第73話 念願の僧侶と、残念な英雄その2

 新たに修行者のジョブが追加された訳だが、実はもう一つジョブが増えていた。それは念願のあのジョブだ。



【ジョブ】【名称:僧侶】【ランク:1st】解放条件:基礎Lv5以上、他者を無償で治療する(薬品はレア度B以上、身内は除く)

・創造神を信仰し、祈りを捧げる信徒。神へ魔力を捧げる事で回復の奇跡を授かる。パーティーを支える、HP回復と状態異常回復のエキスパートで、補助バフも少し使用出来る。魔法使い系よりはHPがあるが、防御力は低いので無理は禁物。後方で回復と補助に専念しよう。


・ステータスアップ: HP小↑、MP小↑、知力値小↑、精神力小↑

・初期スキル: ファーストエイド


【スキル】【名称:ファーストエイド】【アクティブ】

・HPを小回復する。軽傷や、血止めには効果があるが、重症には効果が薄い。



 僧侶の解放条件……昨日のアレだよな。癒しの盾でレスミアに〈ヒール〉を掛けた事で条件を満たしたようだ。フノー司祭の言っていた、教会で見習い修行とは何だったのか……

 あ、いや、これ不味い情報か? 教会が僧侶のジョブに就きたい子供を、信者兼労働力として集めているなら、この情報を不都合だよな。教会がどんな様子か見たことないので(この村はフノー司祭しかいないから)、何とも言えないが、この情報は慎重に扱わないとな。エヴァルトさん……は司教なので、先にノートヘルム伯爵に相談した方が良さそうだ。



 気を取り直して、次はレベル5で追加スキルが無かった、村の英雄だ。



【ジョブ】【名称:村の英雄】【ランク:1st】解放条件: 基礎Lv10未満で自身よりLv30以上高い敵を倒し、村の窮地を救う。村人全員から感謝される

・厳しい解放条件を満たした者だけがなれる特殊ジョブ。村を救う程度の力しかないが、長く険しい旅路の第一歩でもある。

 強力なステータス補正を持つ反面、習得スキルは前衛用と後衛用の両方を覚えるため中途半端になりやすい。他のジョブで補強しよう。


・ステータスアップ:HP中↑、MP中↑、筋力値中↑、耐久値中↑、知力値小↑、精神力小↑、敏捷値小↑、器用値小↑

・初期スキル:ブレイブスラッシュ

・習得スキル

 Lv 10:初級属性ランク0魔法、アイテムボックス中、中級鑑定【NEW】



 レベル15でも何も覚えていない、10毎で確定かな。そしてレベル10で覚えたスキル……ああ、うん、持っていると便利なスキル達だね……ゲームの主人公なら持ってそうなラインナップ。俺は全部持っているから(一部上位互換)、今更過ぎる。まだランク1魔法の方が使い道あるわ。

 それにしても、ステータス補正の高さから期待していたのに、5の倍数でスキルを覚えない事で株が下がり、ブレイブスラッシュの強さで上がり、レベル10の便利スキルで下がる。慌ただしいな、次のレベル20では上がるように期待するか。

 あ、念のため、新規スキルを〈詳細鑑定〉しておく。



【スキル】【名称:アイテムボックス中】【アクティブ】

・個人用の異空間へ物をしまうことが出来る。スキルを使用すると手元に黒い穴が現れ、そこに出し入れする。

 生き物は入らない(ただし、種子や菌類、細菌類は格納可)。容量は少し広い、時間経過有


【スキル】【名称:中級鑑定】【アクティブ】

・レア度Bまでを鑑定する



 少し広いって具体的な数字で欲しい。まあストレージと〈詳細鑑定〉があれば使う事は無いだろう。

 さて、もう一度気を取り直して、本命の魔法使いだ。



【ジョブ】【名称:魔法使い】【ランク:1st】解放条件:基礎Lv5以上、魔法使い系の血筋、もしくは他のジョブで属性魔法攻撃を使う

・攻撃魔法を主体とする魔法を使えるが、どの属性が使えるかは本人の資質による(最低でも1種類は確定)

 魔法は威力が高く、属性の弱点も突けるためダメージディーラーになる。反面、HPや防御力は低く、魔物の物理攻撃に弱い。魔法で敵の注目を集めやすいが敏捷が低いので逃げられない。前衛職に守ってもらおう。


・ステータスアップ:MP小↑、知力値中↑【NEW】、精神力小↑

・初期スキル:初級属性ランク0魔法、初級属性ランク1魔法、MP自然回復小アップ

・習得スキル

 Lv 5:初級属性ランク2魔法、カームネス

 Lv 10:知力値中↑【NEW】

 Lv 15:初級属性ランク3魔法【NEW】


【スキル】【名称:初級属性ランク3、範囲魔法】【アクティブ】

・指定した範囲を属性魔法攻撃する。敵味方の区別なく、範囲内にいる者にダメージを与えるため、巻き込み注意。

 火:フレイムスロワー、水:ウォーターフォール、風:ストームカッター、土:ロックフォール



 ついに範囲魔法が来た! 知力値の補正も上がったから魔法ダメージが更に上がるな。現状でも魔法無双なのに……ああ、魔法ばかり使っていたからレベル10毎のステータスアップでMPが上がったのか。最大MPが増えるのは嬉しいので問題ない。

 試し打ちしたいが、庭でやるのは不味いよな。ダンジョンに行くしかないか。ちょっと身体がだるいけれど、8,9層辺りなら問題ないだろう。




「駄目です! 身体が本調子でないなら、今日はお休みにしましょう」


 装備品の手入れをしていると、レスミアがやって来た。朝食(2回目なので少な目)を食べてから、今日の予定を話していたのだが、ダンジョン行きは即座に却下されてしまう。


「いや、8,9層辺りで新魔法の試し打ちするだけだよ。魔物もジーリッツァとヒュージラットだけだから、危険も無いし……」

「魔物は魔法で楽に倒せるでしょうけれど、心配なのは歩き回る方です。身体がだるいと自覚症状があるなら無理はしないでください」


 レスミアは目に涙を浮かべ、俺の手を握り締めて訴えかけてくる。そこまで心配されると、折れるしかなかった。自分を心配してくれての涙なので、無下には出来ない。


「分かったよ。今日は休みにするよ。でも、野菜の買い取りとか、装備品の相談をしたいから雑貨屋には行くよ」

「それなら、私も一緒に行きます。新しい弓も買わないといけませんから」


 そう言いながら、涙を拭いて笑い返してくれた。やっぱり笑っている方が可愛い。そう考えていたら、ついその頭を撫でてしまった。サラサラの髪は撫でていて気持ちが良く、レスミアも目を細めて受け入れてくれているので、しばらく撫で続けた。




 出かける準備をしていると、レスミアからジョブを職人にして欲しいとお願いされた。昨日は帰ってきた途端にダウンしたので、変え忘れていたようだ。


「それと、スカウトのジョブが変なんですよ。基礎レベルが一気に15に上がっているのには驚きましたけど、昨日の黒豚を倒したお陰ですよね? それなのに、スカウトはレベル8しかないのです」

 そう言えば、こっそり変えたので伝えてなかったな。


「〈ウインドシールド〉を張る前に、狩猫に変えておいたんだよ。しばらくは罠対策でスカウトを使うことになるだろうから、経験値は狩猫に上げた方が良いかなって……はい、狩猫に変更したから確認してくれ」

「一声かけて下さいよぉ…………ん?」


 文句を言いかけたレスミアだったが、不意に周囲を見回した。猫耳をピコピコ動かして音を探っているようだが、何故か首を傾げている。



【猫人族】【名称:レスミア、15歳】【基礎Lv15、狩猫Lv15】

 HP  D □□□□□

 MP  F □□□□□

 筋力値E

 耐久値F

 知力値F

 精神力F

 敏捷値C

 器用値C【NEW】

 幸運値C

 所持スキル

 ・隠密行動

 ・不意打ち

 ・投擲術

 ・猫着地術

 ・猫耳感知【NEW】

 ・マッピング【NEW】



 ふむ、レスミアの基礎レベル10のステータスアップは器用値か。最近は弓を訓練していたせいだろうか? 敏捷値と器用値特化なのは猫っぽい。そして、狩猫の方は……



【ジョブ】【名称:狩猫】【ランク:1st】解放条件:基礎Lv5以上、猫族、猫人族専用

・猫の身体能力を生かした、戦闘寄りのスカウト。罠の看破も出来るが習得は遅め。回避型の前衛として戦おう。

・猫族が狩猫の上位にクラスチェンジすると、猫人族よりの体格に近づく。


・ステータスアップ:HP小↑、筋力値小↑、敏捷値中↑【NEW】、器用値小↑

・初期スキル:隠密行動、不意打ち

・習得スキル

 Lv 5:投擲術、猫着地術

 Lv 10:敏捷値中↑【NEW】

 Lv 15:猫耳探知術、マッピング【NEW】


【スキル】【名称:猫耳探知術】【パッシブ】

・猫耳の精度が上がり、広範囲の敵の位置が分かるようになる。また、聞きたい音に集中することも可能。ON/OFF可。



「ああ、この〈猫耳探知術〉のせいですね。色々な音が、いきなり聞こえ出したから驚きましたよ。

 ……多分、村の広場の音ですね。何となく把握できるような……」


 目を閉じて猫耳からの音に集中している。その姿を眺めながら、レスミアのジョブ欄を改めて見させてもらうが、やはり僧侶のジョブは無い。昨日、俺にポーションを飲ませてくれたのだが、薬品はレア度B以上と指定されているので駄目だったのだろう。癒しの盾はスキル付きの武具だからOKだったのか? 武具や魔道具で癒す場合はレア度は関係ないのだろうか?


 レア度B以上の回復アイテムなど持ち合わせていないので、検証するのは癒しの盾しかないか。特殊アビリティ設定を弄って、癒しの盾を取り出してから声を掛けた。


「う~ん、普段は〈猫耳探知術〉はOFFにしておいた方が良いですね。ちょっと聞こえすぎ……っと、すみません、考え込んでいました。この盾は昨日のですね? まだ、どこか怪我が残っていたんですか? 早く言ってください!」

「違う違う、ちょっと実験を頼みたいんだよ。その癒しの盾に魔力を込めれば〈ヒール〉が使えるから、俺に掛けてくれ」


 ストレージからナイフを取り出して、軽く指を切る……薄皮1枚切れただけだった。そう言えば、初めて怪我をしたのが昨日だったので、実感がなかったが、耐久値が高くなっているせいか? 改めて力を入れて切ると、血が滲む程度に怪我をすることが出来た。


「実験好きですねぇ。もういいですか? 魔力を込める……こんな感じだったかしら? あ、光った!……〈ヒール〉!」

 レスミアはMPを使うアクティブスキル持っていないので、ちょっと手間取っていたが、何とか発動した。指の切り傷は綺麗に治るが、身体のだるさは直らない。やはり、スタミナまでは回復しないようだ。

 そして、レスミアのジョブ欄を見てみると……僧侶が追加されている!


「成功だ。レスミアのジョブを僧侶に変えたから確認してくれ」

「あ~本当に僧侶になってる……

 回復の奇跡〈ファーストエイド〉は、家事の手荒れとか、ちょっとした怪我に使えると便利そうですね。まあ、メインがスカウトなので、育てる気はありませんけど……」

「ジョブ一つしか付けられないから絞るしかないよな。まあ、低層を周ることがあれば、ついでにレベル上げする程度でいいんじゃないか?」


 あれもこれもと、全部育てている俺が特殊なだけだ。

 あ、僧侶が手に入ったから、癒しの盾さんがリストラ対象に……いや、まだ〈ヒール〉を覚えていないから出番はあるさ……多分。

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