第四章 冬休み
第81話
終業式から一日開けて、世間はクリスマスムードになっていて俺を含めた一家はいつもとは少し違う雰囲気であった。
冬休みに入ったにも関わらず、奏がやってくるのだ。
現に今も……。
「~♪」
俺に抱き着いてなかなか離れようとしない。
俺がちょっとでも引き剥がそうとすると、奏は泣きそうな顔で上目遣いをしてきたり、ぷくーっと頬を膨らませて離れまいとさらに強く抱き締める。
「……はぁ」
なので俺は勉強を諦めて、奏の気の済むまでは下手に動こうとしなかった。
無抵抗になったのを感じ取った奏は俺を押し倒した。
「てーるー……♪」
チラッと見える胸元が凄く艶っぽくて、小さいと思っていた奏の胸は確かに膨らんでいて、目のやりどころに困っていた。
子供だと思っていた奏も、気付けばもう女性なのかと思い知らされる。
「……?」
「あーっと……ちょっとだけ離れてくれるかな……」
「やだ」
胸が当たってるにも関わらずくっついてくる奏だが、微かに息が上がっていた。
一体どうしたのか、俺には分からない。
「奏……?」
顔を俺の胸元に埋める。
「すぅ……はぁ……♪」
「おい嗅ぐな、そんないい匂いしないだろ?」
「んーん、好き」
胸が急に締め付けられて、顔が物凄く熱い。
俺は我慢の限界で無理矢理奏を引き剥がそうとすると、手が奏の胸に当たってしまった。
「あっ……」
「わわっ……ご、ごめ……!」
俺は飛び起き、奏と距離を取る。
「本当にごめん……!わざとじゃないからな?!」
いつもの奏じゃないからかなり調子が狂う。
「もう……えっち」
奏は俺の耳元で囁いて、凄く変な気分になった。
あぁ……どうやら俺は、あの一言で奏をまともな目で見れなくなったようだ。
「でも、ダメ」
「……ダメって何がだよ」
「ふぇ……?きゃっ……」
今度は俺が奏を押し倒し、そっと奏の顔を触れると今度は奏が真っ赤に。
真っ赤になった反動で俺から目を逸らし、小さく唸っていた。
「何逸らしてんだ」
「い、やっ……あっ……」
完全に溶けきった目で、俺を捉えて逃さない。
だけど俺はゆっくりと顔を近付けると、奏は目を閉じてキスの体勢になっていた。
「あっ」
「甘えたいのは良いけど今日はダメ、流石に勉強させて?」
表面上は凄く冷静になっている俺だけど、内心はものすっごく心臓バクバクと言わせて、すぐにでもこの場から逃げたかった。
だってこんな奏今まで見たこと無いよ!めっっっっっっちゃ可愛すぎて危うく襲いかけたよ!?
良く自制したよ俺!
「……」
奏はまだボーッとしていて、一体何が起こったのか分かってなくて、でも小さく頷いた。
口元がだらしなく緩みきって笑みが溢れて、その姿を見た俺はああ奏は可愛いなぁなんて思いながら勉強に集中した。
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