横淀

 おや、こんなところに生肉が落ちている。食べよう。むしゃむしゃ。

 コンセントのプラグの中にはシーチキンが詰まっていた。これも食べよう。ぱくぱく。


 むむ、こんな所にイカフライが落ちてるじゃないか!駄目だ、こんなのが落ちていたら。猫が食べたら大変じゃないか。

 猫は味の濃いものを食べてはいけないと僕は知っていた。


 必死にイカフライを食べる。大量のイカフライを口に入れて、胃に流し込む。もう胃には入らない。それでも口の中にイカフライを詰め込む。全部猫のためだ。横では茶色い猫が冷たい目をしながら横になり寛いでいた。


 ここで僕は気付いたのだ。あの生肉は、あのシーチキンは、この猫のものだったのではないか。だとしたら大変なことをしてしまった。

 猫が集まる。どこからともなく猫がやってくる。大きい猫から仔猫まで、沢山やってくる。

 にゃー。にゃー。みゃー。みゃー。

 ふわふわ、ふかふか、僕は猫に埋もれていく。


 ふと指を見ると、指の先端が茶色の小さな塊になってポロポロと落ちていく。そのままどんどん茶色の塊が体を侵食していく。

 ぽろぽろ、ぱらぱら、ぱくぱく。


 僕は美味しいキャットフードになり、猫たちに美味しく食べてもらえたとさ。

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横淀 @yokoyodo

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