第103話 奏視点 手術
てるの手術での騒動があっても、毎日のようにお見舞いに行った。
試験勉強なんかよりもてるの事で頭が一杯。
日に日に心を塞ぐてるを何とかしてあげたい反面、何も出来ずにいた。
そんなある日、たまたまてると見知らぬ女の子と一緒に何か話していたのを目にする。
「……むう」
胸がきゅーっと締め付けてくる。
でも、前回と違うのは親しげに話してる訳じゃ無くて、相手が一方的に話し掛けてただけだった。
「なんか……悲しそう」
あの子もひとりぼっちなのかな?
なんて考えていたら、二人は看護師さんに見つかり病人なのにと激しく怒られていた。
☆
私はてるが怒られてる間に病室に入り、一人で静かに待ってるとてるが戻ってきた。
相変わらずなてるだけど、何かちょっと変わってた。
「……逃げてばっかり」
そんな言葉を呟き、カーテンの隙間から外の景色を眺めてるその姿がなんとなく格好良くて、しばらくの間見惚れていた。
「……奏、居たんだ」
「あっ……うん」
「……なんか色々とわりぃ」
てるは目を伏せ、手が少し震えていた。
「てる……?」
「……やりたいこと、いっぱい残ってるのに」
「大丈夫、てるは大丈夫」
それでもてるはずっと落ち込んだまま。
「……奏」
「なあに?」
「……ずっと傍に居て、離れないで」
てるは弱々しく私を抱き締めて、傍に居て欲しいと求められた。それが嬉しかった。
だから私は離れないという意味も込めて、強く抱き締め返した。
「てるが嫌って言っても、絶対に離れない」
たとえこの先てるに嫌われたとしても、私はずっとてるの事が好き。
だって私にとってのてるは、王子様だから……。
「……本当、愛されてるな俺は」
「えへへ」
その日を境にてるはいつもの調子を取り戻し、手術を受けることを決意した。
☆
てると一旦別れ、手術室へ入っていった。
しばらくして手術中の赤い灯火が点いて、私は終わるまで一歩も動かないと決めた。
「かな姉」
「蒼衣ちゃん……?」
「今始まったところ?」
私は小さく頷き、蒼衣ちゃんと一緒に待つことにした。
蒼衣ちゃんは暫く見ない内に、凄く綺麗になっていて驚いた。
胸なんか私よりおっきくて、身長までも越されてしまった。
「かな姉?」
「えっ……あ、ううん。何でも」
「?変なかな姉」
手術室前でしばらく座って待ってると、不意に眠気がやってきた。
最近遅くまで勉強してるせいで、若干寝不足気味。
「かな姉、おねむ?」
私は大きく横に振って、違うと態度で示すも結局波を打ってしまい、蒼衣ちゃんの肩にこてんと落ちてそのまま眠ってしまった。
またてるとお話出来ますように……。
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