第19話 2層と鉱石掘り

 2層への階段を目指しながら、出会ったパペット君を魔法で虐殺していく。一発で倒せるので可哀そうになるくらいだ。

 ここまで色々検証した結果、ランク1魔法の魔法は、同じ威力でしか発動出来ないようだ。魔力を多めに魔方陣の込めようとしても入らず、便利魔法のように発動中に魔力を追加することも出来なかった。唯一の良い発見は、発動待機が出来た事だ。魔法陣に魔力が満ちた状態でも魔法名を言わなければ、その状態を保ち続ける事が出来る。ただ、発動待機中は息苦しいような、胸が締め付けられるような感じがするので3分も持たない。まあ、魔力充填状態でキャンセルすると魔力が霧散して無駄になるので、発動待機させて的を探せば無駄は減るだろう。


 そして、火魔法で燃やすとドロップが木炭になるのは確定の様だ。既に3本ゲットしている。ただ、調子に乗って使いすぎたせいか、階段を見つけた時には頭が重くなっていた。

 頭痛がするほどではないが思考が鈍くなり、動くのが億劫に感じる。ステータスを見るとMPが2割を切っていた。ストレージの丸太と木炭の本数を数えると15本。問題なく動こうとするならランク1魔法は10発くらいだろうか。


 階段のある部屋は魔物も巡回しないので、休憩することにする。壁を背に座り、腰に付けた小物入れから懐中時計を取り出す。これもザクスノート君の遺品だ。ストレージに入れると時間が止まって、針が狂ってしまうので小物入れに入れているのだ。


 時間は14時過ぎ。初めてのダンジョンに熱中し過ぎたようだ。時間を確認したせいか、急に腹が減ってきた。宿屋で買ったサンドイッチを取り出して昼食にする。

 豚肉に香草をまぶして焼いてあるようで、ニンニクの香りが食欲をそそる。レタスと玉ねぎのシャキシャキした食感も良いし、野菜のお陰で後味もくどくない。大きめのサンドイッチが3切れもあったのに、軽く平らげてしまった。ちょっと物足りないくらいだ。

 ストレージから温かい紅茶を取り出し、のんびり休憩した。


 30分ほど休憩し、頭の重さもなくなったのでステータスを確認すると、MPは3割を超えていた。30分

 でMP1割程回復か、思ったより時間が掛かるな。そういえば、MP回復が早くなるスキルがあったような。特殊アビリティ設定を確認し直すと見つかった。



【特殊スキル】【名称: MP自然回復量極大アップ】【必要アビリティポイント:10p】

・MPの自然回復量が極大アップする。



 うん、また具体的な数字じゃないから分からないが、極大というなら効果は高そうだ。休憩の時には経験値増からMP自然回復量極大に切り替えた方が良いだろう。

 そしてMP回復手段の有る武器も見つけた。



【武具】【名称:聖剣 天之尾羽張】【レア度:EX】

・異世界の神が所持していたとされる剣。逸話の通り火属性に特攻のスキルが付与されている。

 その他にも、ダンジョン内の魔素を吸収し、所持者のMPを回復するスキル〈MP自然回復量極大アップ〉や、魔法を切り払い吸収する〈魔法切り払い〉、魔法ダメージをMPに変換して吸収する〈ダメージMP変換〉、聖剣で傷付けた敵のMPを奪う〈MPドレイン〉など、MPを回復する手段が多数ある。

【破壊不可】【盗難防止】【自動回収】


・固有スキル〈火属性即死〉、〈MP自然回復量極大アップ〉、〈魔法切り払い〉、〈ダメージMP変換〉、〈MPドレイン〉


 流石は聖剣クラウソラスをよりもワンランク上の聖剣だ。必要アビリティポイントが多く25pもいるのが難点だけれど。現状、最大値が33なので、使うと残り8ポイントしか残らない。もう少しアビリティポイントが増えるまでは保留だな。



 階段を下り、2層に入る。石造りなのは1層と同じなので代り映えはない。夕方まで時間がないので、地図を確認して採取地に向かうとしよう。ここも魔物はパペット君だけだし、切り捨て御免だ。


 警戒もそこそこに、速足で進む。パペット君がいても、攻撃に入る前に接近して両断する。丸太を拾うのに足を止める必要があるが、一応回収していく。

 2層のレベル2パペット君は、若干動きが良い気がするが、一撃で両断出来るので誤差の範囲だろう。




 そんな調子で急いだため、夕方前に2層の採取場に着いた。部屋の中の壁は一部分が石壁でなく、土や岩の塊が盛り上っていた。そんな盛り上がりが5カ所……いや1か所は既に崩された後なのか盛り上がりが小さい。ルールは部屋に入った状態から半分までなので、2か所は採集できるか。


 ストレージからツルハシを取り出して、ガンガン掘り出す。筋力値の補正があるせいか、土の部分は簡単に崩せる。崩していると黒くて光沢のある鉱石や、赤みがかった鉱石が出てきた。鉱石が気になるが、取り敢えず壁の盛り上がり部分を全て崩してしまう。沢山崩すと土埃も大量に舞うが、風魔法のブリーズで吹き飛ばす。マスクでも買ってきた方がよかったな。


 部屋の壁と同じ位置まで掘ると、そこからは急に固くなっていて掘れなくなってしまった。掘れるのは盛り上った部分のみの様だ。


 ツルハシを仕舞い、大きいシャベルで鉱石っぽい物と、ただの土と石を選り分ける。まだ大きい土塊もあるがシャベルで突き崩して、中に鉱石がないか確認する。


 選り分けた後は、鉱石に付着している土をタガネとピックハンマーで取り除いていく。しかし、ハンマーくらいならともかく、タガネを使うのは初めてだ。前世の学校の授業で、金鎚と蚤を使って木工をした覚えはあるので同じように使ってはみたものの上手くいかない。タガネの先端の杭の部分がグラついて狙いがずれるし、危うく手を叩きそうにもなった。


 結局タガネは使わずに、ピックハンマーの尖った方、ピック部分で叩いた方が早かった。筋力値補正の力技なだけだけど。最後にブラシで細かい土を払い、鉱石の姿を拝む。野球のボールよりは少し大きく10㎝ほどで、どれも真球というほどではないが、ゴツゴツした丸い形をしている。黒い石が2つ、黒くて光沢があり重い鉱石が2つ、赤褐色の鉱石が1つ、順に〈詳細鑑定〉する。



【素材】【名称:石炭】【レア度:F】

・地中に埋もれた植物が長い年月をかけて、地熱や地圧で石炭化した物。ただし、ダンジョン産の物は魔素から形成されたものなので、ダンジョン内に炭鉱があるわけではない。主に燃料として使われる


【素材】【名称:スズ石】【レア度:F】

・錫を含んだ鉱石。


【素材】【名称:銅鉱石】【レア度:F】

・銅を含んだ鉱石



 丸い石といえば、選り分けた不要な土や岩の方にも丸い石があったので鑑定してみる。



【素材】【名称:石玉】【レア度:F】

・投げるのに適した大きさの丸い石。投擲武器の代わりになる。



 おおっと、一応素材だったか。あまり価値は無さそうだが、牽制で投げる用に幾つか確保しておくか。土から取り出す際にピックハンマーで叩いたら、石玉まで割れてしまったので強度は高くないようだ。



 もう一か所の盛り上っている土山も同様に、崩して鉱石を取り出した。麻袋に種類ごとに詰めていくが、さすがに鉱石は重い。ストレージやアイテムボックスが無い場合、これを背負って魔物と戦いながら出口まで行くのか、キツイなんてものじゃないな。パーティにアイテムボックス持ちや、魔道具のアイテムカバンが必須とされるわけだ。



 ストレージに鉱石や採取道具を仕舞い、帰り支度をする。本来なら歩いて出口までいかないといけないが、俺にはこの特殊スキルがある。



【特殊スキル】【名称:ゲート】【アクティブ】【必要アビリティポイント:5p】

 ・帰還ゲートとトランスポートゲートの複合スキル。



 ダンジョンから脱出できる帰還ゲートと、街から街への転移門を起動するトランスポートゲートが使えるお得なスキルだ。どちらもスカウトと商人がレベル25以上で覚えるスキルらしいが、最初から使えるのは助かる。流石、特殊アビリティ設定だな。


 〈ゲート〉を設定する際に、ジョブレベルが2に上がっているのと【NEW】マークが見えたが、後回しにして帰還を優先した。〈ゲート〉を使用すると、幅3mで天井まで届く赤い壁が現れた。壁の表面を下から上に光が流れている、上のエントランス行きという事だろうか。


 赤い壁の中に入ると、その先はエントランスの赤い鳥居だった。

 初めてのダンジョンだったが、無事に戻ってこられたようだ。胸をなでおろすと帰路についた。

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