千花視点 親友

 どーも!千花でーす!

 今は家で一人寂しく過ごしてますが、今日は親友の奏が出産を無事に終えたと言うことなので病院に向かってます。

 私?まだ子供は居ないよ。だって旦那こと総くんは寮生活だから。


「やっほー」


「千花……しぃー。今寝たとこなの」


「ごめんごめん……うわぁ可愛い……」


 何この天使みたいな……!すっごい可愛い!


「女の子だもん」


「やっぱり。良いなぁ……私も欲しくなってきた」


「総司君も大変だね……注目されてるみたいで」


 そうなの!ルーキーなのにすっごい活躍してて、一時期ニュースで話題になってた。

 ってそうじゃなくって!


「この子の名前は?」


「愛華」


「愛華ちゃんか、よろしくねー」


 今はすやすやと可愛らしく寝息を立てて、むにむにほっぺを満喫中。

 すると扉が開いて振り返ると、急いできたのか肩で息をしている輝くんと清々しいほど笑顔の妹さんが居た。


「ごめん……遅くなった……」


「わわっ……この子がお兄ちゃんとお義姉ちゃんの……?可愛いぃ~……」


 妹さんは私と一緒になって、愛華ちゃんを愛でていた。


「輝、今日は半休?」


「いや無理言って速めに切り上げてきた」


「ふふっ……お疲れ様」


 輝くんはよっぽどこの子に逢いたかったんだなと、高校以来だが少しだけ格好良く見えた。

 ただ無理をしてここに来たのか、少し様子がおかしかった。


「……だから言ったじゃん。無理しないでゆっくり行こってさ」


「そう、だな……蒼衣の言う通りだわ」


 私は彼の身に何があったのか知らない為、何があったのか奏に聞いてみた。


「受験前に手術してて……今は普通に生きていられるけど、いつまた再発するか分からないから無茶しないでって」


 なんとなくだけど言ってる意味は分かった。

 高校最後の文化祭での事件以来、輝くんはあまり無茶をしなくなった。

 そういや走ってるのなんて、あの体育祭前の練習以来見てない気がする。


「輝くーん?あんまり周りを悲しませたら駄目だよ?」


「ご忠告、ありがと……今度はもう少し余裕見てから来るよ」


 輝くんが笑顔になると、皆も同じように笑顔で返す。

 こんな幸せな日なのにプロ選手になっちゃった総くんが居ないのは、私は寂しかった。


「お兄ちゃん、愛華ちゃんだよ」


 妙に慣れた手付きで愛華ちゃんを優しく抱いていて、輝くんに抱かせようとする妹さん。

 輝くんが抱こうとすると、愛華ちゃんは泣いてしまった。


「おぉっと……よしよしパパですよー?」


 少しの間泣いていた愛華ちゃんだが、一瞬で泣き止んで輝くんの腕の中でぐっすりと気持ち良さそうに眠っていた。

 その一連の流れを見た私はちょっとだけ疎外感を感じたけど、奏が私に話し掛けてきた。


「千花、ありがとね」


「何?もうすぐ死にそうな人が言うようなこと言わないでよ」


「千花が居なかったら私……輝とこうはなれなかった」


 確かにあの時の奏だったら、一葉っちに取られてたかもしれないぐらい大人しかった。

 でもね?奏。私は何もしてない。貴女が自分の意志で頑張った結果なんだよ?


「何辛気臭いこと言ってるの。私と奏の仲じゃん。そういうのなし」


 なんとか振り向いて貰おうと必死に頑張ってた事、私知ってるから。

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