャームをそのまま使ったブローチ。服だけでなく帽子やバック等を、お手軽に飾る事が出来る。
・付与スキル〈火属性耐性 微小〉
何故か名前が変わったが、スキルは機能しているみたいなので、ヨシ!
「なぁ、ちょっと恥ずかしくねぇか? 男が花のアクセサリーなんてよ。レスミアみたいに、服の中に隠せるやつにしてくれよ」
「すまん、素材がないから、25層まで待ってくれ」
「え~、可愛くてお洒落ですよ! ワンポイントくらいなら大丈夫、大丈夫!」
レスミアがフォローしていたが、ベルンヴァルトはしきりにジャケットを見て、微妙な顔をしていた。
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