第3話「1回裏」
(相手は
この対決、太陽には霞を完封する自信があった。正確には自信というより完封の可能性を信じていた。
霧子と対決して以来、日々新たな問題を練ってきた太陽が用意した問題の中でも対霧子に特化した問題を使えば完封の可能性、或いはその更に上の可能性があると信じていた。
通常ならばそんな事は出来るわけがない。何故なら相手が霧子と
副部長ではないぞ!
部長補佐だ!!
剣高クイズ部の歴史の中で部長補佐という役職を有したのは霞が唯一にして無二の存在であり、この部長補佐という役職は霞のための専門職と言える。本来ならば副部長が部長補佐という地位なので他に存在していないのも至極当然である。
そして、霞が懐刀と言われる理由はその実力にある。
霞は(太陽を除いて)霧子と引き分けた唯一にして無二の部員であり、公式非公式を合算した野球式クイズ対決の通算戦績は四百戦無敗とも言われている。因みに喧嘩は非公式含めて八百戦無敗らしいが、そもそも喧嘩に公式や非公式があるのかは謎である。
だが、その霞が相手だからこそ太陽は完封の可能性があると信じていた。
では、波乱の予感が漂う1回裏の始まりだ!
「…それでは、
「
「あ、はい。そうですね。では問題です。…ゲームのぷよ○よ
「は?」
「
思わず霞がしてしまった「は?」という反応に審判である霧子が注意した。注意は直接試合に影響はしないが、公式戦の場合は審判への心象が悪くなるので注意をされる行為をしない様に文字通り注意しておかなくてはならない。
「失礼しました。簡単な問題で拍子抜けしてしまって…答えは三種類だ。激甘ならばな。残念だったな
「いえ、不正解です」
「!?!?」
「!!!!」
太陽の不正解という言葉に、霞は表情筋こそ動かすことはなかったが一瞬だけ眉を寄せて疑念混じりの驚きを表現し、公平でなくてはならない審判である霧子もまた驚愕にも似た表情を
「貴様、一体どういうことだ?解答の偽りが許されないのは知っているのだろうな?」
「
「失礼しました。ワタクシとしたことが越権行為でした」
気がついただろうか?
霞は対霧子の時には一人称がワタクシで、その他の場合はワタシである。決して作者のミスではないぞ!
「選手による詰問は公式戦ではペナルティになる可能性もあるから気を付けなさい。…それで
「はい。わかりました。まず答えは二種類です。そしてその理由は───」
ここで
説明は俺が代わりに行う!
なぜなら太陽に喋らせると色々と面倒だからだ!
まず、ぷよ○よとは、ぷよと呼ばれるカラフルなスラ○ム的な物体を使う落ち物パズルゲームだ。
落ち物パズルゲームについての説明は申し訳ないが割愛する。なので知らない読者は各々で調べてくれ。
説明に戻ろう。
ぷよは四つくっ付けると木端微塵に弾け飛ぶのだが、それを組み合わせて連鎖というものを繰り出すのがぷよ○よの基本的な遊び方だ。
そして、ぷよ○よの難易度はカレーに置き換えられている。難易度が高い順に激辛、辛口、中辛、甘口、激甘と言った具合だ。
この難易度によってプレイヤーが扱うぷよの色の数が変化する。
そう、激甘に出てくるぷよの色の数は三色なのだ!
………おや?
もしや諸君らも霞や霧子と同じく早合点しているのか?
甘い!
まるでたっぷりの玉ねぎをあめ色になるまで炒めた後に蜂蜜とすりおろし林檎をたっぷり入れたカレーの様に甘い!!!!
確かにぷよの数は三色だ。
だが!しかし!!
だがしかし!!!
ぷよの種類はそうではないのだ!!
ぷよとは基本的に二種類のみなのだ!!
カラフルで同色を四つくっ付けると爆散して消えてなくなるぷよと、敵から送られてくる四つ以上くっ付いても消えない無色の(おじゃま)ぷよ、そのたった二種類しか存在していないのだ!!
プレイヤーが扱うぷよは、その色は違くとも元を辿れば
つまり、答えは二種類である。
太陽は問題文の作り方で霧子と霞を騙すことに成功したのだ。
これは、 知識を栄養素として考えた場合には不必要な「駄菓子」の様な位置付けである「ゲーム」というジャンルの問題を用いたことにより霞と霧子の脳に一種の麻痺に近い状態を引き起こしたことと、太陽の作った問題文による巧みな誘導による見事な引っ掛け問題と言わざるを得ないだろう。
では、太陽による解答の説明が終わった時点まで
「───という事です」
「く…そんな屁理屈……」
「やられたわね、
「えっ!?は、はい!ありがとうございます!」
霧子からの思わぬ称賛に太陽は心底嬉しかった。
こうして、1回裏は始まった。
果たして太陽の用意した問題は霞に通用するのか!?
次回「進撃の太陽!」
乞うご期待!
※次回への煽りと実際の内容が異なる可能性があるので悪しからず。
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