第101話
奏といちゃついたりしていると、今日も検査の時間が来て、俺が検査してる部屋まで着いてきてはずっと待っている。
余程心配なのか、俺が検査の為に奏の元を離れようとするとギリギリのところまで離れようとしなかった。
それが原因で今日は珍しく開始時刻が大幅に遅れた。
「本当にあの子ったら……一体誰に似たのかしら?」
その後もおばさんはぶつぶつと独り言を言っていて、俺と看護師さん達は苦笑いするしかなかった。
「まあまあ先生、検査始めますよ?」
「え?あぁ……そうね。始めましょう」
そして俺はおばさんに言われた通りの事をやったりしながら、最後に今の脳内を見る為にCT室へ。
全ての時間は四十分程だが、この後半がいつも長い。
『お疲れ様、詳しい結果は明日報告するわ』
その声を最後に俺の検査は終わった。
☆
検査が終わると奏が出迎えてくれて、たたたっと俺の元へ駆け寄ってくる。
「お疲れ様、どうだった?」
「明日教えてくれるってさ」
看護師さんから奏に代わって、部屋まで車椅子を押してくれる。
「……どう?」
「ちょっとだけ気持ち悪いかも……」
俺の体を心配してか、ちょっと速かったペースが段々と落ちていく。
「ありがと、ちょっと落ち着いてきた」
一応歩けるのは歩けるんだけど、万が一を想定して車椅子生活をしている。
ゆっくりと部屋に戻ると、奏に手伝って貰いながら俺はベッドに移動した。
「改めて、ここまでありがとな」
「どういたしまして」
奏は優しく微笑みながら、面会時間ギリギリまで傍に居てくれた。
時折甘えてくる彼女は今日の検査の苦痛を忘れさせてくれるぐらい癒された。
☆
そして翌日、病室で今日も奏と共に過ごしているとおばさんがやってきた。
「あ、お母さん」
「おはよう二人とも、体調はどうかしら?」
「今のところは何もないです」
「今日は昨日の結果をこれから伝えるわ」
室内の空気が変わり、俺は固唾を飲んだ。
「脳はもう問題ないわ。薬のお陰もあってだいぶ落ち着いては来た」
俺はそれを聞いて安心し、ほっと一息吐いた。
でもおばさんは表情を変えるどころか、いつもと雰囲気が違った。
「ただこれから言うことは驚かずに聞いて欲しいの」
何かあったのか、気になり再び黙り込む。
「輝彦君……このままだと余命はたった二年よ」
……………………えっ?
「二年……?そんな冗談言わないで下さいよ」
「ごめんなさい……でも本当なの。だけど受験が終わってすぐ手術を受けたら―――」
「終わってすぐ手術を受けなきゃ、俺は二年後には死ぬってことですか?」
そんな……まだ俺はやりたいこといっぱいあるのに……。
「余命だから多少は前後するかもしれないけれど……」
「だったら今すぐしてくださいよ……!なんで退院なんかさせてそのままの状態で受験を受けさせるんですか?!」
「こっちだって早くしてあげたいけど、今は忙しいのよ……他の患者さんの事もあるから」
なんで……俺が……。
憤りが隠せなくなり、おばさんを強く睨み付ける。
「て、てる……」
奏は俺を落ち着かせようと、そっと優しく手を包む。
「……奏」
「落ち着いて、ね?」
「奏はなんとも思わねえのかよ……余命二年だって」
俺の苛立ちが奏に向けられる。
「嫌、だけど……手術、したら……」
奏の声はどんどん小さくなっていき、黙り込んでしまった。
俺はもう何もかもどうでもよくなってしまった。
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