最終話 隣の君へ
高校を卒業後、皆それぞれの道へ進む。
総司は大学でも野球を続け、最期の大会で有名になり、ドラフトで強豪球団の下位ながらも指名を受けた。
村瀬は高校卒業の時点で、既に総司と結婚してたようでお互い幸せそうだった。
いいんちょこと長谷川さんは名門女子大へ進み、女優の道へ進んだ。
時折連絡を取り合っているが、未だ彼氏が出来ないらしい。
そして蒼衣と貴之達二人は進学先を俺達の母校に決めて、現在三年生。
貴之は総司と同じ球団に高卒ながらドラフト指名を受けた。
蒼衣は看護士を目指すらしく看護学校へ、なんでも俺の一件で決めたらしい。
「ただいまー」
「……おかえりなさい」
俺達二人は高校卒業後に同棲を始め、現在五年目。
この年に奏と籍を入れ、結婚。勿論プロポーズは俺から。
「はーあ、疲れた……」
「お疲れ、皆元気?」
「皆元気だよ……って言いたいけど、長谷川さんがね」
奏は相変わらず小さく無口で表情が出ない子だけど、それでも可愛くて綺麗な女性になった。
なんて考えてると、奏が不機嫌な顔でジト目で睨み付けていた。
「……浮気?」
「だからちげーってば!一瞬流されかけたけど……」
「むーっ!!」
俺の胸をぽかぽかと叩く姿は、あの頃と全く変わってない。
「俺が好きなのは奏だけだよ」
「……えへへ」
俺は癖になってしまった奏の頭を撫でようと手を頭の上に置こうとしたら、止められてしまった。
「いつまでも子供扱いしないで」
「あー……ごめんごめん。本当無意識に撫でちゃうな俺」
「撫でるならここ」
奏は俺の手を自分のお腹へ。
籍を入れてから二ヶ月経ったある日に出来た俺達の間の子供。
もうすぐ出産の為に入院するから、こうやって出迎えてくれるのも残り僅か。
「……もうパパになるんだな俺」
「私はママ、早く逢いたいね?」
「だな。それで女の子?それとも男の子?」
「女の子」
女の子か……あの手紙は本当だったんだなと今ふと思い出した。
だったらもう名前は決まったも同然。
「じゃあ
「愛華……ってまさか」
「そう。そのまさか」
かつて俺が倒れた時に出逢ったあの少女の名前。
もし女の子だったらこの名前を付けたいって、事前に奏に伝えてたはずだ。
「……そっか。じゃああの話、本当だったんだ」
「よろしくな愛華」
この先どんな未来が待ってるのだろうか。それは誰にも分からない。
ただこれだけは確実に言えるだろう。
「奏、んふっ……」
いつも傍に居てくれる奏/何があっても一緒に居てくれる輝
「ぷは……っ、目とろんとしてる」
「好き、なんだもん……」
隣の君へ。
出逢えて良かった。~fin~
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