第23話 パーティー編成

 ダンジョンの外に出てきたが、レスミアはまだ来ていないようだ。

 木陰で装備品を外してスキル〈MP自然回復量極大アップ〉をセットする。ストレージから出した水で一息ついていると、村の方から3の鐘が響く。その音に村の方へ目をやると、レスミアがバスケットを持って歩いているのが見えた。レザーワンピースとでも言えばいいのか、膝丈のスカートで、下はズボンとロングブーツだ。綺麗な長い銀髪は大きい三つ編みにまとめている。

 メイド服じゃないのは初めて見たな。


「お待たせしました。直ぐお昼の準備をしますね」

「丁度お昼の鐘が鳴ったところだし、グッドタイミングだよ」


 俺もストレージから敷物をだして敷き、昨日のスープ鍋や食器類を並べる。レスミアが持ってきたバスケットの中身はサンドイッチだ。


「沢山作ってきましたから、どうぞ召し上がれ」

「美味しそうだ、頂きます」


 手に取ったのは厚切りベーコンとレタスのサンドイッチ。作り立てなのか温かくてベーコンの良い燻製の香りが食欲をそそる。食べると口の中でベーコンの脂が甘く溶け、赤身部分は噛み応えが良い。こんなベーコンを味わったら、日本のチェーン店のペラペラなベーコンは食べられないな。実際、食べられないが……

 2種類目はハムとチーズとトマトのサンドイッチ。コクがあるとろけるチーズとトマトはよく合う、マスタードのピリリとしたアクセントも良い。

 3種類目は定番のたまごサンドだ。たっぷりのマヨネーズと黄身のクリーミーさに、大きめに切られた白身のぷりぷりとした感触が心地いい。


 因みにマヨネーズは瓶詰の物が売っているらしい。養鶏場にマヨネーズを作るためのミキサー魔道具があって、そこそこ量産されているとか。



 食後のお茶を飲みながら、ダンジョンの相談をする。レスミアも現在3層でジョブのスカウトもレベル3。休みの日に、村の奥様方とパーティーを組んでダンジョンへ行っているが、採取がメインで殆ど進んでいないそうだ。


「ザックス様とパーティーを組むことは奥様方に話して、パーティーを抜けてきました。私としても、あんな事があったのでレベルを上げておきたいですから」

 山賊の人質にされたことだろう。まあ、良くて慰み者、最悪死んでいたしな。



「先にパーティーを組んでおこうか。簡易ステータス!」

 パーティーを組む方法は習っている。簡易ステータスを相手に見せて、パーティー欄の【追加】を押してもらうだけだ。


【人族:転生者】【名称:ザックス、16歳】【基礎Lv7、戦士Lv2、商人Lv2、採取師Lv2】

 ・パーティー:無し 【追加】


 レスミアが【追加】ボタンを押したところで止まった。簡易ステータスのパーティー欄には問題なくレスミアが追加されている。因みにここでパーティリーダーの俺が、レスミアの名前を押すとパーティーから外せる。

【人族:転生者】【名称:ザックス、16歳】【基礎Lv7、戦士Lv2、商人Lv2、採取師Lv2】

 ・パーティー:レスミア 【追加】


「レスミアの簡易ステータスも見せてくれないか」

「え?ええ、今出します。簡易ステータス!」


【猫人族】【名称:レスミア、15歳】【基礎Lv5、スカウトLv3】

 ・パーティー:ザックス(リーダー)


 ふむ、パーティーメンバーの場合は、リーダーが表示されて【追加】出来なくなるのか。パーティーの掛け持ちは無理と。


「私のジョブはいつも通り……、ザックス様の簡易ステータスはおかしくないですか?ジョブが多い!」

「ああ、それで呆けていたのか。それは……」



 レスミアに特殊アビリティ設定の事を説明した。



「聖剣と時間が止まるアイテムボックス……ストレージ以外にも、複数ジョブとか羨ましいです。私もアイテムボックス欲しい!

 ザックス様はストレージがあるから、商人のアイテムボックスは使っていないですよね、下さい!」

 

 レスミアに詰め寄られて、早口で捲し立てられる。

 仕事に真面目でちょっとのんびり屋と思っていたので、この興奮状態には驚きだ。身長差で目の前にネコミミが来て撫でたくなる……我慢した。


「落ち着けって、そんなフルナさんみたいな事を言われても、スキルだから無理だよ。今は。

 俺の先生が言うには、昔は複数ジョブが当たり前だった時代があるらしいから、何か方法があるかもしてないってさ」

「直ぐには無理なのですね。残念です」

 ネコミミと尻尾までしゅんとさせているのは可愛い。


 簡易ステータスでジョブレベルが2に上がっていたので、当初の予定通りに村の英雄、商人、採取師に変更する。ついでに、ステータスの特殊アビリティ設定に【NEW】マークが付いているのを見つけた。早速開いてみる。


 ●特殊アビリティ設定一覧   ポイント2/33

・追加ジョブ(〇2次職5p、●3次職10p、〇4次職15p、〇5次職20p)

・追加スキル(●1枠1p、〇2枠3p、〇3枠6p、〇4枠10p、〇5枠15p)

・経験値増(〇2倍5p、〇3倍10p、〇4倍15p、〇5倍20p)

・パラメータ上昇1箇所5p~ →

・魔法適正1属性5p →

・特殊スキル(■詳細鑑定5p、■ストレージ5p、□ゲート5p、□充填短縮5p、□無充填無詠唱10p、■MP自然回復量極大アップ10p、□パーティージョブ設定1p【NEW】、□パーティー状態表示1p~【NEW】)


・特殊武器(□ミスリルソード5p、□紅蓮剣10p、□プラズマランス15p、□聖剣クラウソラス20p、□聖剣 天之尾羽張25p)

・特殊防具(□癒しの盾5p、□ミスリルフルプレート10p、□ブラストナックル15p、□聖盾20p、□アキレウスの鎧25p)



 特殊スキルに〈パーティージョブ設定〉と〈パーティー状態表示〉が増えている。名称からして、パーティーを組んだことが原因だろう。二つとも〈詳細鑑定〉する。



【特殊スキル】【名称:パーティージョブ設定】【パッシブ】【必要アビリティポイント:1p】

 ・パーティーを組んだ相手のステータス、及びジョブツリーを見ることができ、ジョブを変更することが出来る。



【特殊スキル】【名称:パーティー状態表示】【パッシブ】【必要アビリティポイント:1p】

 ・視界の隅に、自分とパーティーメンバーのHP、MP、状態異常を表示する。表示位置は変更可能。

 マップ系スキルがある場合、パーティーメンバーの位置を表示する。



 ほうほう、便利そうなスキルだ。必要アビリティポイントが安いのも良い。丁度、余っているポイントも2ポイント。早速、有効化してみる。

 

 視界の左下に、小さく名前とゲージが表示された。俺とレスミアの二人分が2段に並んでいる。名前の横にHPとMPのゲージがあるので、いちいちステータスを開かなくてもMP残量を確認できるのは良い。説明文には状態異常の表示もあるようだが、見当たらない。実際に状態異常に掛かった時に表示されるのだろう。



 パーティージョブ設定の方も試してみる。レスミアを見て、(レスミアのステータス表示)と念じてみると表示された。



【猫人族】【名称:レスミア、15歳】【基礎Lv5、スカウトLv3】

 HP  D □□□□□

 MP  F □□□□□

 筋力値E

 耐久値F

 知力値F

 精神力F

 敏捷値D

 器用値D

 幸運値C

 所持スキル

 ・罠看破初級

 ・マッピング



 俺と比べると筋力値が低くて、器用値が高いという感じだな。器用値が高いからスカウト向きなのだろうか。

 ジョブを選択しジョブツリー画面に遷移する。レスミアがジョブチェンジ出来るのは、基本の見習い修行者、戦士、スカウト、商人、採取師、職人の6種類と、下の方に狩猫、お昼寝子と初めて聞くジョブが2種類あった。

 先ずは職人から〈詳細鑑定〉する。


【ジョブ】【名称:職人】【ランク:1st】解放条件:基礎Lv5以上、物作りをする

 ・非戦闘職。何かを作ると少し経験値が貰え、出来の良いものほど経験値も増える。下積み期間なので、コツコツと練習し、〈見覚え成長〉で技術を学ぼう。物作りの際に〈作業集中〉しておくと、出来の良い物が作れる。


 ・ステータスアップ:HP小↑、筋力値小↑、耐久値小↑、器用値小↑

 ・初期スキル:作業集中、アイテムボックス極小


【スキル】【名称:作業集中】

 ・短時間の間、器用値アップ


【スキル】【名称:アイテムボックス極小】

 ・個人用の異空間へ物をしまうことが出来る。スキルを使用すると手元に黒い穴が現れ、そこに出し入れする。

 生き物は入らない(ただし、種子や菌類、細菌類は格納可)。容量は極めて小さく、時間経過有



 解放条件は物作りか……料理でもいいのだろうか? 見覚え成長が色々と使えそうなので、早く解放したい。

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