第9話「脱衣パート②」

 新入にいり太陽たいよう桐ヶ崎きりがさきかすみ、二人の対決は待望の脱衣パートへと突入していた!


 霞が2失点した時点で脱衣宣言アーマーパージをし、その瞬間から特殊ルールが適用されているためにこの脱衣パートは単なる脱衣ではなく、霞が脱衣を選択した着用物を太陽が脱がすという特殊な脱衣を合計七点、回数にして七回繰り返すことになっている。


【現在の状況】

 ◇脱衣済着用物…1

 ○クロスタイ(嚥慈色ダークレッド


 ◇脱衣前着用物の残数…6

 ○ジャケット(黒色ブラック

 ○ウイングカラーシャツ(白色ホワイト

 ○ベスト(暗灰色ダークグレー

 ○トラウザーズ(黒色ブラック

 ○ハイソックス(黒色ブラック

 ○タンクトップ(白色ホワイト

 ○チューブトップブラ(水色ライトブルー

 ○ショーツ(水色ライトブルー

 ○フィンガーレスグローブ(暗銀色ダークシルバー)※格闘技用のオープンフィンガーグローブではない。


 以上より六点を脱衣予定。


 では、脱衣パート②を始める!


「あの、かすみ先輩?次は…」


かすみと呼ぶなと言っただろう!」


「ひいっ!?………あれ?殴られてない?」


「そんなことくらいで殴るか馬鹿。それとも貴様は言葉くちでは理解出来ずに肉体からだで覚えるタイプか?なら…」


「いえいえいえいえ!め、メンソーレ!…いえ、滅相もございません!」


「ぷっ……く……む、無駄口を叩いてないで次に行くぞ!」


(……くっ!危ないところだった。思わず吹き出しそうになった…コイツ、笑いのセンスはある様だな……)


 霞は笑いのが独特だ!

 テンパった太陽が「滅相も」を「メンソーレ」と云い間違えた事がツボだったらしいが、何一つとして面白くなどない。


地の文キサマ、ごちゃごちゃと煩いぞ!叩かれたいのか!)


 おっと、これはまずい…どうやら霞も時と場合によって俺の声が聞こえるらしい。

 叩くとなると殴るより恐怖こわい。カツオの叩きみたく熱と氷のダブルパンチをされそうだ。


「か…桐ヶ崎きりがさき先輩、次は何を脱がせれば良いですか?」


(コイツ、どうしても脱がすと言い続けるのか…)


「…次はジャケットだ。さっさとしろ」


「は、はい!わかりました。…よいしょ」


「ふえっ!?」


「はい???」


(こ、この男は!?)


 霞は太陽が取った行動に思わず声を漏らした。その声は霞の驚きそのものを発したというに相応しく、霞にとっては恐らく人生初の「ふえっ!?」という単語ワードであった。だが、霞は自身がそんな間抜けな声を発した事すらも気にしていられる状況ではなかった。


(待て待て待て待て!!なんでコイツは頑なにんだ!?普通、ジャケットを脱が…取る時は後ろからだろうが!何なんだこの距離感は!?)


 そう、太陽が取った行動とは、ジャケットを正面から脱がせようとしたことである。

 これは霞は全く予想していなかったため、あまりにも驚いた。

 プリンを喰ったら鯖味噌定食の鯖の味がしたという時くらい驚いた。プリンの味が鯖味噌なのだ。これは驚かずにはいられないだろう…

 余談だが、もしも読者に彼女(彼氏)…いや、異性の友達でも良いから正面に立って相手のタイを解いたり、ジャケットを脱がしたりという行為を試してみて欲しい。実に奇妙おもしろい距離感であるとわかるぞ。


「あ、あの…脱がせて良いですよね?」


「ん?あ、ああ…早くしろ。ボタンを外す時に壊すなよ」


「はい。よいしょ…」


「くふっ…んん……き、貴様!どこに触れている!」


「えっ!?いやあのボタンを……あ、外れました」


「ちっ!」


(ボタンを外すくらいで腹に触れるな…くすぐったいだろうが……)


 霞はこの時に自身の弱点に気付くべきだった……


「よっと…あ、また少し屈んでください。…はい。それで大丈夫です。……よし!脱げました!」


 ジャケット、脱衣パージ完了!!


 残り五点…


「なら次は……あっ!?」


「…桐ヶ崎きりがさき先輩、どうかしましたか?」


(しまった!ワタシとしたことが…こんな事に気がつかないとは……)


 霞は遂にそのミスに気がついた。

 何かって?

 ふふん、それは秘密だ。

 いや、冗談だ。

 恐らく、読者にも気がついている人がいると思うがどうだろうか?

 霞が気がついたミスとは……


「……すまない。ワタシとしたことが凡ミスをしていた」


「え?なんですか?ミスなんて……」


「これをよく見ろ。いや、よく読め」


「これって今日の着用物ですよね?これがどうか…」


「良いから黙って確認しろ!!」


「は、はい!」


 霞は自身の着用物が記載された一覧表を太陽に手渡して改めて着用物を確認させた。そこに凡ミスという言葉の答えがあった。

 だが、太陽は鈍い。童貞故に鈍い。


「……………」


「………おい!」


 一分ほど経過した頃、一向に反応を示さない太陽に業を煮やした霞が先に口を開いた。


「えっ!?あ、はい!」


「いい加減にしろ!もうとっくに気付いているのだろう!?」


「あ…いや…その……これ、何かミスしているんですか?」


「!?…き、貴様…貴様はそうやってわざと気付かぬ素振りをしてワタシを弄んでいるのか!?」


「ひいっ!?」


(なんだ?コイツのこの怯えきった反応は…というかあまり怯えられるとワタシが悪いみたいではないか……そもそもワタシはそんなに恐怖こわいのか?少なくとも太陽この男に手を出した事はないのだが何故こんなに怯えているんだ?)


「……すまない。…その、本当に気付いていないのか?」


「あ…はい。もう何がなんだかさっぱりです」


「ちっ!……ならば貴様に訊こう。この剣高クイズ部の野球式クイズ対決を行うに於いて、試合前に提出する着用物に対する規定はなんだ?」


「着用物の規定ですか?」


「そうだ。さっさと答えろ」


「はい。えっと…特別にルールが定められていない限りは着用物は十点迄とし、その着用物以外の物は全て取り外してから試合にのぞむこと。着用物が十点に満たない場合は何らかの道具ものを用いて十点にすること。これは、野球式クイズ対決の試合に於いての10点差が即時決着コールドゲームとなる様に十点全ての着用物を失うことで決着するというルールに基づく規定である。…ですよね?」


「その通りだ。では、規定違反についても説明してみろ」


「はい。…この着用物についての規定を違反した者は違反した事柄によってペナルティが与えられる。…あっ!?そうか!ないんだ!これには靴がない!」


「…やっと気がついたのかこの童貞どんかん野郎……そうだ。ワタシは靴を着用物として記載していない。…つまりワタシは規定違反をしているのだ」


 今、霞はと書いて鈍感どんかんと読んだが、違反に気がついたのがつい数分前ということを考えれば、霞も十分に処女どんかんもとい、鈍感である。

 霞は自身の着用物として本来ならば靴下と共に書いて提出する筈だった靴を書き忘れていた。

 ちなみに霞の履いている靴は、一見すると艶のある黒いエナメルのシューズ(ローファー)に見えるが、その実は脹ら脛まであるブーツであり、爪先から甲を覆う部分にはが入っていて、所謂安全靴と同様の仕組みになっている。

 尚、このブーツは霞専用のオーダーメイドであり、鉄板の内側にはショック吸収材が入っているため例え蹴りを放ったとしても足を痛めることはなく、サイドにあるジッパーが開閉するため脱ぎ履きも非常に楽ちん且つ通気性が高く抗菌で臭いも気にならない優れものである。


「ということはつまり…」


「ああ、ワタシは計七点ではなく、計八点を失うことになる」


 霞の失う着用物が一点増えた原因りゆうは、着用物に関する規定を違反した場合のペナルティによる影響である。

 着用物の規定に反してに一覧表に記載されていない十点以外の物を身につけていた事が発覚した場合、その時点でそれを脱着した上で発覚した数だけ失点する。

 つまり、霞の場合はブーツを着用していたため、ブーツを脱いだ上で一点失うことになる。

 仮にこれがブーツ以外にも着用していた場合はその数だけ失点する。

 例えば、ブーツ、ブレスレット、ヘソピアスを着けていたならば、それらを脱着した上で更に三点の着用物を失うのである。

 尚、ピアスや指輪などの装飾品は纏めてピアス類、指輪類などとして書くことが認められている。

 何れにしても霞は違反した!

 これにより、脱いだのは二点、残る脱衣はこのパートの開始時と同じく六点のまま据え置きとなった!

 残り六点、脱衣パートはまだまだ始まったばかりである!

 次回へ続く…


 次回「最終的な上下下着姿が確定した霞は鉄面皮を崩すのか!?」

 ※予告は飽くまでも予告につき内容が異なる可能性がある。

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