第46話
昨日今日と楽しい旅行も終わりに近付き、今はお土産屋に二人で来ていた。
色々なのを見て回りながら、あれがいいだとかこれがいいだとか言い合いながら、レジに向かう。
「結構買ったなぁ~……」
「だね」
あのポッキー以来、以前よりもっと甘えてくるようになった奏。
「そろそろ父さん達のとこ行こうか」
「ん」
奏は俺の右腕に絡み付いて、一緒に駐車場に戻る。
俺の左手にはお土産の袋があり、中には下手に動かすと形が崩れるものもあり、慎重に持ち歩く。
駐車場に着いた俺達は、父さん達にお土産の袋を渡し、初日と同じように座席に座り、最後の両家による家族旅行が終わりを告げた。
☆
夏休みもいよいよ終盤、今日はたまたま総司と二人で遊びに出掛けていた。
ただ行き先はゲーセンではなく、バッティングセンター。
「ふっ……!」
「……っ!」
俺達二人は無言のまま、自分のフォームを確認しながらマシンから出る白球を打っていた。
一回目が終わり、二回目に入る。
「ふぅ……半年やってなかったのに結構打ってたな」
「お前程じゃねえけどな」
「ははっ、確かに」
総司はそのまま右打者で、俺は右から左に移る。
「あー……そういやお前、スイッチだったの忘れてた」
「最終的に左のが結構率良かったけどな」
「そもそもプロみたいにそんな左は居ねえんだ……よっ!」
そりゃそうだ、学生はほぼほぼ右ばかり。
両打ちは相手投手の利き腕で入る打席が変わるから、必然的に俺は左打席が多くなる。
だけど両打ちは不便だし、国内に両打ちで有名な選手は居ない。居ても、一流になりきれない選手が殆どだ。
「前から思ってたけど……!お前左のままで良くねえか……っ!」
「一回やっただ……ろっ!そのままだと左が打てねえんだよ……っ!」
今打った白球を最後に、マシンの動きが止まった。
「総司は大学でも続けるのか?野球」
「そのつもり、千花の次に野球が好きだからな」
「仕方ねえから、プロ入りするまでは応援してやるよ」
「いや入ってもそのまま応援しろよ?!」
ふざけ合いながらも、総司は将来の夢のために色々と頑張っている。
俺ももうちょっとだけ、勉強を頑張ろうと改めて心に誓った。
☆
その後はお昼をファーストフードで軽く済ませ、そのまま俺達は家に帰った。
俺の家の前に、何故か奏が寂しそうにその場に座り込んでいた。
「奏、来てたんだ」
「てる……!」
何やら不機嫌そうな顔で、睨まれる。
「……どうした?」
「どこ、行ってたの?」
「総司とバッティングセンター、久々に身体動かそうぜって誘われたんだ」
ずっと家で勉強しているのも、少しつまらないなと思い、一緒に行ったんだが、奏にはそれがあまり宜しくなかったらしい。
「加東君が居ないって、千花……怒ってた」
てことは、今頃俺と同じような感じになってるのか。
「わりい、連絡もなしに勝手に」
「こっちこそごめんなさい……でも息抜きは大事」
「家、上がっていくか?」
奏は小さく頷き、俺の後ろをついてきた。
奏を家に上げた俺は軽く汗を流すために、風呂に入る。
「そういや、今日は二人きりか……蒼衣は明日まで帰ってこないって言ってたし……父さん達も遅いしな」
二人きりになるのは奏が風邪を引いた時以来か、そう思えばずっと一緒に居る。
最近は恋人っぽいことしたいって思っていたせいか、少し変に意識するのだった。
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