第56話
俺は奏からクーデレについて知ってることをそのまま説明していたら、誰かにつけられているような謎の視線があった。
奏が可愛いこと言ってたのもあって、抱き締めるとその視線がはっきりと分かった。
「……っ」
幸い奏は気付いてない、まだ頭の中に俺が囁いた言葉がずっと残ってるからだ。
「……そのまま家の中に入れるか?」
奏は小さく頷き、真っ赤な顔で言われるがまま奏は家に帰宅。
「ふぅ……誰だ?俺達をつけたの――は?」
後ろを振り返ると、そこに居たのは蒼衣だった。
「あはは、気付かれちゃった」
俺は顔を押さえながら、大きな溜め息をついた。
「ややこしいことすんじゃねえ……ストーカーかと思ったぞ?」
「こんなバカップルにストーカーなんてつかないよ?」
「なっ……!バカップルじゃねえ!!」
俺は慌てて顔を逸らすが、蒼衣には全てお見通しだろう。
「んふふ、こーんなに愛されてかな姉は幸せだねぇ」
「うっせえ……!さっさと帰るぞ!」
ったく、嫌な妹を持ったな……俺は。
☆
その後も俺は普段通りの日常を送っていた。
俺としては最後の二学期だが、高校生活の中では一番楽しくなるだろうと思っていて、文化祭が待ち遠しかったりする。
とある日、いいんちょが教卓の前で何やら話をして、俺は教室で一人、外の景色を眺めていた時だった。
「もうすぐ我々三年生にとっての最後の学園祭が始まります。最高の思い出づくりのため、まず文化祭の出し物について討論したいと思います」
学園祭。文化祭は二日間行われ、その後の土曜日に体育祭が行われる仕組みだ。
俺達にとって最後になる学園祭だが、出し物が毎年決まって荒れる。
「今年こそ喫茶店!」
「お化け屋敷でも良いでしょ!」
「バーとかどう?」
なんて声が上がり、お化け屋敷のワードを聞いた奏は涙目になりながら、上目遣いで俺の腕を掴んでいた。
正直俺はなんでもよくて、奏と文化祭回りたいなぁぐらいしかなかった。
「なあ輝よ、お前はどうすんだ?文化祭の出し物」
「無難に喫茶店で良さそうな気もするけどな、お化け屋敷はこの通り奏がこれだし」
「あーそっか、奏ちゃんそういうの苦手だったもんな」
昔は俺とよくお化け屋敷ではしゃいでたんだけど、何かあったのか知らないけど苦手になっていた。
喫茶店なら奏は元料理研究部なのもあって、客引きが苦手でも裏方でサポート出来る。
「喫茶店に決まりそうだけど、またここで厄介なことになるのよね……主に総くんのせいで」
「はは、今年も村瀬メイドか?」
「今年は絶対にやんないからね!というか阻止しないとまた決まっちゃうじゃん!いいんちょー!」
村瀬は必死になって別案を出すが、尽く彼氏である総司に言いくるめられていた。
でもメイド喫茶店か、見てみたいな奏のメイド姿。
「何?てる」
「いや奏もメイド服来たら可愛いのかなって」
「……似合う?」
「似合うとは思うけど、他人に見せたくねえな」
出来れば俺一人で見たいなんて思うのは、おかしいのかな?
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