第48話

 目を開けると部屋が暗く、寝てしまっていたようだ。


「んんっ……あれ俺なんで寝て……」


 凄く身体が重い……頭もボーッとして何も考えられない。


「てる……起きた?」


「奏か……今何時……?」


 身体が重たいから話しかけるのが精一杯、頭もさっきからボーッとしていて、何もやる気が起こらない。


「もう夜だよ?ふふっ……」


「何笑って……あててっ……」


「もう少し、寝てて良いよ?ご飯作るから」


「ありがと……そうする……」


 そして俺は再び眠りについた。





 ☆






 これは……夢か?

 俺と奏と見知らぬ誰かと三人で、何処かの広場に遊びに行ってるようだ。

 よくみると俺達に良く似た子供が、はしゃぎ回っている。


『あまり遠くに行くなよ~?』


 俺がその子供に向かって言うと、その子供は若干嬉しそうに答えた。


『わかってるってばー、パパ』


 俺がパパ……?一体何がどうなってるんだ……?

 え?奏と結婚して子供が……?ますます混乱してきた。


『ふふっ……てるは昔から変わんない』


 奏は今と全然違う姿になり、小さかった身長や胸は年齢相応まで大きく成長し、見た目も凄く綺麗になっていて、今と見違える程だった。


『俺と出逢ってくれてありがとな、奏』


『私も……』


 二人で笑い合い、幸せな時間を送っていた。

 そのまま夢は終わり、目が醒めた。


「何だったんだ……今の……」


 一眠りしたからか、さっきまでの怠さは既になくなっていて、頭も痛くなかった。

 枕元にあったスマホを手に取り、覚束ない足取りで、薄暗い部屋に明かりを灯す。


「うっ……もう七時か」


 寝る前はかなり暑かったのに、少しだけ涼しくなっていて大分寝てしまったようだ。

 ベッドの上を見てみると、女性物の下着や服があちらこちらに散乱していて、俺は固まってしまう。


「何があったんだ……?!」


 全く見に覚えがなく、ただ呆然とその場に立ち尽くす。

 今度は背後の部屋の扉がゆっくりと開く。


「てる、どうしたの?」


「奏!一体何がどうな―――って……」


 奏の姿を見て、俺はまた固まる。身に付けていたものはシャツだけだった。

 奏は俺の顔を見て、頬をほんのり赤く染めて、そのまま抱き付く。


「てーる……えへへ……」


 この時、俺は理解した。いや、せざるを得なかった。

 俺は奏と一線を越えてしまったんだと。


「もう一回……する?」


「バッ……!」


「ふふっ……ご飯出来たよ」


 奏から唇を奪われ、ボーッとしてる間に奏は下着やらを回収して、部屋を出ていった。

 それから俺は、着替えてからリビングへ向かう。

 リビングに入った時は、流石に上下ともに着ていたから安心はしたが、何故か顔は赤いままだった。


「奏……悪い!俺なんてことを……」


「ううん、てるは悪くない……すっごく幸せだったよ?」


「で、でも……!」


「そんなことより、ご飯食べよ?せっかくのご飯が冷めちゃう」


 奏は幸せそうに微笑み、席に着く。


「てる……?一緒に食べよ?」


 机の上には、奏が作った味噌汁と赤鮭、ほうれん草のおひたしに出来立ての白ご飯。

 どれも美味しそうで、奏の言う通り冷めてしまうともったいないなと思い、俺も席に着いた。


「てる」


「ん?」


「愛してる」


 その時の奏の顔は、今まで見た中で一番可愛く綺麗で、暫くの間見惚れて、胸がまた一段とうるさかった。

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