第24話
更に一週間程が経ち、焦りが隠せずに居た俺は朝から少しピリピリしていた。
その為か蒼衣も最近軽口を言わなくなり、心配な表情を浮かべている。
「お兄ちゃん……?」
「なんだ?」
「いや最近凄い機嫌悪いからどうしたのかなーって……」
「何でもねえよ、行ってきます」
「ちょっとお兄ちゃん?!」
今日は珍しく一人で学校に向かう。
焦りが隠せない今、こうやって一人で居ることが多くなり、周りからかなり心配されてる。
普段より一足先に学校に着き、誰も居ない教室でただ一人進路について、参考になりそうなものを片っ端から読み漁っていた。
「……はぁ、これでもねえ」
何か……何か無いのか?今の俺が興味を持ちそうなものは。
「……る、てる」
「ん?あぁおはよう奏」
「……まだ見つからない?」
「まだ見つかんない、俺が何やりたいのかさっぱり」
奏は自分の席に荷物を置いて、一緒になって探してくれるけど、余り迷惑は掛けたくなかった。
でも何故こうも焦ってるんだろうか?分からない。
「なあ奏」
「……?」
「奏はどこの大学に行くつもりしてるんだ?」
何となく聞いてみた。
「……てると一緒のとこ」
「どうして?」
「分かんない」
分かんないって……。
「てると一緒の方がもっと楽しいから」
今まで見たこと無いぐらいの奏の弾ける笑顔に俺は心奪われる。何故か俺はもっとその顔が見たくなった。
俺の知らない奏をもっと知りたくなった。
「てる?きゃっ……!」
「奏」
「て、てる……うぅっ……」
「んんっ!ふ、二人ともこ、こんなところでな、何してるのかな?!」
声の主はいいんちょだった、そしてほんのり顔が赤い。
「キス……?」
「キ、キ……?!う、うらやま……じゃなくって!こ、ここが、学校だからね?!」
「そんないいんちょが考えてるようなことはしねえよ」
いいんちょの顔が更に赤くなり、湯気が見え、目も回している。
「と、とにかく……!ふ、風紀が乱れるようなことは辞めて!か、会長命令です!」
その言葉を最後に自分の席に向かって、悶絶しながら赤い顔を隠した。
「……て、てるの……バカ」
「ここじゃダメらしい……二人きりになれるとこ行くか?」
いいんちょに聞こえない程度の声量で、奏に囁き、真っ赤な顔のまま小さく頷いた。
「じゃあさっさと行こう」
いいんちょに気付かれないように屋上に向かった。
☆
屋上に着いた俺と奏、朝だと言うのに焼けるように暑く、日陰に向かった。
「んっ……んふっ……」
奏は我慢できなかったのか、着くや否や俺の唇を奪う。
「……奏?」
「てるが……悪いんだからね?」
「そんなに嫌だった?」
「そ、そういうことじゃなく……!」
耳まで赤い奏は頬を膨らませたまま、顔を逸らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます