第13話

 制服に着替えた俺は一階のリビングに移動し、朝食を取っていた。

 母さんは父さん、俺、蒼衣の弁当を作っていて、父さんは珈琲を飲みながら新聞を読み、俺は蒼衣に物凄い視線を送られていた。


「こっちに近付くな」


「へっ……?」


「かな姉とあ、朝から……お盛んなことで……」


 耳まで真っ赤にしながら目を逸らす蒼衣、俺はなんの事だかさっぱりだ。

 奏も奏で何も分かってない様子。


「……いってきます」


 蒼衣は俺達から逃げるように学校へ向かった。


「なあ奏」


「……?」


「俺なんか怒らせるようなことした?」


 奏は少しだけ考え、すぐに答えた。


「……してない」


「だよね」


 俺はその答えを聞いて少し安心した。

 母さんが用意してくれた朝御飯を、一人で黙々と食べていたら父さんが話し掛けてきた。


「……あれ、なんで奏ちゃんが?どうしてうちに?」


「朝起きたらなんか居た、父さん今日仕事は?」


「今日は休み、今日は病院だからな」


 今日はちょうど定期検診の日だったらしく休みらしい。


「んじゃ俺行ってくる」


「……いってきます、お義父さん」


 ……ん?なんかイントネーションがおかしかったような?


「そうかそうか……遂に奏ちゃんと……大事にしろよ!」


「今日の夜はお赤飯かしら?うふふ」


 息子の俺はどう反応すれば良いんだろうか……。

 奏は誇らしげに嬉しそうな表情をしていたけど、そこだけは両親は気付かない。


「……なんか勘違いしてるけど、別にそんなんじゃ?!」


 なんだこの殺気……?!


「……ふんっ」


 扉の向こうにはまだ蒼衣がいて、何も言わなくなってしまった。

 そんな奏は俺の制服の袖を掴んで、くいくいと引っ張って不思議そうな顔をしていた。


「……てる、いこ?」


「おう、じゃあ行ってきます」


 俺と奏は我が家を出た。





 ☆





 家を出てから数分が経ち、いつもの四人になり、奏は俺から一切離れずにずっと傍に居た。

 それを見た総司はニヤニヤしながら俺にこう言った。


「お前らやっとか、おせーぞ」


「お前らが速いんだよ」


「???総くん、どゆこと?」


「……見てたらそのうち分かる」


 と、はぐらかす総司。

 学校に着いた俺達一行の元に、一人の女子生徒が近付いてきた。


「おーっすいいんちょ」


「おはよーいいんちょ」


「もうっ!だからその呼び方は辞めてっていっつも言ってるでしょ!」


「……おはよ一葉会長」


 と三人はそれぞれの挨拶をしているけど、俺は目を合わせづらかった。

 それは向こうも一緒で、雰囲気が何かおかしかった。


「おはよ奏ちゃん……と東條、君」


「おはよ会長……」


「……てる?会長?」


 俺の事が心配な奏は、制服の袖を朝と同様な形で引っ張る。


「何でもない、行こっか奏」


「……ん、じゃあまた」


「え、ええ……」


 奏と付き合うことになったと、どうしても言えなかった。

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