第21話
翌日、いつものように朝を迎えた俺は制服に着替えてリビングに向かった。
蒼衣は珍しくうとうとしながら、器用に朝御飯を食べていた。
「おはよう」
「おはよ~……はむっ」
いつもこんなに素直だったら良いのにと思ってしまう俺、甘えてきたあの頃が懐かしく感じる。
身長は年齢相応、胸はこの歳にしては大きい方にあたるのかな?だいぶ女性らしくなっていた。
「寝惚けてるのによく食えるな」
「にぃにも食べなよ~」
「口元汚れてる、拭いてやるからじっとしとけ」
口元の汚れを拭き取ってやると、機嫌がかなり良くなっていた。
「えへへー」
「むう……」
「?!奏お前居たのか!?」
「……ずっと居たもん」
機嫌の良い蒼衣とご機嫌斜めな奏に挟まれた俺、大体このときは嫌な想い出しかない。
「かな姉~にぃには私の~」
「むっ……」
「いででっ……!お前ら抱き着くな、食えねえだろうが」
兄に甘えたい寝惚けてる妹と彼氏の妹に妬く彼女、蒼衣に至っては抱き着いたまま眠ってしまった。
奏は頬を膨らませ、機嫌を取れと言わんばかりに上目遣いで見つめてくる。
「あらあら、仲良いわね」
「母さん……これのどこが仲良いんだよ……」
「奏ちゃん、輝のことよろしくね~」
聞いてねえし……。
「……ん」
母さんに認められたのがちょっと恥ずかしかったのか、頬を赤く口元が緩みながら小さく頷いた。
☆
特にこれといった出来事もなく、放課後。
クラスに残ってるのは俺と奏だけ、他の皆は部活やバイトにいったか、受験勉強で図書室辺りに行ってる。
奏は今日は逆に俺に付きっきりで、クラスで暖かい目で見られていた。
「……てる」
「んー?どうしたよ」
「……進路決まってる?」
進路、か……。
「まだ決まってない、野球辞めちゃったしな」
「……進学?就職?」
「んー……一応は進学を希望してるけど、俺の頭でいけるとこあるかな」
そもそも俺は将来何がやりたいのか分からない。
「てるは何になりたかったの?」
「そりゃ野球選手だけど、辞めちゃったし」
「……野球以外は?」
野球以外何も興味を持たなかった俺は、どうしようか悩んでいる。
「そういう奏は?」
「……栄養士」
「すげえな、パティシエじゃないんだ」
「……お菓子作りも好き、それ以上に料理が好き」
俺は一体何になりたいんだろうか?
勉強もあまり得意じゃないし、かといって好きな教科がないわけでもない。
「……九月までに見つけられると良いね」
「だなぁ……じゃあそれを見つけるためにどっか行くか?」
「……デート?」
「そ、それでもいいよ……あはは」
デートじゃ意味ないんだけどな……。
「……ゆっくり見て探そ?」
「何か良さそうなのがあったら言ってくれても良いよ」
「……分かった」
俺達二人は軽くキスをして、恋人繋ぎで学校を後にした。
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