第23話

 進路に役に立ちそうなのを探し出して、約一週間程が経過したが、結局何一つ進展はない。

 ただ奏と一緒に居る時間が増えただけで、自分が情けなく思う。

 休日の日も俺は一人で町へ出掛けていた。


「……何かやりたいこと」


 ダメだ、何一つ思い付かない。


「あれ、東條?一人でどうしたの?てか奏は?」


「……村瀬か」


 偶然にも村瀬と出会う。


「そういう村瀬こそ何してんだ?」


「私?買い物だけど……奏と何かあった?」


「何もねえよ、ただ進路どうしようかなって……」


 村瀬は夢とかあるのだろうか?今後の為にも、一応聞いても良いかもしれない。


「村瀬は将来何かやりたいこととかってあるのか?」


「んー、やりたいことねぇ……今んとこ総くー-」


「聞いた俺がバカだった……」


「まだ何も言ってないよね?!」


 まだってことはこれから言うつもりってことだろ、何年一緒に過ごしてきたと思ってんだ。


「どうせ総司とイチャコラしてたいだろ?」


「えへへ……よく分かったね?」


「はあぁ……」


「なんで溜め息?!」


 すると後ろから誰かが掴まれたような感覚があった。


「あれ奏?どうしたの?こんなところで」


「……てるが家に居ないから探してた」


「なるほど、じゃあ私帰るねそれじゃあ!」


 村瀬は逃げるようにこの場を去り、俺と奏の二人きりに。


「……てる?」


 心配したと言わんばかりに上目遣いで見つめて、俺は顔を逸らす。


「今日も一緒に――」


「ごめん、今は一人にして欲しいんだ……」


「……ん、分かった」


 掴んでいた奏の手がゆっくりと離れ、顔を俯かせ暗い表情にさせてしまう。

 いつまでも奏と二人きりで探しても、ただただデートになるだけだと思っていたのに、そんな悲しい顔されたら……。


「今日……だけだからな?」


「てる……」


 人目を気にせずに抱き着いてくる奏の姿が、可愛くて愛おしく感じた。


「はは、俺もまだまだ甘いな」


「えへへー……てーるっ」


 奏に愛想尽かされないように俺も頑張らないと。


「で、そろそろ離れて欲しいんだけど……」


「やっ!」


 今日も奏は甘えん坊か、先が思いやられる……。





 ☆





 結局今日もデートになってしまい、少々俺は焦りを覚え始めた。

 かといって、奏とデートをするのが嫌と言うわけでもない。


「……?」


「そろそろ帰ろっか」


 奏は頷いて、帰路につこうと路地に出た時だった。


「……ん?」


 小さい子供が道に飛び出していた。

 幸い車はゆっくりだったおかげで大事にはならなかったが、後少しで事故が発生するところだった。


「……良かった、無事で」


「だな、俺らも気を付けて帰ろう」


 警察官、悪くはないけど、そこまでしてなりたいかと言われたら、なりたくないな。

 やっぱり事件とかに巻き込まれて、奏を悲しませたくないから。

 そう思うと、手に力が入る。


「て、てる……?」


「ん?あ、あぁ悪い……」


 ちょっと力を入れすぎて痛かったのかな?


「……ビックリしただけ」


「驚かせてごめん」


 でも奏の顔が少しだけ赤かったようにも見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る