第112話

 猫になりきっている奏は次第に可愛さを増していき、二人だけの甘い空間が出来上がった。

 デレデレで甘々な二人、総司達が居ることなんて忘れていちゃつき度が増えていく。


「ちょっと……くすぐったい……!」


「ふふっ」


 可愛すぎてもう時間を忘れそうになるところで、村瀬がわざと咳き込んだ。


「……んんっ!二人ともストーップ!!わ、私達が居ること忘れてないよね?!」


「……ちぇ、良いとこだったのに」


「……ぁ」


 物凄く寂しそうな視線を送る奏が可愛くて、ついつい頭を撫でてしまう。


「そ、そういうのは……ふ、二人きりで!」


 村瀬は何やらぶつぶつと独り言を言いながら、顔を赤く染めていた。

 村瀬も可愛いとこあんじゃんなんて思ってたら、奏はジト目で俺を睨んで頬が膨れていた。


「……むう」


「か、奏……?なんで怒ってるの……?」


 奏はプイッと顔を逸らして、答えてくれなかった。

 でも手だけは袖を掴んで離さない。


「奏ちゃん、多分妬いてんじゃねえかな?」


「奏が?」


「そう、どうせ千花の事だろうけど」


 そうなのかと目で訴えるが、完全に逸らされる。

 その割には袖を掴んでる手は離れてない。


「……何?」


「もしかして妬いたの?」


「……っ」


「ははっ、図星って―――がっ!」


 奏に思いっきりお腹をグーパンされて、その場に倒れ込む。


「ふん……っ」


「あーあ、怒らせちゃった」


「あ、ちょっと奏……!」


 総司にそういわれるのが悔しいけど事実で、お腹が思った以上に痛くて、何も言い返せない俺だった。





 ☆






 少し落ち着いた後、奏は俺に駆け寄って頭を下げた。


「いいよいいよ。俺が調子乗ったのが悪いんだし」


「本当に……ごめん、なさい」


「もう気にすんなって」


 反省してかなり落ち込んでる奏だけど、何処からか可愛い音が聞こえた。

 三人が一斉に音の張本人に視線を移す。


「……うっ!な、何よ?」


「千花、本当お前な……」


 総司は呆れて、俺は苦笑、奏に至ってはおかしくてクスクスと笑っている。

 村瀬は頬を赤く染めて、総司に反論。


「し、しょうがないでしょ……!もうお昼なんだから」


「私、作るね」


 と奏が名乗りを上げて、そのまま台所へ。


「なんか悪いな。俺も手伝えれば良かったんだけど、生憎何も出来ないから」


「気にすんなって、奏の料理は最高だからしばらく待つか」


 俺は総司と一緒にソファーに向かい、村瀬は台所へ向かって奏と一緒に料理の手伝いをするようだ。

 ただひとつだけ気になるのは、メイド服を着ながら料理をすること。


「……なんで着替えねえんだろうな、あの二人」


「さあ?俺には分からん」


何か思惑でもあるのだろうか?二人の考えてることがますます分からない。

そんな二人は俺達正反対に、仲良く駄弁りながら昼食を作ってて楽しそうで少し羨ましかった。

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