第3話 結論その1!ここから読んでも大丈夫

白人女性大好き! かずきーでございます。


 前二回で長々と私の白人女性観を述べてまいりました。

 この回でやっと本題のいかに欧米人っぽい性格のキャラクターを作り上げられるかについて触れてまいります。


 まず結論から申し上げますとその手段とはセリフを省略しないで言い切りにしてキャラの意志、主張を明確にすることです。


 「は? それだけ?」と思われるかもしれません。


 他にも手段はあり得るとは思いますが、私個人の意見としてはこの点に注意をするだけで欧米人らしさが増すと思います。

 では何故そう考えるか、その理由を挙げてまいります。


・大多数の欧州言語に比べて、日本語が文法上言い切りを回避し易い言語である。


 この理由が挙げられます。

 そしてこの理由のポイントとなる品詞が動詞です。


 動詞は文字通り主語の動作を示す重要な役割を持った言葉で、動詞があるからこそ主語の動作が明確に表現されます。そんな重要な役割を持った動詞ですが、日本語会話において動詞が省略される場面が少なからず見受けられます。

 例えば以下の様な話し方をしたことはありませんでしょうか。


「もう遅いし、映画館には行くべきではないかと……」


 文脈から……の部分には「(私は)思います」とか「(私は)考えます」が続きそうであると多くの日本語ネイティブは推測できるでしょう。


 この省略部分を含めて英語に変えると

It's already too late so I think you shouldn't go to the movie theater.

になると思われます。


 ここで英語で日本語の様にI thinkを取り外すと、「もう遅いから、映画館には行くべきではない」という、意見を述べる文章から断定する文章に変わってしまい、かえって角が立ってしまいます。


 対して日本語においては「ではないかと私は思います」と動詞まで言い切った方が角が立つ表現には聞こえないでしょうか。そして、動詞を省略した提案は目上の人物に何か具申する時に日本人が日ごろ無意識に使ってはいませんでしょうか?


 この日本語と欧米言語の対比から、欧米言語の構造上「私は思う」と自身の意図を動詞で明言した方が角が立たないのに対して、日本語においては動詞を省略した方が角が立たないという逆転の現象が起きていると私は考えるのです。


 この現象は特に言う、思う、見える、聞こえる、感じる、と言った主語の感覚を表す動詞において起きやすいと私は考えます。


 そして小説においてはこれら感覚の動詞によってキャラクターの感情、行動、様子等が描写されるため、頻出の重要動詞であると思います。


 本創作論のあらすじに書いた、金髪碧眼美少女ヒロインという設定なのに中身がまんま日本人だと感じた違和感の理由がまさにこの問題にあたります。


 私が違和感を通り越して気色悪さ感じたとある白人ヒロイン作品では日本語が話せないロシア人美少女が唯一ロシア語が話せる主人公を頼るという設定で展開されていました。著者様がロシア語をご存じでないからか、作中の会話は「日本語」《ロシア語》の様に書き分けられていたと記憶しております。そして、その作品のヒロインは気が弱いという設定らしく、唯一頼れる主人公に対してロシア語で《だから……、かと……、ですが……》で終わるセリフで会話をしていたのです。


 ここまで本論文をご覧頂けた方にはもうご理解頂けると存じますが、これは気が弱い日本人が使うセリフであり、決してロシア人らしいセリフではありません。

 欧米人にも当然気が弱い女性はいます。しかし、どんなに気が弱くても言語の構造上、先述した感覚の動詞を省略することはまずないのです。(0%とは言いません)

 何故なら欧米言語では主語の次に動詞が続き、その後に目的が続く構成だからです。フランス語やイタリア語のような主語が省略できる言語では動詞から文章を始めることもできますから、動詞を省くとそもそも文章が作れません。


(動詞が最後に来るハンガリー語のようなごく一部の例外はあります)

En Kazuki vagyok.

私は かずき です。


 このロシア人ヒロインが生まれも育ちも日本で日本語のネイティブならばこのセリフを使っても違和感はありません。しかし、この作品では日本語が話せない金髪碧眼ヒロインの彼女に主人公だけが話せるプレミア感があるからこそ、読者が金髪の美少女を独り占めするカタルシスを味わえるのです。

 そうとなれば彼女が日本語を理解できる設定にできるはずがありません。しかし【ロシア語で話しているヒロインのセリフ】と表現されている彼女のセリフには先述の日本人の話し方の癖が色濃く表れてしまっているのです。


 ではいかにして気が弱い欧米人のセリフを日本語で表現するか?

 その例文を提案いたします。

(これはあくまで私からの一提案であり、絶対的な正解とは限らないとご理解頂いた上で採用なさるかご判断頂きたいと思います。)


《もう遅いから、映画館には行くべきではない……と思うわ》

英語にすると

It's already too late so you shouldn't go to the movie theater. I think.

となります。


 なぜこれで気弱を表現できたと私は考えるか。

 一度行くべきではないと断定の形で終わらせた後に、あくまで一意見に過ぎないと意味するI thinkを付け足すことで、既に相手に示した主張の強さを後から弱める優柔不断ぶりを示せます。

 この優柔不断な様子から気の弱さを表現できると考えるからです。


 実際に欧米人があいまいに意見を述べたい時にこの様な付け足しの感覚動詞を使うのを良く見聞きしたことがあります。

......I think. ......credo. ......Ich glaube.


まとめ

今回までで述べた感覚動詞省略話法の特徴についてまとめます。


・動詞を省略する言い切らないしゃべり方は日本人特有の癖である。

・日本語では感覚動詞を省くことで判断を相手に委ねる話し方ができる。

・多用すると気の弱さの助長にもなる。

・自分に都合が悪い話題を話す時に使用すると丁寧ではなく傲慢になる。※


※については五章にて詳しく触れてまいります。


 この点を意識してこの癖をセリフに入れないように構成すればきっとあなたの金髪碧眼ヒロインは欧米人に見える。

 そう私は考えるのです。


 次回はこの日本人特有の話し方の癖をあえて活用してキャラの日本人らしさを際立たせたり、駆け引きに使うための考え方について述べていきます。




 私のもう一つの作品「俺は英語が嫌いだ」では本作で紹介している話法を用いるのはもちろんのこと、読者様自身が効率的に外国語を異文化理解と共に身に付けられる方法を青春ストーリー仕立てで綴っております。合わせてご覧頂ければ幸いでございます。

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