第四章 三学期
第96話
翌朝、普段とは違う時間に目覚めた俺は辺りを見渡すと、隣には奏がぐっすりと眠っていた。
その寝顔は子供のように幼く見える。
でも何処か女の子っぽさを残すそんな奏が、俺に抱き付いていた。
「今、何時だ……」
まだ覚醒しきっていない頭を無理矢理動かして、時計を見ると朝の七時ちょうどだった。
七時ならまだ寝てよう、どうせ学校に行かなくても良いんだからと再び戻る俺だった。
☆
「―――て……起きて」
「んんっ……」
俺は誰かに起こされた。
「おはよ、ご飯出来たから……食べよ?」
「もうちょっとだけ……」
俺は布団を深く被り、三度寝を試みる。が
「めっ……ご飯冷めちゃう」
無理矢理布団を剥がされ、小さく縮こまる俺。
「寒い……」
「ご飯は暖かいよ?」
ゆっくりと目を開けて声がする方へ顔を向けると、可愛いらしい私服姿に身を包んだ奏が少し不機嫌ながらも手を差し伸ばしていた。
「おはよ、てる」
「ふあ~あ……おはよ、奏。可愛いなその服」
「そ、そう……?えへへ」
褒められたことが嬉しいのか、不機嫌そうな雰囲気からにへらと笑い、表情を崩した。
普段の奏も十分可愛いけれども、今日は一段と可愛く見える。
「……そういや、今日から一緒に暮らすんだったな」
「うん」
「蒼衣、大丈夫かな……ちゃんと一人で起きれただろうか」
普段から起こしに行くことが多い俺は、妹である蒼衣の事が不安で仕方がなかった。
あいつは俺が起こさないと昼頃まで寝てるからな……。
「……心配?」
「まあな、妹だし」
「それなら大丈夫、ほら」
俺の目の前に出したのは奏のスマホの蒼衣とのメッセージのやり取り。
『蒼衣ちゃん、起きてる?』
『なんとかー……すっごい眠い』
『眠たくても起きたから偉い』
そんなやり取りが画面いっぱいに続いていて、蒼衣は俺が居ない生活が少し寂しいようだった。
そんな俺の可愛い妹だ。
「まあ数日もすれば俺も慣れてくるか……よし、朝ご飯食べに行こう」
「ん」
俺は奏と一緒にリビングへ向かい、奏と一緒に朝食を取った。
☆
朝食を取った後、奏は洗い物をしていて俺はソファーで適当なテレビ番組を見ていた。
俺はふと奏を見ると、なんだか胸の奥が暖かかった。
「どうしたの?」
「なんか……新婚みたいだなって」
ガチャンッ!と大きな音が響き、慌ててキッチンへ向かうと真っ赤に染まった奏が何かぶつぶつと呟いてた。
怪我はなかったから良かったものの、だらしない表情を浮かべているのはどうしてだ?
「てーる」
「ん?やっぱどっか怪我したのか?」
「んーん、えへへ」
名前を呼んだだけなのに幸せそうな表情をしていて、なんだか良く分からない奏であった。
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