第4話「5回表」

 新入にいり太陽たいよう桐ヶ崎きりがさきかすみ、圧倒的な実力差がある筈の二人の対決は予想外の展開だった!


「答えは10ゴールドです。不正解なのでスリーアウトですね」


 太陽の出題した「ドラゴン○エスト3の道具屋で売っているどくけしそうの値段は?」という問題に霞は「2億4000万円」と答えて不正解となり、これによってスリーアウトで4回裏が終わった。

 余談だが、「2億4000万円」の根拠は「毒消し草」という道具の効能を考慮した上での緻密な計算で算出した金額だ。

 霞は毒消し草があらゆる毒を消し去るという物であるならば、当然の如くどんな医療よりも優れていると判断し、あらゆる毒を消し去ることが可能な草がどれ程の価値なのかを熟孝した。

 そして、制限時間ギリギリまで熟孝かんがえた末に霞が導き出したのが年収1200万円の人間の年収丸々二十年分となる「2億4000万円」である。


【現在のスコア】

 ○両者全問不正解ノーヒットにより、両者無得点


 霞は太陽に対して多種多様な神話に関する問題を出題し、そのマニアックな…もとい、ニッチな内容から太陽は不正解を続けていた。


「待て。10ゴールドとは日本円に換算するといくらだ?不正解というのは現在の為替レートとちゃんと照らし合わせた結果の…」


かすみ、ゴールドというのはゲーム内のみに存在する架空の通貨よ。為替もレートも何もないわ」


「…そうですか」


 太陽は霞に対してゲームに関する問題ばかりを出題し続けて不正解を獲っていた。

 ゲームに関する問題…これこそが太陽の信じていた可能性だ!

 本来ならば霧子との再戦に向けて用意したこの問題は、「霧子がゲームを知らないのではないか?」と考えた太陽が練りに練った問題だった。

 結果としては霞に使うことになったが、それこそが最適解だった。なぜなら霞は1回裏の第一問で使われたぷよ○よ以外はゲームをやった事がないからである。

 そして、なぜ霞がかと言うと、霧子には1回裏のぷよ○よの問題以外は通じていなかったからだ。

 その様子を出題と回答の一部を抜粋して紹介するとしよう。


『1回裏の第二問』

 問、魔○村の主人公の名前は?(解答…アーサー)

 霞…暫く黙った後で時間切れ間際に「魔界王」と絞り出すようにして回答。

 霧子…太陽の解答を聞いた後、「因みに魔○村の主人公はキングではなくナイトよ」と審判として邪魔をしない範囲で解答を補足。※キングではなくと言ったのは霞の回答「魔界」に対する霧子なりの遊び心であると共に、霞が魔○村をキング・アーサーのゲームだと勘違いしない様にする気遣いと思われる。


『2回裏の第四問』

 問、スーパーファミ○ンでゲーム○ーイソフトをプレイすることが出来る画期的なソフトの名称は?(解答…スーパーゲーム○ーイ)

 霞…「スーパーファミ○ンボーイ」と即答。※なぜか自信満々だった。

 霧子…「スーパーゲーム○ーイは2も発売されているわ。因みに3は展示会で発表された後に開発中止になった幻のソフトね。その代わりと言っては何だけど…ふふ。話すのはやめておくわ。問題に使われているかも知れないものね」と補足し、太陽に続きを言うようにせがまれて「代わりにゲーム○ーイプレーヤーが発売されているわ」とさらに補足。


『3回裏、第六問』

 問、スーパーファミ○ンで発売されたかまいたち○夜のプレイ○テーション移植版の正式名称は?(解答…サウンドノベル・エボリューション2かまいたち○夜特別篇)

 霞…「かまいたち○夜輪廻転生」と回答。

 霧子…「ふふ、これは奇遇ね。かまいたち○夜は輪廻彩声というバージョンがあるわ。決して惜しいという訳ではないのだけれど奇妙おもしろいわ。因みに私はあのバージョンは好きではないわ」とコメント。


『4回裏、第一問』

 問、スーパーファミ○ン用ソフトのソウルブ○イダーで魔法を使うために必要で、使うと消耗するものは?(解答…ジェム)

 霞…「ソウル

 霧子…「私は大きなジェムを拾った時の効果音が好きよ」


 上記の様に霧子は明らかにゲームに関しても詳しいため、ゲームの問題は霞に出すのが最適解だったのだ!

 ゲームにも詳しいなんて…霧子、本当に恐ろしい!?

 では、5回表開始!


「貴様がふざけた問題ばかり出すからと言ってワタシの問題は変えぬからな」


「わかっています!」


(大丈夫、落ち着け。で出てきたなら正解するチャンスはある……)


「全く、返事だけはまともだな。…問題、ギリシャ神話の最高神はゼウスだが、かつてオリュンピアにあったゼウスをかたどったとされる座像の全高は何メートルだ?」


「そんなの…11.39メートル……」


 太陽は「そんなの知りませんよ」と言い掛けて止めた。言えば霞に威圧されるのがわかっていたからである。

 そして、何故「そんなの知りませんよ」と言い掛けたかと言うと、あの漫画のあの神話に関する問題なのに全く知らない問題だったからだ。


「11.39メートルだと?貴様馬鹿にしているのか?それは鎌倉の…あっ!?」


(えっ!?かすみさん、急にどうしたんだろう?大声を出すのは珍しいな……)


「ちっ!ワタシとしたことが……」


「え?え?なんですか?」


 苦虫を噛み潰した様に独り言を漏らした霞に対し、太陽は意味がわからないという表情かおで霞と霧子を交互に見た。

 そして、太陽と目が合った霧子が微笑みながら口を開いた。


「ふふ。太陽たいよう、あなたは本当にわね。今の問題、本来は不正解だけれどヒット扱いよ」


「え?それはどういう…」


霧子きりこ様、持っているなどという表現はやめてください。単なるワタクシの失策ミスです」


「ミス?…あっ!?」


 失策ミスという言葉を聞いた太陽は何故ヒット扱いなのかに気がついた。


「そうか…今の問題は出題不正ですね!」


「ふふふ、それは正解よ。…かすみの出題に不正が認められたため、今の問題はヒット扱いとする。尚、答えは約12メートル。または約40フィートよ」


 霞は出題時にまたはをつけ忘れたため出題不正になった。

 太陽にノーアウトのランナー出塁!!

 攻めろ!太陽!

 脱がせ!太陽!

 頑張れ!太陽!


「それにしてもかすみ、あなたがこんな初歩的なミスをするとは珍しいわね。あなたも私達にはない太陽たいようだけが持つに呑まれているのかしら?」


(僕だけが持つモノ?なんだろう?霧子きりこさんはナニを言っているのだろうか?)


 おいこら太陽、霧子が言っているのはチ○コの事ではないぞ!


(わかってますよ!僕が言ったのはそのナニではないですから!つかちょいちょい地の文ナレーションで僕に絡むのやめてもらえますか!?)


 霧子が言っている「モノ」についてはこの三回戦の時点では触れることはないが、続篇があればいつか触れるかも知れないので乞うご期待だ!


「くっ!違います!断じて呑まれてなどいません!…ただ、少し意気込み過ぎてしていたのかも知れません」


「そう?でもそれは…いえ、余計な事ね。では試合を続けなさい」


 霧子は霞に向けて言い掛けた言葉を呑み込むと審判として試合再開を宣言した。

 この時、霧子はこう言おうとしていた。


「でもそれはではないのかしら?」と。


 太陽が先にランナーを出すという波乱の展開が発生した野球拳式クイズ対決・三回戦は遂に動き出す!?

 次回「あの日見た花の名はカスミソウ?」

 乞うご期待!!

 ※尚、次回予告の文言と内容には差異が生じる可能性が高いので注意だ!


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