第73話
翌日、俺はこの前受けた模試の結果と現時点での判定確認の為に、久々に学校に来た。
奏は今日も家で勉強中とはいえ、付いていく気満々だったのを断ったのは反省するべきだなと思った。
「よし、来たわね。個室空いてるから詳しい話はそっちで話しましょう」
俺は担任に言われた通りに個室に入る。
「東條君、模試は結構頑張ったんじゃない?どの教科もかなり良い点数取れてるわよ」
「そうですか、自信無かったけどそういって貰えるのはちょっと嬉しいっす」
英語や国語総合はあまり自信無かったから、奏に教えて貰えたのが良かったらしい。
ただ問題は物理と数学だ。
「物理は問題ないんだけど……数学はちょっと惜しいね」
「マジかぁ……結構頑張ったんだけどなぁ……」
物理と同時並行でやるものじゃないって、奏に言われたのを無視したのがいけなかった。
「それでこの結果を踏まえての最終判定がこれね」
手渡された一枚のプリント用紙に、今回の模試の結果とそれに対する志望校の判定がズラっと並んでいた。
第三志望はS判定、俺が元々目指していた学校のひとつランクが落ちるが、今のところ問題ないようだ。
第二志望、俺が秋頃に目指して勉強していた学校の判定はA判定。Aとはいえ油断は出来ない。
そして肝心の第一志望校はというと……。
「……C判定」
と、かなり厳しい評価を受けた俺は、悔しくて情けなくて落ち込んでしまった。
このままじゃ奏と一緒の学校にいけない……。
「他の教科は問題ないのだけれど、やっぱり目指してる場所が場所なだけに厳しい評価ね……」
今のままじゃかなり厳しいことは分かっていたはずだ。
これは受験日まで勉強するために部屋に引きこもるしかないのかな……。
「……東條君。どうしてもそこじゃないとダメなの?」
「はい……」
「そう……分かりました。先生としては前のところでも良いと思ったけど……本人がそこまで言ってるのに、教育者の私が頭ごなしに否定するのは良くないわね」
先生は優しい表情を浮かべ、書類の中から大きな束になったプリント用紙を渡された。
これは第一志望校の過去問……?
「今それをやれば、当日はなんとかなるかもしれない。量は多いけど、やらないよりは良いでしょ?」
「良いんですか……?」
「良いもなにも、本来なら模試の時に受け取っておけば問題なかったのよ?まあ限界を知れただけでも十分だとは思うけど」
優しいと思ったら今度は苦言が……。
先生はそれだけ心配だったという訳なのだろうか?
「とにかく、この用紙で納得の行くところまでやりなさい。やった分だけ結果は返ってくるから……野球と同じように、ね?」
「はい……っ!」
「じゃあ今日はここまで、今度来る時までに合格かどうかちゃーんと教えてよ?」
最後にそう言い残し、先生は個室から出た。
最初から上手くいく奴なんて居ない、それは身を持って知ってる。
それに奏を悲しませるわけにはいかない。
「……よしっ!」
俺は両頬を叩いて、気合いを入れ直した。
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