第26話
奏が起きるまでの間、担任から貰った学校の資料を読みながら、何か良い学部がないか探していた。
ただどの学校も、奏と一緒に入れそうにないところばかりだった。
「……そういや奏って、どこ目指してるんだろ」
資格だけなら別に大学にいかずとも、そういった専門学校に行けば取れるはず。
でも頭は良いから大学に行ってても、別に問題はないけれども何か腑に落ちない。
「起きたら聞いてみるか」
幼馴染じゃなく、彼女として気になった。
☆
数分後、奏の目がゆっくりと開いた。
「おはよう、よく眠れたか?」
小さく頷く奏、まだ少し眠いのかボーッとしている。
「まだ眠い?」
これも小さく頷く。
「じゃあまだ寝てな、まだ時間はあるし」
「やっ……」
今度は横に振り、俺の上に座り、そのまま体を預け、幸せそうに眠ってしまった。
まるで一時期の蒼衣みたいで可愛い。
「もうすぐ十七時半か……」
もうそろそろ帰っても良い時間帯なんだけど、奏がこれだから身動きが取れない。
幸いいくつか荷物は残ってるが、現状二人だけ。
「ふあーあ……なんか俺も眠くなってきた」
でも今寝たら確実にまずいことになる。
「……て、る……すぅ……」
奏に呼ばれたから何だろと思ったけど、寝言だ。
一体どんな夢を見てるのだろうか?何処かの学校に行ってるのか、どこか遠い未来の話か。
「……えへ~……」
奏の頬が緩んで、まるで猫のようにすりすりと甘えてきた。
か、可愛い……。
「んっ!な、何してるのかな?」
「……いいんちょ、静かに」
「分かってるけど……!ていうかその呼び名は止めてっていっつも言ってるでしょ……!」
小声で俺に怒鳴り付けるいいんちょ兼生徒会長。
「どうしたの?なんでこんなとこに……?」
「生徒会終わったから戻ってきただけ、それにしても……ふふっ、可愛いよね植村さん」
「だろ?さっきまで俺もちょっとだけ眠かったけど」
「そっか、ねえ東條君……最後に私のお願い聞いてくれる?」
お願い……?一体なんだろうか。
「目瞑って」
「こ、こうか……?」
唇に柔らかい感触が伝わり、俺は驚いて目を開ける。
「い、いいんちょっ……!」
「……お幸せに」
いいんちょは逃げるように鞄を持ち、教室を後にした。
「んんっ……てる?」
「な、何?」
「顔赤いよ?熱でもある?」
奏の顔が近くにあり、余計に赤くなる俺は上書きをするかのように奏の唇を重ねる。
何度も、何度も。
「そろそろ帰ろう」
「……ん」
奏は俺の腕に絡み付いて、仲良く帰路につく。
つい先程、いいんちょから別れのキスをされたのを忘れて。
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