第106話 ゴーレムの標本とダーツの練習

 一旦、〈ゲート〉のスキルで脱出し、10層のボス狩りに向かった。植物採集師と採掘師のレベルを上げておく為だ。罠術師は既にレベル5に上がっているが、これもセットした。



 そして、ボス戦2回目。新しく覚えたスキルを試した。


「〈トリモチの罠〉!」


 手を着いた先の地面が染まる。1m四方の白い絨毯を広げたようだ。ゴリラゴーレムを誘き出して白い部分を踏ませると、足がくっ付いて前のめりに倒れ込んだ。倒れた事で下半身もくっ付いて、藻搔いているが立ち上がれない。両腕の丸太をバタつかせて危ないので、追加で〈トリモチの罠〉を使って、上半身と腕も拘束する。


 最早、全身を粘着床にくっ付いて、藻搔くことも出来ない様だ。ゴリラゴーレムの標本の出来上がり!

 罠術師レベル10で覚えた〈トリモチの罠〉も面白いな。搦め手には持って来いだ!



【スキル】【名称:トリモチの罠】【アクティブ】

 ・接触箇所の前方を粘着質のトリモチに変える。ただし、変化させる対象は非生物で、固体でなければならない。湖や川などの液体には効果が無い。



 〈かすみ網の罠〉が空中用だから、今度は地上用の罠なのだろう。使う時に手を地面に着く必要があるけれど、MPの消費も少ないし使い勝手は良さそうだ。ゴリラゴーレムの背中に乗って、首の辺りを剣でガシガシ突きながら、使い方を思索した。



 植物採取師と採掘師もレベル10になったが、目新しいスキルは覚えておらず、ステータス補正が上がった程度だ。次に期待だな。



【ジョブ】【名称:植物採取師】【ランク:2nd】解放条件:採取師Lv15以上、植物系採取地で多く採取する。採取物をその場で食べる。

 ・非戦闘職。植物系採取地に特化し、採取地で採取をすると経験値が貰える。〈自動収穫〉スキルと各種手腕スキルを習得して、作業時間を短縮することが出来る。その分、多くの採取地を巡ろう。


 ・ステータスアップ:HP小↑、筋力値小↑、耐久値小↑、敏捷値小↑【NEW】、器用値小↑

 ・初期スキル:採取師スキル、自動収穫、葉物収穫の手腕

 ・習得スキル

 Lv 5:初級鑑定【NEW】

 Lv 10:敏捷値小↑【NEW】



【ジョブ】【名称:採掘師】【ランク:2nd】解放条件:採取師Lv15以上、鉱物系採取地で多く採取する。宝石を採掘する。

・非戦闘職。鉱物系採取地に特化し、採取地で採取をすると経験値が貰える。レベルが上がると狙った素材を採掘しやすくなるスキルを習得する。しかし、あくまでも入手しやすくなるだけなので、数を掘ろう。


・ステータスアップ:HP小↑、筋力値中↑【NEW】、耐久値小↑、器用値小↑

・初期スキル:採取師スキル、アイテムボックス小、採掘道具強化

・習得スキル

 Lv 5:初級鑑定【NEW】

 Lv 10:筋力値中↑【NEW】



 罠術師はレベル5で新しいスキルを〈魔物鑑定初級〉と〈アイテムボックス小〉を覚えていたが、レベル10は〈トリモチの罠〉だけで、ステータス補正は上がっていなかった。



【スキル】【名称:魔物鑑定初級】【アクティブ】

・10回以上倒した事のある、自身の基礎レベル未満の魔物の情報とドロップ品が分かる。



 後々、ウインドビー相手に使ってみたところ、こんな感じだった。



【魔物】【名称:ウインドビー】【Lv16】

・50㎝サイズの大型蜂。高速移動による毒針刺しと、風魔法亜種の〈ウインドニードル〉を使用する。本体の毒針に刺されると、高確率で状態異常の毒に陥るため、解毒薬は携帯しておこう。魔法を使う際は止まるので狙い目。

【ドロップ:兵隊蜂の毒針】【レアドロップ:ハチミツ、蜜蠟】



 弱点が分からないのか……魔法使いでもなければ弱点を知ってもしょうがないからか? いや、それでもパーティーメンバーに魔法使いが入れば必要になるのにな。そして、なにより10って条件が面倒だ。特に初見の魔物には使えないのが致命的過ぎる。

 〈詳細鑑定〉の劣化版なので使わないかなぁ。




 その後は、お昼の3の鐘までダンジョンの裏手で蜘蛛の巣解体をして過ごした。使い道が出来た粘着棒を量産するためでもある。ただ、今までの糸玉のようにグルグルと巻くと数が作れないので、木の棒の持ち手を残して粘着糸を巻き付けるだけに留めた。先端の巻き付き量を増やしてみたりして、投げやすく狙いやすい形状を作り、試し投げをする。〈投擲術〉の補助のお陰で狙った場所に当てやすいので、ダーツ感覚で周辺の木に投げて楽しんだ。



 しばらくすると、レスミアがやって来た。まだ少し早いが、その時間で弓の練習をするそうだ。張り切って、昨日も練習していた林へ入って行く……が、その途中で、粘着棒が何本も張り付いた木を見られて「また、変な事してる……」と呆れられてしまった。「投擲の練習だから!」と主張したものの、レスミアは尻尾を小さくフリフリすると、そのまま林の中に行ってしまった。なんとなくだけど、尻尾だけで「はいはい、分かってますよー」とおざなり返事されたのかな?


 その後は林の中から、コーンッと矢が当たる音をBGM代わりに、解体を続けた。



 3の鐘が鳴ってからの昼食は、リクエストした踊りエノキの肉巻きがオカズに用意されていた。メインにするには少し物足りないので、他の料理もあるけれど。



【食品】【名称:踊りエノキの豚肉巻き】【レア度:E】

・踊りエノキを豚バラ肉で巻いて炒めただけの手間いらずな料理。シャキシャキの歯応えと、豚の旨味が癖になる。

 ダンジョン産の調味料が使われているため、効果時間が伸びている。

・バフ効果:HP小アップ

・効果時間:15分



「ようやく、小アップの効果が出ましたよ! 踊りエノキが決め手で間違いないですね!」


 幸いな事にワイルドボアがドロップする、少し元気の少ない踊りエノキでもバフ効果が出た。採取地で取れる元気な方は調合用と、使い分けが出来そうだ。ただ、それでも毎日使われると在庫が心配になる。踊りエノキはワイルドボアを倒しても1個しか手に入らないし、採取地の方はもっと数が少ない。

 嬉しそうに料理を食べながら「踊りエノキを上手く使う料理を考えなくては」と言うレスミアには心苦しいが、釘を刺しておくか。


「レスミア、小アップの原因も分かった事だし、次はダンジョン内でも食べれる軽食を考えてくれないか? 普段の食事はバフ料理である必要はないからね」

「あ、それもそうですね。軽食となるとサンドイッチか、お菓子がいいかな? 蜜リンゴのバフ効果も何になるか試してみたいですね」


 あれもこれも、と始まった料理談義に相槌を打ちながら、嫌な考えが頭がよぎった。お菓子のバフ効果を高めるのにも、踊りエノキが使われるのだろうか?

 甘いキノコとか、ちょっと遠慮したいなぁ。



 食後はお茶をしながら、17層迷路の道順決めをする。宝箱部屋が3ヶ所と採取地も2ヶ所あるので、全て回ろうとすると大変だ。なので6層の時の様にショートカットを多用していく。ほぼ直線ルートなので、地図上に破壊する壁にXを書き込んでいくと、その多さにレスミアは呆れた声を出す。


「いくら〈ウインドシールド〉で壁を破壊出来るとは言え、多すぎますよ。この辺とか、ちょっと迂回するだけなので、破壊しているとむしろ時間が掛かってしまうのでは?」


「ん? 〈ウインドシールド〉は使わない……ああ、17層は土壁じゃなくて、生け垣だって言ってなかったね、ごめん。

 木を斬って蜘蛛の巣を回収するように、生け垣も斬ってストレージに回収するつもりなんだ」

「それなら納得ですけど、〈ウインドシールド〉は使わないのはちょっと残念です」


 13層以降は回避型の魔物ばかりだから、使う機会は無い。いや、今までも土壁と、行動不能にしたフェケテリッツァにしか使ってないけどな。打撃力はあるけれど、命中精度は大雑把なので動かない相手にしか使いにくい。なので、残念そうに言っても使いません。

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