第78話
奏の家に来た俺は、奏の部屋でベッドの上に座っているとその上から奏が座ってきた。
小学生の頃に送ったぬいぐるみと一緒に。
「結構ボロボロになってるな」
所々に修繕の跡が見られて、大切にしてくれたのが凄く嬉しかった。
「……大切だもん」
「今年は色々あったな……色々ありすぎて嫌われるようなことしてないかすっごい不安だ」
「……嫌いになんてならないよ?」
頭だけを振り向かせ、恥ずかしそうに微笑む姿が凄く可愛くて、思わず後ろから抱き締める。
俺の顔も大分赤くなってる。でもそれ以上にこの愛おしい彼女が可愛くて離したくなかった。
「てる、顔真っ赤……」
「奏こそ真っ赤、んっ……」
「……えへへ」
俺達は最近受験勉強で忙しくて会えない日は無いけど、こうしてのんびりと凄く時間がない。
だからこうした時間が本当に貴重で、時間の許す限りはずっと居たい。
「……勉強、無理してない?」
「なるべく徹夜はしないようにしてる、無理して当日行けないなんて事が起こらないように」
と言っても昼間のうちにやっている為、夜は見直し程度。
担任から貰った過去問はどれも難しい問題ばかりだけど、いざ見直しとかをしていると意外とそんなこともなかった。
難しく考えすぎて問題を難しいと勘違いしていたらしく、それに気付いてからは無理に考えないようにしている。
「最近は結構捗ってるよ、奏のお陰かな」
「良かった」
「そういう奏はどう……って聞いても意味ないか。奏は頭良いしな」
俺は奏の頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めていた。
「えへへ……」
「奏の髪すっごい綺麗、サラサラしてる」
「そ、そう……?なにもしてないよ?」
こんなに綺麗な髪を毎日維持し続けるのって、結構大変だろうに……。
おばさんの遺伝子なのかな。
「いででっ」
「むう……」
寂しそうなでもちょっぴり怒ってる奏は、怖いと言うよりも可愛いが勝ってしまう。
多分だけど、妬いていたんだろうなと。
「奏が思ってるような変なことは考えてないよ?おばさんみたいに綺麗な髪を維持するの大変だろうなぁって思ってただけだよ」
「そう……?」
「うん、蒼衣なんて貴之と付き合う前までは結構ぼっさぼさだったよ?最近は意識してかだいぶ落ち着いてるけど」
なんて話してると、奏は急に笑い出した。
「女の子は皆、可愛く居たいの……私みたいに」
奏はそのまま俺に凭れかかった。
「……こんな風に」
「でも、それとこれとは違うんじゃない?」
「むっ……一緒……だもん」
奏の基準がわかんねえ……。
「……可愛くない?」
「それを言うなら綺麗かどうかだろ……実際可愛いけど」
「えへへ……」
可愛いと言われて嬉しいのか、デレデレになる奏。
そう言うところが実に子供っぽいと感じる俺であった。
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