第36話 奏視点 相談事1
先日行われた地方大会初戦が終わった、とある休日。
今はてるの家には向かわず、自室で受験に向けて少しだけ勉強していた。
とは言っても学校の成績は良い方なので、半日まで削ってやるような無理はしない。
「てる、今何してるんだろ……」
ふと脳裏に過ったのは、この間のデートの事。
喫茶店で少し浮かれて店を出た後、ぐっすりと眠ってしまった。
まだそれだけなら良い、問題はその後。
「寝てる時に何かしたのかな……?」
よくお母さんには寝相が悪いだの、寝言が多いだの言われていたのを思い出した。
私としてはそんなこと言われても仕方ないでしょと心の中で呟いて、少し拗ねた記憶がある。
そんなことを思い出していたら、スマホが震えた。
『今日は総くんとやっとデート!楽しんできます!』
千花からだった。
加東君、今日はお休み貰えたのかな?息抜きでもしてきなさいと。
「楽しんでっと……」
私は受験対策用に買った参考書の問題を解きながら、一人だけの時間を過ごした。
☆
それからしばらくして、突然部屋のドアがノックされ集中を解くと、二時間程籠って勉強してたみたい。
「奏、ご飯出来たわよ?」
「んー……」
休憩という意味で、お昼ご飯を食べるために少しストレッチをしてから、我が家の食卓に向かう。
くんくん……良い匂い、どんなご飯なんだろ?楽しみ。
「あ、かな姉」
「蒼衣ちゃん……?なんで……?」
「えーっと……ちょっと相談したいことがあってきたんだけど……おばさんがお昼どう?って」
相談ぐらいならメッセージ送ってくれれば良いのにと思ったけど、それを躊躇ってしまうぐらいの話なんだろうと勝手に思い込んだ。
でもその前に。
「……ご飯食べよ?」
☆
お昼ご飯を食べ終わった私と蒼衣ちゃんは、自室に向かい適当なところに座って、私はぬいぐるみを抱き締めながら話を聞くことに。
「かな姉、それまで大事に持ってるんだ?」
「……大切な人から貰った大切なもの」
赤くなった頬を隠すようにぎゅっと力を込める。
「大切、か……ねえかな姉……相談の事だけど」
蒼衣ちゃんも若干だけど顔が赤かった。
「……この間の試合の後、貴之に告白されたの」
「おぉ~……」
だからあの時、あんな真剣な顔してたんだ。
なんて感心していると、蒼衣ちゃんはちょっと怒った。
「な、何感心してるの?!こっちは真剣なのに!」
「……好きじゃないの?」
「う"っ……!そ、そりゃあ……嫌いじゃないけど……」
「返事は?」
「……してない」
なんでオッケーを出さないんだろう?二人とも両想いだったじゃん。
不思議そうに蒼衣ちゃんの表情を見ると、嬉しいけど恥ずかしい、好きだけど好きじゃないみたいな表情をしていた。
「この話をおに……兄貴にしたんだけど」
なんでそこをわざわざ言い直す必要があるのか。
「早く返事しろってうるさくて……なんかイラッときて、喧嘩して家出てきたの」
「そっか……」
てるもてるだけど、蒼衣ちゃんも蒼衣ちゃんでなんでこんなになっちゃったんだろうね。
あんなに仲良かったのに、急に目の敵みたいな態度取り出して……。
「告白されて……蒼衣ちゃんは、どう思ったの?」
「嬉しかったけど……恥ずかしくて……」
これはてるの言うように、変な意地張ってるだけなのかな。
蒼衣ちゃんは気付けば、素直に成りきれない性格になっちゃったんだろうね。
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