第82話

 冬休みに入ってから三日が経った。

 相も変わらず奏と毎日顔を合わせてはイチャイチャしたり、時には蒼衣と一緒に息抜きで遊んだりもした。

 クリスマスがいよいよ明後日と近付いて、俺は当日は家族と過ごすと決めていた。


「輝彦、今時間あるか?」


「父さん急にどしたの?」


「クリスマスの日、父さんその日は仕事で遅くなるのと母さんは今日から出張で家に居ない。だから寂しいと思うが、蒼衣と一緒に過ごしてくれないか?」


 マジか……最近忙しいと思ってたけど、年末年始は忙しいんじゃ仕方ないか。


「そういうことだから、蒼衣にも伝えてくるな」


「分かった」


 イヴはともかくとして当日は二人だけか……今年はどうしようかね。


「まあどうせ、蒼衣は貴之んとこ行くだろうし……俺は奏のとこで過ごそっかな?」


 なんて考えてると机の上に置いていた俺のスマホが震えた。


「……こんなジャストタイミングで奏か」


 内容は以下の通りだ。


『伯父さんから聞いた。当日こっち来る?』


 俺としても嬉しい話だし、断る理由もないから行くと返事して受験勉強に戻った。





 ☆






 それから二日程経ち、イヴ。

 蒼衣と俺はそれぞれの場所に向かうため、家を出る。


「じゃあ私こっちだから」


「おう、気が済むまで熱い一日を送ってもいいんだぞ」


「なっ……!お兄ちゃんのバカ!!」


 蒼衣は耳まで真っ赤にしながら、貴之の家に。

 対する俺は、待ち合わせの場所へ急いだ。


「流石にちょっと早かったか……」


 待ち合わせの時間まで数十分残っていて、俺は近くに腰掛けて辺りを見渡すとカップルや家族連れが多かった。

 俺もその中の一人だと思うと、少しだけ浮き足立ってきた。

 しばらく待ってると、俺の所に近付いてくる小さなシルエットが見えてきた。まあ奏なんだが、こちらには気付いていない。


「……行くか」


 俺は気付かれないようにその場から離れて、奏の後ろ側になるように隠れる。

 しばらくすると奏が待ち合わせの場所に着いて、少しだけ辺りを見渡した。

 俺はこっそり近付き、奏の背後から抱き着いた。


「!」


「お待たせ」


「て、てる……」


 よく見ると顔が赤い、少しやりすぎたか。


「何?」


「……もう少しだけ、このままで」


「仰せのままに」


 俺は優しく力強く奏を抱き締め、独占欲が強くなって腕を離さない。

 いや、俺が離れたくないと言った方が正しい気もする。


「そろそろ、いこ?」


「もうちょっとだけ……」


 俺は奏から離れたくなくて、更に強く抱き締める。


「……よし、行くか」


 満足した俺は奏から離れて、正面に向き合うと可愛らしい奏の服装に俺は目を奪われた。

 奏も奏で俺をじっと見ていて、頬がほんのり赤く染まっていて、俯きながら服の袖を摘まんでいた。


「に、似合ってる……ぞ」


「……てるも、似合って……る」


 いつも一緒なのに、この日だけは何か特別可愛く見えて愛おしくて、いつも以上にドキドキしていた。

 今日も新たな一面が見れそうだ。

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