第7話「続続続・5回表」

 新入にいり太陽たいよう桐ヶ崎きりがさきかすみ、前代未聞の四度目の5回表、いい加減この回ばかり長くないかと言われそうな5回表は衝撃の最高潮クライマックスへの布石となる!


 第4話『5回表』

 第5話『続・5回表』

 第6話『続続・5回表』

 そして、第7話『続続続・5回表』


 まさかの4話に渡った5回表はここに終結を約束する。

 その前に、確認しておこう。

 試合の状況は互いに全問不正解の完全な膠着状態。

 そして…


 霞の本日の着用物は以下の通りである。


 ①ジャケット(黒色ブラック

 ②ウイングカラーシャツ(白色ホワイト

 ③ベスト(暗灰色ダークグレー

 ④トラウザーズ(黒色ブラック

 ⑤クロスタイ(嚥慈色ダークレッド

 ⑥ハイソックス(黒色ブラック

 ⑦タンクトップ(白色ホワイト

 ⑧チューブトップブラ(水色ライトブルー

 ⑨ショーツ(水色ライトブルー

 ⑩フィンガーレスグローブ(暗銀色ダークシルバー)※格闘技用のオープンフィンガーグローブではない。


 まさしく王子様プリンスに相応しい着用物である。


「では…問題、毎年七月七日に催される星祭りで、日本では七夕、中国では乞巧奠きこうでんと呼ばれている星祭りの伝説に出てくるのは織姫と彦星だ。では、織姫とされる星が含まれる星座に纏わる神話とは一体どの様なもので、どの様な結末を迎えたのか端的に答えろ」


 一問全答オールインが賭けられたこの場面、霞は野球式クイズ対決の出題に於いて高等戦術である説明問題クエクスプラネイションを用いた。

 説明問題クエクスプラネイションとは?

 回答者が答える際に説明が必要な問題である。視覚に頼った問題とは異なり特殊な出題とされてはいないが、その出題に於いて規則しばりがあるため出題不正となる可能性が高い故に高等戦術とされている。

 その規則は…

 ○解答が曖昧となってはならない。

 ○解答の説明が長過ぎてはならない。

 ○出題者が問いたいことを審判及び回答者が理解出来なくてはならない。

 などである。

 何れの項目についても出題がそれを違反しているか否かは審判が判断するものであり、担当する審判によって判断基準に多少の幅があるのも高等戦術の所以ゆえんとされている。※敢えて機械化せずにの判断を用いて幅を持たせている。

 余談だが、クエクスプラネイションとは、クエスチョン(問題)とエクスプラネイション(説明)を合わせた造語である。

 クエクスメイションではない、クエクスネイションだからな!

 エクスクラメイションは「!」マークのことなのだから、クエクスクラメイションでは「?!」を表す造語になってしまうぞ!

 クラとプラ、片仮名ではたった二文字の違いだが、意味は大きく変わってしまうこのミスは野球式クイズ対決の初心者にありがちなミスなのでよく覚えておくように。


(織姫!?確か織姫は……)


 太陽は頭を高速回転させて記憶の引き出しを必死で開け続けた。


(えっとえっとえっとえっと越冬江戸エドモンド…エドモンド?本田?…思い出した!ベガだ!)


 野球式クイズ対決は時間切れとの戦いでもあるため悠長に考えてはいられない。そんな中で太陽は通常の三倍程度のスピードで考えていた。


(ベガは確か…琴座ことざだ!琴座の神話…星座絡みならギリシャ神話の…あっ!?琴座!?そうか!琴座ライラか!?なら……)


 太陽はを思い出しながら口を開いた。

 この時、時間制限まで残り二秒弱だった。


「わかりました!織姫が含まれている琴座の神話は仲むつまじい夫婦ので、結末は、です」


「お前…!?」


(どうだ!?どっちだ!?このかすみさんの反応は一体どっちなんだ!?回答に呆れているのか!?それとも…!?)


 ドクン………………


(なんだ?この感覚は……)


 ドクン……………


(心臓の音が聞こえる……)


 ドクン…………


(鼓動が高鳴る……)


 ドクン………


(頭が冴える…映像が…!?)


 ドクン……


(映像が見える…!?)


 ドクン…


(これは…!?)


 ドクン!


(見えた!!)


「……ワタシの負けだ」


「えっ!?!?」


 太陽が脳内でを見たその瞬間、霞の口から自ら負けを認める宣言がされた。

 太陽はその理由が理解出来なかった。


「えっ、じゃない。ワタシの負けだと言ったんだ。…こう言わなくては伝わらないか?ワタシは脱衣宣言アーマーパージする」


 ここで時間停止タイムストップ


 今回はについて説明しよう!

 脱衣宣言とはその漢字を読んで字の如し、自らの脱衣を宣言することである。そして、その読み方はズバリ、…つまり、着用物アーマー脱着パージである。

 本来、野球式クイズ対決及び野球式クイズ対決には自ら負けを認める行為は存在していない。だが、実際は実質的にそれを行うことは出来る。

 しかし!

 野球拳式クイズ対決には脱衣宣言アーマーパージという特殊条件下のみで自ら負けを認めるルールが存在している!

 その条件とは以下の通りだ!


脱衣宣言アーマーパージ

 ○その1…これを行う権利を持つのはのみである。

 ○その2…これを行う際、宣言者は着用物を少なくとも6つ以上所持していなくてはならない。

 ○その3…これを行う際、宣言者は無得点でなくてはならない。

 ○その4…これを宣言した者はその宣言後の撤回は如何なる理由があろうともそれを認められない。


 以上である。


 存外と思ったか?


 ふふ、甘いな…

 いや、甘いぞ!!


 まるで練乳のガムシロップ割りを掛けた落雁の様に甘い!!!


 何を隠そう、この野球式クイズ対決のルールは唯我独尊にして傍若無人な剣ヶ峰霧子が作ったルールなのだ!!

 いや、唯我独尊は言い過ぎか?傍若無人も撤回しておくべきか?(あとが恐怖こわいから)

 とにかく!

 霧子が逃げ道となるルールを作るわけがない。

 脱衣宣言アーマーパージが逃げ道ではないその理由、それは…三人に見せてもらうとしよう。


 では、時間停止タイムストップ解除!


「え?え?脱衣宣言アーマーパージ?…あ、あああ、アーマーパージって脱衣宣言アーマーパージの事ですか!?」


 太陽はわかりやすく動揺した。

 それは、脱衣宣言アーマーパージがどの様なルールかを理解していたが故の動揺であった。


「は?貴様は何を言っている脱衣宣言アーマーパージ以外にアーマーパージがあるのか?貴様は日本ぼこく語も通じぬのか?」


「いや通じてますよ!けど脱衣宣言アーマーパージするってことはつまり……うく!」


 この時、期待と不安と劣情に刺激された太陽の股間にバベルが建造され始めた。


太陽たいよう、あなた何を急に前のめりになっているの?…まあいいわ。かすみ、あなたには説明は必要ないと思うけど、審判として一応説明するわ。脱衣宣言アーマーパージを宣言した場合、宣言者は無条件で着用物を五点失う。つまり、あなたはさっきの太陽たいようの正解で2失点した分に加えて更に五点を失うことになるわ」


 そう!

 これが脱衣宣言アーマーパージである!

 自ら脱衣を宣言し、敗北を認めた者に相応しい末路だ!

 そしてさらに!

 脱衣宣言アーマーパージした場合、着用物を脱ぐ際に事になる!

 つまり!

 仮にパンツならば、ブラならばという、誰もが青春時代に楽しんだあの頃の遊びを再現することになるのだ!

 え?

 そんな遊びはしてない?


 嘘だッ!!!!!!!!


 体育の着替えの時に絶対パンツ脱がしやったよね?

 脱がしたパンツはパス回しして女子の前に晒したり、脱がされた奴は女子戻ってくるからノーパンでズボン穿いたりしたよね?ね?

 え?マジでやってない?

 じゃあブラホック外しは?

 夏場にインナーシャツを着ていない子のブラのホックを…いや、これは言わないでおこうかな。誤解を招きそうだし……

 最後にこれだけは伝えよう。

 パンツ脱がしもブラホック外しも、互いに楽しめる範囲且つ親しい相手との遊びで、嫌がる相手にはやってはならんぞ!


「わかっています。合計7失点扱いとなり、七点の着用物を太陽こいつの手で剥ぎ取られる。それが脱衣宣言のルールですよね」


(剥ぎ取るって…そんな悪いことしてる様な言い方しなくても…俺、悪くないよね?)


 太陽の一人称は既に俺で定着していた。

 これは太陽の中で何かが変化した証拠である。


「…当然、覚悟していたわけね」


「はい。ワタクシは試合開始前には完膚なきまで叩き潰すつもりでしたが、実際には未だに全問不正解ノーヒットの上に先に点を許すというの体たらく…ワタクシにもプライドがあります。これ以上、霧子きりこ様の前で醜態は晒せません」


「……そう。その為なら太陽たいよう肉体からだめ回される恥辱にも耐えるというわけね。…全く、わ」


(いや、だからそのめ回すとか恥辱とか止めてくれませんか?俺が変態みたいな感じに聞こえますよ…)


 太陽は一人称こそ変化したが、それを声に出して霧子に意見する度胸はない。

 そして更に言うと、霧子が何故「気に入らない」と言ったかも気がついていない。ちなみにこれは太陽が童貞だから気がつかないだけである。


「申し訳ありません。なるべく当たり障りのない着用物を選択します」


「当然よかすみ。あなたがもし自ら進んで裸体を晒すような女なら私はあなたと縁を切るわ。…この試合、かすみの脱衣宣言により太陽たいようの勝ちよ」


 審判である霧子の宣言により、野球拳式クイズ対決・第3回戦、新入にいり太陽たいよう桐ヶ崎きりがさきかすみは決着!!


【試合結果】

 勝者…太陽

 敗者…霞

 備考…脱衣宣言アーマーパージによる途中決着。


【決着時の得点】

 太陽…2点

 霞…マイナス5点

 備考…実際には霞は0点だが、脱衣宣言アーマーパージにより5点が引かれたという扱いのためマイナス5点。


 まさかの超巨人殺しスーパージャイアントキリングとなり、霞は太陽によって七点の着用物を脱がされることになる。

 その様子は次回だ!

 次回こそ、今までで誤魔化してきたを少しだけだが披露する!!

 刮目して待て!!

 ※あまり期待しないように…


 次回「脱がせ太陽!鉄面皮の心を脱がすのだ!」

 ※予告と内容は異なる場合があるぞ。


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