第40話

 その後はお互い何も話さずに、ただボーッと遠くでいちゃついてる総司達を見ながら、俺は進路先の事を考えていた。

 奏と一緒に居れるような学校って何処なんだろうと、考えていたら、奏はジーッと俺の顔を見つめていた。


「どうした?」


「てるのやりたいことって……何?」


 そういえばそんなこと言った気がする。


「建築デザイン、ほら公園とかそういうの」


「……凄いね、てる」


「そんなことない、奏のお陰で見つかったようなものだから」


 ただそうなると、奏のやりたいことと俺の夢は進路は全くの別になってしまう。

 栄養士と建築デザインが同じとこにあるような大学は、果たしてあるんだろうか?それだけが気掛かり。


「じゃあもっと勉強頑張らないとね」


「そうだな、こうしたいって考えてることを絵に書くんだもんな……出来っかな俺に」


「てるなら出来る、私が付いてる」


 微笑んだ奏の顔はすぐに暗くなった、考えてることは同じかもしれない。


「同じとこ、あると良いな」


「うん」


 その後は入れ替わるようにプールに入り、最後は四人で遊び、良い思い出が出来たと思う。

 奏が意外とはしゃいでいたのは、秘密にしておこう。





 ☆





 プールへ遊びに出掛けてから数週間が経ち、奏と付き合ってからは初めてとなる、東條家と植村家での毎年恒例の家族旅行に行くことになった。

 今回は俺達が高校生として最期になるため、この旅行も終わりになる。


「忘れ物はないか?」


 と俺の父さんが聞くと、全員が頷く。


「それじゃあ出発するぞ」


 席順は前に俺の両親、真ん中に奏の御両親が座り、後ろに俺と奏と蒼衣と座っていた。

 ただ席順を決める際に、奏と蒼衣で言い争いが起こった。


「じゃあお兄ちゃんは真ん中、かな姉これでいいでしょ?」


「むうっ」


 正直何処座っても一緒だと思うし、蒼衣が言うように俺がそこへ座れば解決するはずだった。

 でも奏はそれを良しとしなかった。


「やっ!二人が良い」


「そうしたいし、してあげたいのは山々だけど、私だって東條家の家族なんだからね?私だけ抜きは寂しいよ?」


「そうよ奏、我慢なさい」


「奏ちゃん……」


 三者三様、それぞれが奏のわがままに困り果てていた。

 今までこういうことは一回も起こらなかったのに、今回突然言い出したのだ。


「何もお兄ちゃんを盗ろうだなんて思ってないからね?そりゃ大切な家族だけど、それ以上にかな姉も大切なんだよ?」


「奏こうしよう、二人で居れる時はなるべく二人で居るようにして他は我慢する」


「……てるがそういうなら」


 奏は少し不満を覚えながら渋々だが、なんとか穏便に済んだ。


「輝くん、奏のわがままに付き合って貰ってごめんなさいね」


「気にしないで下さい、ごめん父さんもういいよ」


「お前も大変だな、輝」


 そう言いながら、父さんは車にエンジンを掛け、俺達は目的地へと出発したのであった。

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