第14話
総司達は先に教室に向かっていて、周りに人は居なくて俺と奏だけの昇降口、誰にも見られないからか、少しだけムスッとして、奏が抱き着き始めた。
流石に気付かれたのか、それとも他の女子と良い感じだったのが気に食わなかっただけなのか、俺は分からない。
「……どうした奏」
奏は何も言わず、顔を埋めるだけ。
「何か言ってよ、流石に分かんないんだけど」
「……会長と何があったの?」
普段とは違う雰囲気で、奏は俺に問いかける。
「な、何でもない……」
「むう……」
怒ってるつもりなんだろうけど、小さいからなのか分からないけどそれが可愛い。
昔から何かあると、こうやって甘えてきたっけ。
「今日どっか行く?部活休みなんでしょ?」
「……いかない、ずっとこうしてたい」
可愛すぎんだろまったく……。
「気が済むまでって言いたいところだけど、このままだと遅刻するからまた昼休みとかにでも」
「……ん」
ゆっくりと俺から離れた奏は少しだけ物足りなさそうにしていた。
それに何を思ったのか、俺は。
「奏」
「何?っ?!」
俺は奏の顔を持ち上げて、ゆっくりと顔を近付ける。
「う、うぅ……」
耳まで真っ赤になった奏に、俺は後少しってところで顔を離した。
思った以上に俺が持たなかっただけなんだけど。
「……い、行くか」
「……」
こくんと小さく頷き、真っ赤になった俺達は、なんとも言えない空気で教室に向かった。
☆
このぎこちない空気感は昼休みも引きずってしまった。
「……」
いつもの四人になりながら、村瀬の背中に隠れながらやってきた。
「総司、お前何やった?」
「そうだよ、教室来てからずっとこんな感じなんだけど?」
「な、なんでもねえ」
付き合ったとは言え、キス一つでこんなに意識するとは思っても見なかった。
奏と何度か目が合っても露骨に逸らされたり、近くを通るだけで奏はビクッとさせて走って逃げたりしていた。
「何でもない訳無いでしょう、ちゃんと説明して」
「わ、分かったから離れて……?総司と奏がすっごい顔してるから……」
「あの総くん?どうしたの――ひゃっ?!」
「なるほどな、これが嫉妬ってやつなのか」
いや総司、今まで妬いたことないんかい!
「そ、総くん……?皆見てるんだけど……?」
「そういや三年付き合ってまだキスすらしてなかったな、今するか?」
「「「「き、キスぅ~~~~~~?!」」」」
村瀬を含めたクラスメイトが驚きを隠せずに居た。
女子は女子で羨ましそうに村瀬を追い詰め、男子は何故か血涙を流していた。
「バッ……!す、するわけないでしょ……!!」
「嘘言うなよ、そりゃお互い部活で忙しくてデートすら出来なかった時期もあったけど……何度か誘ってただろ?」
「さそっ……?!ご、誤解を生むような発言は止めて!」
俺は一体何を見せられてるんだ……?
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