第18話 奏視点 優しさと寂しさ

 定期考査を終えた私達はいつもの四人になって、何処かの席の集まるのが決まりで今日は千花の席。

 相当頑張ったみたいで燃え尽きていた。


「……よしよし」


 いつものように私は千花の頭を撫でる。


「ありがとー……」


「……千花は頑張った」


「奏~」


 千花に抱き締められた私、私にはないその大きな胸が私の顔が埋まる。

 はっきり言って羨ましくて仕方ない。


「輝、どうした?」


「いや、もうすぐだなって」


「……あぁそっか、もうすぐだな」


 てると加東君は窓の外を見ながら何か言った、何がもうすぐなんだろうと考えていると二人で帰ろうとしていた。

 そこで私は気付いて、前に夏季大会に向けて特訓とか言ってたような気がした。


「明日からまた練習再開、今日はちょっと付き合ってくれよ」


 今年が最期、加東君は今大会を機に引退。もう初戦までそこまで日がない。

 だから元バッテリーのてると一緒に色々とやるつもりのようで、それはてるが野球を始めてからずっとしてきたこと。

 だから、最初は何も思わなかった。


「いいぞ、と言うわけで奏」


「……分かってる、そっちも頑張って」


 私は応援することしか出来ない、だから邪魔はしたくなかった。


「埋め合わせはまた今度するから、じゃあ」


 でも付き合い出してから、ずっと一緒に居た時間が長かったから、急に寂しくなってシャツを掴む。

 心の何処かでいかないでと言ってて、でも邪魔しちゃダメって言い聞かせて、頭の中がごちゃごちゃになった。


「奏?」


 もっと一緒に居たいなんて思ってしまって。


「……やっぱり、やっ」


 てるを抱き締めた。


「奏……じゃあ、一緒に来るか?」


 えっ……?


「いいよな?総司」


「全然!なんだったら千花も連れてくぞ?」


「そ、そんなっ……!や、やっぱいい……」


 そんなわがままを今更通して貰うわけには……。


「気にすんなって、やっぱ俺だって寂しいし」


 いつも見てきたてるの優しい顔、でも心が暖かくて、嬉しくて、もっと好きになってしまう。


「……良かったじゃん奏、東條と一緒に居れて」


「昔から寂しがりで甘えん坊だから」


「千花はどうすんだ?」


「今回はパース、私も明日から練習再開だからちょっとでも体動かしときたいの」


 少しだけ寂しそうな顔を見せるけど、お互い大事な大会が控えてるのが分かってるからか何も言わなかった。


「んじゃあねー、総くんも頑張ってねー」


「千花もな」


「奏、俺達も行こう」


 優しくて格好いいてる、私は小さく頷き、そのまま教室を出た。

 親についていく子供みたいに二人の後ろに居ると、てるが手を差し出してきた。

 私はその手を取って隣に並ぶと、握ってる手の形が突然変わった。所謂恋人繋ぎ。


「輝、お前もなかなかやるじゃん」


「お前には敵わねえけどな」


 てるの気持ちがこっちにも伝わってきて、嬉しくて仕方がなかった。

 寂しい気持ちなんてもう何処か行ってしまったようだ。


「てる」


「ん?どした奏」


「大好き」


 私はてるの方へ体を預けるように寄せた。

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