第3話 今こそ立ち上がる時
ライトニングはニューウルヴズの自宅に戻った。
屋敷の広間にはモルテッドの遺体が置かれ、花が添えられた。
気性の激しいスタンは怒りを抑えきれず、ライサンを責めた。
冷静なブロウがそれを制し、医師の検死報告を待った。
「猛毒。コブラの数十倍……いや、この数値は異常です」
「何だって?」
「肩の咬まれた痕、その上顎は人間の頭ほどある」
「バカな! 真っ昼間の遊園地にそんな」
「あるとしたら……〝レプタイルズ〟の仕業」
ライトニングはモルテッドの冷たい手を握り長く祈った後、寝室に向かった。
ベッドには妻のアルバータが座り、コリーナの寝顔を見つめていた。
「アルバータ……つらい思いをさせたな」
「私は大丈夫。でもコリーナが怖がって。ようやく今寝ついたところよ」
「そうか。せっかく楽しみにしていた遊園地を……行けなくてすまなかった」
「いいの。でも今度は約束守って、あなたも一緒にね」
「わかった」
ライトニングは腕を組んで突っ立ったままだ。
「あなたこっちへ来て……ほら見てよコリーナの寝顔。本当可愛いんだから」
「ああ」
彼はベッドに腰を下ろす。しばらく見つめた後、呟くように言った。
「レイヴォンズへ行けと。あのスプンフルが」
アルバータは黙っていた。
ライトニングは彼女を抱きしめ、優しくキスをした。
****
商業都市レイヴォンズには数人のエルドランドマフィアが土地の人間になりすまして潜伏していた。
その一人、ブラック・クロウは雑貨商として今日もトラックで仕入れに出た。
港の倉庫の端。キャップにダウンジャケット姿の老人が一人釣り糸を垂らしている。
ブラック・クロウは注意深く速度を落とし、ゆっくりとそこへトラックを停めた。が、老人は見ない。
ハンチング帽を被るクロウが横に立つと老人は煙草を揉み消し、口を開いた。
「モルテッドが
「残念だ。友を失うのは耐え難い。我々の仲間も祈ってる。安らかなる眠りを」
十字を切る。クロウにとってモルテッドは同朋、兄弟に等しかった。
海を眺めながら老人は言った。
「……かなり調べられてるぞ」写真を見せる。
「よく撮られてるなあクロウ。それに警官殺しまで……」
「でっちあげだ。俺たちにはアリバイがある。殺ったのはハウル・スプンフルだぜ。得意のなすりつけだ」
「フフッ、わかってるよ」と老人は鼻で笑った。
「ライトニングさんは……ここへ?」
クロウの問いに老人――を装ったスタンは顔を向けた。
「いや。ここへは来ない」と言い、鋭い目で伝えた。
「《今こそ立ち上がる時だ》という伝言だ」
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