第27話
梅雨も開けていよいよ夏本番、野外運動部はより一層部活動に力を入れてるそんな頃。
俺は植村家に呼び出されて、奏の部屋に居た。
「……三十九度、風邪だな」
「けほっ……けほっ……学校、行く」
「バカ言うな、一日面倒見るから大人しくしろって」
「で、でも……っ!けほっ……けほっ……」
奏は毎年この時期になると、風邪を拗らせる。
「おばさんがもう学校に連絡したから大人しく寝ろ」
「お母さんのバカ……」
奏の両親は共働きというのもあって、面倒が見れない為に俺に白羽の矢が立ったというわけだが……。
幼馴染だった今までより、変に意識してしまう俺。
「ほら、おでこ」
「んっ……ちめたっ……!」
「汗は大丈夫か?」
念のために聞いておく、間違いを起こさないためにも。
「大丈夫……傍に居て?」
「安心しろ、どこにも行かねえよ」
すると安心しきった顔で、布団を深く被った。
「……なあ奏」
「何……?」
「いや、何でもない……早く元気になれよ」
奏が眠りにつくまでの間、ずっと手を握りながら傍に居た。
☆
お昼頃、奏のためにお粥を作ろうと思い、台所に立つが何がどこのあるのか全く分からなかった。
仕方なく、おばさんに電話をして場所を聞くことに。
『あら?珍しいわね輝くんから電話なんて』
「あのー……お鍋とかってどこにあるんですかね?奏の為に作ってやりたいんですけど……」
『あれ?輝くん料理出来るの?』
「流石にレシピ見ながらやりますよ、奏程じゃないんで」
というか料理自体今回が初めて、いつもは奏か蒼衣がよく作ってくれるから。
だから俺は、日頃お世話になってるからお礼という意味でしてあげたいと思って。
『そう、上の扉開けたらお鍋あるから、あとあの子をよろしくね』
そう告げられ、通話が終わる。
言われた通りに上の扉を開けると鍋があって、レシピを検索してお粥を作る。
「……うん、出来た」
我ながら最高の出来だと思い、風邪薬とお粥と水が入ったコップをお盆に乗せ、持っていく。
二階にある奏の部屋に戻る俺は、ゆっくり部屋に入り、奏の様子を見る。
「……すぅ……すぅ」
まだぐっすりと眠っていて、おでこに貼ってあるシートがたった数時間で暖かくなっていた。
新しいのを取りにいくため、部屋を後にし、冷蔵庫から新しいのを取り出す。
部屋に戻るとちょうど奏が目覚めた。
「おはよう、新しいの貼るけど良いか?」
「ん……っ!」
余りにも冷たかったのか、ぎゅっと目を閉じた奏の姿が可愛くて、微笑む。
それに気付いた奏は、むすーっと頬を膨らませる。
「しょうがねえだろ可愛かったんだから」
「……なんか嬉しくない」
「お粥作ってみたんだけど……食べるか?」
「てるが……?」
「ちゃんと味見はしたよ?と言っても、奏みたいに上手く作れてるか分かんないけどさ」
奏はお粥が入った鍋をじーっと見つめ、俺は茶碗に食べやすいように少量だけ掬い、奏に渡す。
「……どうした?食べないのか?」
「あーん」
「食べさせろってことね、はいあーん」
幼馴染としては何度もやってきた行為だが、恋人としてするのは今回が初で、少しだけドキドキしながら食べさせた。
「……どう?やっぱ口に合わないか?」
小さく顔を横に振り、熱のせいか分からないが少しだけ顔が赤かった。
「……美味しい」
にぱーっと笑った奏の顔が、かなり印象的だった。
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