第41話
二時間近く車を走らせた後、目的地の旅館へ着いた。
俺の母さんと奏の母さんがチェックインの為に、一足先に受付に。
奏と蒼衣は、自分の荷物を持って母さん達の後を追っていた。
「……輝彦君、ちょっと良いかな?」
「はい、何でしょう?」
「奏と付き合ってると聞いたが、それは本当か?」
「あ、はい……」
何か言われると思った俺は少しだけ覚悟はしたが、優しい顔を見せた。
「いや、昔から君には懐いていたからいずれそうなるとは思っていたんだ」
「まあ、奏ちゃんと輝は昔から仲が良かったからな」
「と、父さん……!」
俺は恥ずかしくて赤くなった頬を見せないように顔を逸らし、荷物を取り出す。
そんな風に思われていただなんて思っても見なかった。
「これから先も、奏の事を宜しく頼むよ輝彦君」
「は、はいっ……!」
「詳しい話はまた風呂の時にでも聞かせて貰おうかな、はっはっ」
俺は父さん達と一緒に、旅館へ向かった。
☆
旅館へ着いた俺達一行は、両親同士が相部屋で俺達子供達の三部屋に別れていた。
中居さんに連れられ、自分達の部屋に向かい、三人で過ごすには十分な広さな部屋に案内され、それぞれ感動を覚えていた。
「うわあ……!ねえ凄い広いよこのお部屋!お兄ちゃん!かな姉!」
「俺達三人でも十分広いな……」
「綺麗なお部屋……」
父さん達に感謝しつつ、荷物を置きこれからどうするのか話し合う。
「この後、二人はどうするつもりだ?」
「んー……外でお店とか見て回る?」
ここらじゃ有名な温泉街な為、出店等が多くある。
「……お店、回りたい」
「じゃあ行こう!」
貴重品が入った鞄を持ち、一度外に出るために親に報告してから、俺達三人は温泉街へ。
☆
俺達みたいに旅行に来ている人達が多く、凄いところに来たと内心驚いていた。
「奏、蒼衣」
「まあ流石にここまで多いと、はぐれちゃいそう」
奏はなにも言わずにすぐ右腕に絡み付き、蒼衣は渋々だが俺の左手を繋ぐ。
どっちが妹でどっちが彼女か分からないぐらい、似ている二人。
口に出せば奏は拗ね、蒼衣から鉄拳が飛んでくるので、言わない。
「蒼衣、はぐれんなよ?奏と違って手繋いでるだけだからな?」
「分かってるよそれぐらいは、心配性だなぁお兄ちゃんは」
「……お前には前科があるから言ってるんだぞ」
俺達が小学生の頃、蒼衣は目を離すとすぐどっか行ってしまう事が多く、いつも一人でわんわんと泣いていた。
大体見つけるのは奏、奏が一緒だと暗い表情で、俺を見ると先程言ったように大泣きをする。
「うっ……!で、でも今はスマホあるじゃん!」
「出たことねえだろ」
「うっ……ごめんなさい」
子犬のようにしゅんとしてしまった蒼衣、少し言いすぎたせいか、奏に怒られる。
「……てる、言いすぎ」
「少し言いすぎた……でも離れるんじゃねえぞ?」
「うんっ!」
いつもの調子に戻った蒼衣と共に、温泉街に向かった。
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