第11話

 長谷川会長から告白された俺だったが、正式に断わった。

 でも会長は諦めなかった。


「それぐらい見てたら分かるよ……だってずっと見てきたから」


「だったらなんで……」


「……後悔、したくないから」


 、俺はその言葉を聞いて何を思ったのだろう、何を感じ取ったのだろう。

 本当に俺は奏のことが好きなのか……?

 野球を辞めてまで好きになるものなのか……?

 ますます分からなくなってきた。


「……東條君の気持ちは分かったけど、私は諦めない」


「会長……」


「だから、友達としてよろしくね?」


 会長の表情は何か吹っ切れたような感じで、いつもの優しい感じに戻った。





 ☆





 生徒会室を後にした俺は一度教室に戻った。


「……あ、てる」


 自分のと俺の荷物を持って近付いてきた奏、若干だけど頬が赤く目は合わせてくれない。

 対する俺は、何かに取り憑かれたような感覚で顔を伏せていた。


「……どうしたの、てる?」


「奏は……」


 奏は俺の事なんて思ってるんだろうか。

 仲の良いクラスメイト?それともただの幼馴染?


「やっぱ、何でもない帰ろうぜ」


 奏から俺の鞄を受け取ろうとした瞬間だった。


「「あっ……(っ!)」」


 俺が手に触れたことにより、奏は咄嗟に手を離し、俺の鞄が床に落ちた。

 奏は俺から背を向け、何故か耳まで赤かった。


「奏……どうしたの?」


「にゃ……にゃんでもない……!」


「……奏、さっきさ会長に告白されたんだ」


「えっ……」


「でも断わった、そう言って貰えたのは嬉しいけど……ちゃんと好きな人が居る、から」


 すると奏は俺を後ろから抱き締めてきた。


「……いかないで」


「何処にもいかないよ」


「……ずっと一緒って約束した」


「でも今年俺達が卒業したら、一緒には居られない」


「やっ……!」


 奏の抱き締めている腕の力が更に強くなる。


「……私はてるのこと……好き」


 今、なんて……?


「……小さい頃からずっと、てるが好き」


「かな、で……?」


「誰よりもてるが好き……なんだもん」


「奏……俺も好きだよ」


「てる……」


 俺は正面に向き直し、二人で見つめ合い奏が背伸びして俺の唇を奪ってきた。

 奏の顔はさっき以上に赤くなって、目が蕩けていた。


「……こんな俺だけど付き合ってください、奏さん」


「うんっ……大好き!へへ」


 世界一可愛い幼馴染から彼女に変わり、俺に抱き着いてきた。


「すんすん……むっ、他の子の匂いがする」


「か、会長が詰め寄ってきたから……ごめん」


「……むう」


 へっ……?何をするつもりなんだ……?


「……ぎゅーっ」


 な、なんだ……?この可愛い生き物は……。


「……てるは渡さない」


「いや、俺物じゃないんだけど……」


「……てるは私のもの」


 あ、そういう意味ね……。

 ビックリした、完全にものみたいに扱われるのかと思った。


「……だ、だから……えと……他の子に目移りは赦さないから」


「そんなする訳……ないじゃん」


「……何その間?」


「海とかプール行ったらやっちゃうかも……?なんいででっ!!」


 睨まれながらまた耳を引っ張られる俺であった。

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