一葉視点 私とマネージャー2
ぎこちない雰囲気の中、現在暮らしているマンションへ向かっている私とマネージャーさん。
まるでドラマの大人の危ない恋をしているようで、ドキドキしていた。
「ここ、です……」
「噂には聞いてましたけど本当にここに……本当うちの社長は凄い人ですね」
今所属している企業じゃなければ、こんな豪華な所に住めなかったから感謝しかない。
それはマネージャーさんも同じで、気持ちが舞い上がる。
八階まで上がって私の部屋の前まで来たけれど、緊張の余り鍵を開けるのに時間が掛かった。
「ど、どうぞ……何もない部屋ですけど……」
必要最低限の家具と少し大型のテレビがあるだけで、女優としては殺風景な部屋だろう。
もう少しお洒落とかしても良いのかもしれないが、今の仕事が忙しくて満足な時間が取れないのが最大の理由だ。
「長谷川さん、ちゃんとご飯食べてますか?台所が綺麗すぎるというか……使ってる痕跡がないというか」
「勿論食べてます!って言っても、朝昼は仕事なので夜だけですが……」
自炊はしないこともないけど、外食や出前を頼んで済ませることが多い。
「冷蔵庫、見ても良いですか?もし宜しければ軽く何か作りますよ?」
「えっ……お料理されるんですか?」
「はい、姉と妹と暮らしてるので」
お姉様と妹さん……どんな人なんだろうか。逢ってみたくなった。
「それに……長谷川さんに食べて欲しいなって思ってまして」
トクンと胸が跳ね、顔がまた熱を帯び始めた。
私は頷くことしか出来ず、自室となっている部屋に逃げ込んだ。凄く胸がうるさい。
落ち着くまでその場に座り込み、こういう時のために買っておいた勝負下着に着替えて、リビングに戻ると凄くいい匂いが漂っていた。
「うわぁ……美味しそう」
「対したものじゃないですが……喜んで頂けて良かったです」
野沢さんは嬉しそうに私の食べる姿をじっと見つめていた。
それが恥ずかしくて、また胸の鼓動が煩くなって俯いてしまった。
「そんなに見られると……食べづらい、です」
「あ、ごめんなさい。何やってんだろ本当……」
野沢さんが作った料理を平らげた私は、もう胸が一杯で何かお返しをしなきゃなんて考え出していた。
だけど今の私にお返しが出来るようなことが何もなかった。
「……初めて出逢った時の事、憶えてますか?」
「はい、憶えてます」
野沢さんが皆の前で私を一流の女優にして見せますって、宣言したあの日。
最初はプロデューサーとしての使命なんだろうなと軽く考えていた。
「嬉しかったですよ?結果として沢山のお仕事を貰えるようになったんですから」
私は彼にそう答えたけど、何か覚悟した顔で私を見つめる。
「……僕、長谷川さんにどうしても伝えたいことがあるんです」
伝えたい事?なんだろう。
「貴女の事が好きなんです」
えっ……?
「日に日に大きく成長する貴女を……本気で好きになってしまったんです」
「野沢、さん……」
「僕とお付き合いしてください」
生まれて初めて告白された私は嬉しくて、両想いだったことに涙を流した。
勿論返事ははいで、彼と熱い夜を過ごした。
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