第84話
お洒落な洋服店の前で立ち止まり、キラキラと輝くイルミネーションに心奪われていた。
洋服店なのに凄い綺麗だなと感心していたら、奏の表情が暗かった。
顔には似合わない、と出ていた。
「絶対に何着かはあるって!」
俺は励ますように言って、ほぼほぼ無理矢理な形で店内に入ると凄く明るくなった。
無理にでもここへ連れてきて良かった。
「……にしてもすげえ数……へぇ、男物まであるんだ」
大体こういう店は女性物ばかりだと思っていた俺は、男性客に向けた商品を扱ってることに感心していた。
辺りを見渡していると気付けば、奏が何処にも居なかった。
「あれ……?さっきまで隣に居たはずなのにな……」
どっかではぐれたのか?ひょっとしてまだ外に……。
「お客様、少しお時間宜しいでしょうか?」
とある店員が俺に話しかけに来た。
凄い綺麗なお姉さんが居て丁度良いと思い、奏の事を聞くことにした。
「はい、でもその前に……さっき俺の隣に居た小さな女の子見掛けませんでしたか?」
「……その方でしたら、こちらに」
俺は一つの試着室に案内され、その試着室の前にもう一人の店員さんと軽く話し合っていた。
俺の顔をチラッと見て小さく頷き、試着室の中に居る誰かに話し掛け、仕切られていたカーテンが店員さんによって勢いよく開いた。
「なっ……!」
そこの居たのは間違いなく奏なのだが、奏とは違う別の少女がそこには居た。
灰色のショートスカートを履いて、上には紺色のカーディガンを羽織っており、中から見える白色のセーターが物凄くマッチしていて見惚れていた。
「奏……なのか?」
「……うぅっ」
ヤバイ何この可愛い生き物は……。
「……ど、どう?変……だよね、これ」
奏はまだ似合わないと思ってて、でも少なからず俺の回答を待っていて、逆に似合いすぎてて何と表現すれば良いのか分からなかった。
「お客様、素直になられては?」
俺に話し掛けてきたのは、ここへ呼んだお姉さんの方。
そんな素直になれと言われても……そのまま言うのはなんか恥ずかしい。
「変……じゃ、ない。凄い……可愛いし、似合ってる……」
気付いたら口から勝手に感想の言葉が出ていて、目を逸らしながら赤くなったであろう顔を腕で隠す。
店員に見守られながら言うのめっちゃ恥ずかしい……。
「!ほ、本当……?う、嘘…じゃない……?」
「……何度も、言わせんな」
「ふ、ふふっ……♪」
奏は嬉しさのあまり、にやけ口を抑えて居るのも関わらず物凄くデレデレとした表情を浮かべていた。
もうこれ可愛いってレベルじゃねえぞ……?!
「このままで……良い、ですか?」
「畏まりました。ご洋服はまとめて袋に?」
「はい……♪」
「ではこちらへ」
そのまま奏は会計を済ませて、俺の腕に絡み付いた。
上機嫌な奏と目が合い、頬を赤く染めにへらと表情を崩しそのまま店を後にする。
俺は奏にこの激しい鼓動が聞かれてないか、不安で一杯だった。
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