第10話「脱衣パート③」

 新入にいり太陽たいよう桐ヶ崎きりがさきかすみ、二人の対決は脱衣パートが続いている。


 霞が2失点した時点で脱衣宣言アーマーパージをしたため(省略)、霞は2失点した分の二点、特殊ルールによる五点、着用物の規定を違反したことによるペナルティの一点、合計八点の内二点を脱ぎ終え、残り六点をこれから太陽の手で脱がされることになる。


【現在の状況】

 ◇脱衣済着用物…2

 ○クロスタイ(嚥慈色ダークレッド

 ○ジャケット(黒色ブラック


 ◇脱衣前着用物の残数…6

 ○ウイングカラーシャツ(白色ホワイト

 ○ベスト(暗灰色ダークグレー

 ○トラウザーズ(黒色ブラック

 ○ハイソックス(黒色ブラック

 ○タンクトップ(白色ホワイト

 ○チューブトップブラ(水色ライトブルー

 ○ショーツ(水色ライトブルー

 ○フィンガーレスグローブ(暗銀色ダークシルバー)※格闘技用のオープンフィンガーグローブではない。


 以上より六点を脱衣予定。


【備考】

 ペナルティにより、ブーツ(霞専用オーダーメイド)も無条件に脱衣。※これもまた太陽が脱がす決まりとなっている。


 では、脱衣パート③を始める!


「…ほら、もう説明は必要ないだろう。さっさと次を取ってもらうぞ」


「はい。では次は何にしますか?」


(真性の馬鹿なのかコイツは?ここはブーツに決まっているだろうが。なぜここで他を脱ぐという可能性を考える?…罵倒してやりたいがこれ以上怯えられるのも困る。…仕方がない。ここは……)


「……そうだな、次はブーツだ。おっと、そうだ。椅子に腰掛けた方が取りやすいだろうから座っても構わんな?」


 霞はブーツを脱がせる太陽が脱がせやすい様に椅子に座る許可を得ようと提案した。

 脱衣宣言アーマーパージの特殊ルールにより、霞は勝手に座ることも許されないのだ!


…ブーツなんですね。では、椅子そこに座って左足を前に出してください。左足から脱がせますから」


「わかった。ジッパーが横に付いているからそれを外してから引いてくれ」


「はい。チャックを下ろして脱がせれば良いんですね…では、いきます」


 そう言いながら太陽は霞の左足をそっと掴むとトラウザーズの隙間へ右手を滑り込ませた。


「んん?…ちょっと待て。貴様は今何をしている?」


「何って?その、ブーツを脱がせようとしてますけど…???」


(コイツ!コイツ!コイツ!コイツ!何なんだコイツ!何故わざわざ手を隙間に入れるんだ!?裾を捲れば良いことだろう!)


 霞はそれを言葉くちにはしなかった。


「……そうか。なら裾にジッパーが引っ掛からないように気を付けろよ。裾にな」


「わかりました、気を付けます」


(ダメだコイツ…何を言いたいのかまるで伝わらない)


 霞はこう伝えようとしていた。


『裾を捲れば簡単だぞ』


 だが、これはルールにより禁じられている。

 脱衣宣言アーマーパージした者は勝者が訊かない限りは脱がせ方へのアドバイスが禁じられている。それを破ればペナルティとなり更に一点失うことになる。


 ジーィコ…


 念のため言って書いておく、『ジーィコ』というのはチャック(ジッパー)を下ろした時の擬音であり、元サッカー選手のことではない。

 太陽は滑り込ませた右手でチャックを下ろした。


「よし。これで後は…」


「ん……くく…ふう…」


「脱がせました!次は右ですね!」


「あ…ああ。そうだな。次はもう少し…いや何でもない」


くすぐったいから脹ら脛に触るのを止めてくれ…他人に肉体からだを触れられるのがこんな感覚だとは思わなかった……)


 霞は処女であるが故に他人に肉体を触られた経験などないため、色々と敏感である。

 そう、霞は処女びんかんなのだ!!ここは処女と書いて敏感と読むのだ!!


「あ……ふ……く…くふふ…く!」


(駄目だ!擽ったいから触るな!)


 霞は歯を喰い縛って堪えた。

 そして…


「オッケイです!脱がせました!」


 太陽はブーツを脱がせ終え、これでペナルティ分が終わった。


(…やっと終わったか…何故だかわからぬがほんの十数秒の出来事が長く感じる……)


 時間経過などそんなものだ。中には半年敵のゴールへ迫り、惜しくも防がれて更に半年後に点を決められる超長期戦となるサッカーもある。


「次は…手だ。コレを外せ」


「はい。手袋の番ですね」


 太陽の口から出たこの「やっと」という言葉は冒頭の「あ…ブーツなんですね」という反応の原因りゆうを説明付けるものである。太陽は霞の着用物ならばブーツよりも手袋(フィンガーレスグローブ)を先に脱ぐべきだと思っていた。これは太陽の中での常識、つまりは偏見として、『脱ぐなら手軽な物から』という考えがあったためである。

 一方で霞がブーツを優先したのは単にペナルティだからそうしたまでであり、霞にとってはブーツと手袋の脱衣順に深い意味はなかった。


「それでは、手袋を…あ…!!」


 フィンガーレスグローブを脱がせようとして霞の左手を取った太陽が何かに気がついた。


「どうかしたのか?」


「いえ、その…」


「…言え。あからさまな反応をしておいて誤魔化そうとするな」


「えっと……はい」


(…コイツ、何を見つめている?というか手を取った状態で見つめるな!)


 緊張した面持ちの太陽は霞の眼を真っ直ぐに視て心を決めたように口を開いた。


「指、綺麗ですね」


「ーーーッ!?」


「あっ!!…どうかしましたか?左手は後がいいですか?じゃあ右手から脱がせましょうか?」


 霞は思わず手を引いていた。

 これは本来ならばペナルティとなってもおかしくない脱衣宣言アーマーパージ後の脱衣妨害行為である。


(ななな、なん、なんなん…何なんだコイツは!?手を取って指が綺麗とか言うか!?普通は言わないだろうが!!け、けけ、結婚式の指環交換気分なのか!!)


 繰り返す、霞は処女である。それ故に男に対して免疫がない。

 免疫がないために過敏になり、こんな何気ない一言がことがあるのだ。


「あ……そ、そ、そうだな。右手からにしてもらおうか。すまない。実は昨日、バレーボールをしていた際に左手の薬指を脱臼してしまってな。それを思い出してつい手を引いてしまった」


 無論、こんなのは出鱈目だ。霞は前日に脱臼などはしていない。

 霞よ、こんな下手くそな言い訳を誰も信じないぞ!


「脱臼ですか!?それってもう動かして大丈夫なんですか?」


 童貞たいようはあっさりと信じた。


「ああ、すぐに戻したからその場で動くようになった。指の関節や肩の脱臼なんて日常茶飯事だから気にすることもない」


 指の関節や肩の脱臼なんて日常茶飯事というのは真実ほんとうだ。無論、霞に限っての話だが…


(よし!誤魔化せた!我ながら良い言い訳をした!)


「いや、脱臼なんて一生に何回もしない珍しいことですよ。日常茶飯事なのは桐ヶ崎きりがさき先輩だけです……よっと。では、右手を脱がせたので次は左手を脱がせますね。安心してください。優しくしますから」


(く…そんな言い方をされると……)


 罪悪感にも似た感情が霞に芽生えていた。

 そして、それからすぐに太陽は霞の左手の脱衣も完了した。

 残り五点。

 上半身はベスト、ワイシャツ、タンクトップ、ブラの四点。

 下半身はズボン、ハイソックス、パンツの三点。

 それらから霞が選択したのは…


「次は靴下ソックスを取れ」


 霞は座った状態で左足を差し出した。いや、突き出した。


「はい。では…」


「あ…待て!」


「はい?」


「その…なんだ……取った後で匂いとか嗅ぐなよ。もし嗅いだら殺すぞ」


「いやいや嗅ぎませんよ!どんな変態ですかそれは!?というか恐怖こわいので殺すとか言うのやめてください!」


「そうか…いや、霧子きりこ様から聞かされていたからな。貴様は女の体臭に興味がある体臭マニアだと」


霧子さんあの人はなんてことを!?違いますよ!絶対そんなことないですからね!?」


「ふっ、どうだか…」


「…もうこの話やめます。霧子きりこさんと同じで話していると体力を使うので。それじゃあ、ちゃちゃっと脱がせちゃいますね」


 太陽はズボンの裾に手を突っ込んで霞のハイソックスの頂点にある脹ら脛と靴下の隙間に人差し指を挿し入れた。


「んく…く!」


(やはり裾を捲るという発想はないか…)


「じゃあ一気に…よいしょっ!」


「ふあッ!?………ちょ、ちょっと待て!貴様今何をした!?」


「えっ??靴下を下ろしただけですけど?ほら、もう足首まで下ろしたので残りは足首から下だけです。…あ、ここからは両手でやりますね」


(待て待て待て!!靴下を下ろしただけだと!?ではさっきのは靴下を引っ掛けただけって事か!?それだけであんな刺激が全身に伝わったというならば……まずい!!)


 太陽の指先が脹ら脛を感覚に未知の刺激を感じてしまった霞はその先にあるを心配していた。

 その先とは足首から下。正確にはくるぶしから下。

 そう!

 足の裏だ!!!!


「両手でしっかり掴んで…」


「ちょっと待…あっ…んくっ…はははは!」


「き、桐ヶ崎きりがさき先輩!大丈夫ですか!?」


 突然の大声に太陽は霞の足を掴んだまま手を止めた。


「ば、馬鹿!!くふは…手を止めるな!くはん…く、くすぐ…あふ…擽ったいんだよ!!」


「あっ!?す、すみません!!よっと!脱がせました!」


「くはっ…くふっ………ふう…貴様、これを誰かに言ったらどうなるか理解わかるな?」


「う……はい」


「ならいい。右足はなるべく刺激を抑えろ」


(くそ!ワタシとしたことがこんな男の前で大笑いしてしまった。それも笑ったのではなく…なんたる屈辱だ…)


 霞は笑うことは屈辱とは思っていない。だが、肉体からだを触られて笑わされたことに対して屈辱を覚えていた。

 そして、右足の靴下を脱がされる時にも同じように笑わされた。


 残りの脱衣は四点。

 では、霞の弱点が露見したところでまた次回だ!!


 次回「太陽の手で抱腹絶倒する霞。絶体絶命のピンチに思い付いた秘策とは…!?」

 ※内容はで変わります。

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