第12話

 奏の告白を受け入れた俺は、奏と付き合えることになって浮かれていて、我が妹の蒼衣から冷やかな視線を送られている。

 父さんはまだ仕事だが、それを見かねた母さんが俺に話し掛けてきた。


「輝彦、何か良いことでもあった?」


「まあ……うん」


「あらあらそうなのね、うふふ」


 今の回答で分かるらしい、親って凄い。


「あとは蒼衣ちゃんだけね?」


「な、何でよ!べ、別にあいつの事なんか……」


「誰もそんなこと言ってないわよ?」


「なっ……?!バカ兄貴!」


 俺関係なくね?勝手に自爆しただけだよね?

 蒼衣は真っ赤な顔で自分の部屋に戻っていった。


「もう素直じゃないんだから……一体誰に似たのかしらね」


 父さんは、一見優しそうな雰囲気を醸し出すが、かなりの頑固でいつも母さんに振り回されている。


「そういう母さんは逆に自由すぎるんだよ……」


「あらそうなの?全然気付かなかった」


 これで素なのかそうじゃないのか分からないのが、母さんの悪いところ。

 そりゃあの父さんも振り回されるよなって……。


「てるちゃん、良かったね?かなちゃんと付き合えて」


「……本当はこっちから告白したかったんだけどね」


「大切になさい、幼馴染の前にもう彼女なんだから」


「分かってる、あとは夏大会だけだなぁ……」


「てるちゃんは辞めたから関係ないでしょ?それを言うなら夏祭り、でしょ?」


 俺は苦笑いして、自分の部屋に戻った。





 ☆





 翌朝、俺はいつも通り目覚めたが……。


「……すぅ……すぅ」


 何故か奏が俺の隣で気持ち良さそうにすやすやと寝ていた。

 いつ入ってきた?鍵閉めてるよね?


「起きてから聞けば良いとして、これはまずいな……」


 いつも俺を起こしに来るのは妹の蒼衣で、その蒼衣も今の奏みたいに気持ち良さそうに眠りにつくのだ。

 理由は分からない、ただこれは非常にまずい。


「……クソ兄貴」


 そう言い残し部屋を後にする蒼衣の姿があった。


「バカからクソになってる……」


 日に日に蒼衣の口が悪くなっていってて、お兄ちゃん心配です。


「おーい奏起きろ、起きろって」


「んーっ……おはよ、てる」


「おはよ、俺着替えるから下で待っててくれる?」


「……ん」


 外に行くのかと思えば、そのままじーっと見つめる奏。


「あのー……奏さん?」


「……なあに?」


「下で待っててって言ったんだけど?」


 まだ寝惚けてるのかな……?全然動こうとしないんだけど。


「……待ってるよ?」


 これ多分通じてない、一階のリビングで待っててって言ってる筈なんだけど……。

 奏はスカートをたくしあげ……って。


「待てコラ!そういう意味じゃねえ!!」


「……待ってるって言うから」


「違う違う、一階のリビングで待ってて欲しいの」


「……ん」


 今度はそのままリビングへと移動していった奏、俺は一安心してから制服へと着替えた。

 微かにドアが開いてて見られてたとも知らずに。

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