第87話 奏視点 クリスマス

 昨日は一杯甘えていたところで、蒼衣ちゃんが来てからイチャイチャ出来なくてちょっとだけ寂しかった。


 そして翌朝のクリスマス当日。

 自分の部屋で目覚め、リビングのおこたで寝ているはずのてると蒼衣ちゃんを起こしに行こうとしたら、てるの姿だけがなかった。


「起きて、蒼衣ちゃん」


「んん……っ、おはよかな姉」


「……てるは?」


 てるが今何処に居るの?と話し掛けたら、蒼衣ちゃんは驚いて目を瞬かせてた。


「あれ?居ないの?」


 私達が寝てる間に何処か行っちゃった……?


「でもすぐ帰ってくるでしょ、なんだってお兄ちゃんだし」


「……そうだね、ご飯食べよ?」


 てるはきっと戻ってくると信じて、二人で朝食を取った。





 ☆





 それから数時間経ってもてるは戻ってこなくて、ただ待つわけにも行かなくて、仕方なく二人で夜に向けて準備を進めた。

 私は寂しくて蒼衣ちゃんは、私に何度も話し掛けてはてるに文句を言うような感じが続く。


「わりぃ、遅くなった」


「てるだ……♪」


 私は慌てて玄関に向かうと、苦笑いしながら何かを隠すような仕草を見せた。


「お兄ちゃん!今までどこ行ってたの!」


「どこって……家だよ」


「「家……?」」


 私と蒼衣ちゃんは顔を見合わせて、顔を傾げた。


「まあとにかく、準備してんだろ?さっさと終わらせよう」


 話を無理矢理切り上げ、私に背中を見られないようにリビングへ入っていった。

 私達二人はてるのおかしな行動を見て、再び頭を傾げてリビングに戻った。





 ☆






 それからしばらくして、準備も終わって夜。

 毎年恒例のクリスマスパーティー、今年はお母さんが家に居る極めて珍しい年。


「今日は来てくれてありがとう。輝彦君、蒼衣ちゃん」


「……奏と一緒に過ごせて嬉しいです」


 えへへ、もうてるったら。


「ふふっ、そうね。これからも奏の事、末長く宜しくお願いしますね?」


「も、もうっ!お母さん!」


 す、末長くって……うぅ……っ!


「もうすっかり赤くなっちゃって……じゃあ戴きましょ!今日は一杯食べてね」


 私達はそれぞれ楽しいクリスマスを過ごすことに。


「……奏、俺達も食べようぜ」


「う、うん……」


 赤くなったてると一緒に恋人としての初めてのクリスマスパーティーを楽しんだ。

 てると一緒に美味しい料理を食べて、もう幸せ一杯だった。


 そして楽しい時間は過ぎていき、夜が更けて二十二時。

 お母さんは途中で仕事で抜けたけど、それでも十分楽しかったなぁ……。


「ふわあ……」


 蒼衣ちゃんははしゃぎすぎて、疲れ果ててリビングでぐっすりと眠ってて今はてるが片付けてくれている。

 流石の私も疲れちゃったし、このまま寝ちゃおうかな……なんて考えていたら突然扉が開いた。


「てる……?なんでここに……」


「……奏に渡したいものがあってさ」


 渡したいもの……?なんだろう?


「……これ、なんだけど」


 手渡されたのは包装紙を身に纏った箱。


「メリークリスマス……奏」


 まさかのてるからのプレゼントだった。


「開けていい……?」


「うん」


 袋の中には、ネックレスが入っていて凄く綺麗だった。


「ありきたりな物だけど、似合うと思ってさ」


「てる……着けて?」


 私は後ろを向いてネックレスが掛けられ、前に向き直す。

 だけどてるは何かが変わったような感じで、私を押し倒して唇を奪われる。


「ぷは……っ、てる……?んんっ」


「……ごめん、もう我慢出来ないや」


 私とてるは互いに求め合い、深く愛し合った。

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