第7話 奏視点 気づかぬ本当の気持ち 2
手を叩いてしまった、その後悔だけがずっと頭に張り付いて、ただでさえ落ち込んでるのに更に気が沈んでいく。
別にてるにされるのなら良いはずなのに、突然すぎたからなのか分からないけど、拒絶してしまった。
「……てる」
私の頬に一滴の涙が流れ、小さく溜め息を吐いた。
☆
少し落ち着いたところで、教室に戻ろうと屋上から二階の自分達のクラスに向かう階段を降りていると、てるの声がうっすらだが、何処からか聞こえた。
まだ残ってる……ちゃんと謝ろう、そう決意した時だった。
「……は、まだ…………好きなんですか?」
「好きだよ」
私の中で何かが崩れる音がした。
てるは他に好きな人が……いる……?
「っ!」
嫌……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
そんなのやだ!いつも優しくしてくれるのは何だったの?
てるが居るだけで、いつも心がポカポカしてたのに……。
気付けば教室とは反対側に走り去って、薄暗い場所に辿り着いた。
「うぅっ……!ぐすっ……うっ……!」
てるは生まれた頃からずっと一緒で、幼稚園の頃からずっと人気者で、小学生の頃なんて運動会のかけっこでもずっと一番だった。
だから中学生になってからの、てるの人気っぷりは頷けたし今も少なからず、好意を抱く人が居ることは知ってた。
今まではそんなこと気にもしなかった、またずっと一緒に居てくれるって思ってたから。
「……てる」
でも、現実はそう甘くなかった。
「……なんだろ、このモヤモヤする気持ち」
胸の中に黒い霧みたいな、靄みたいなよく分からないこの感情は。
さっきの二人を見て、私はなんて思ったんだろう?なんて考えたんだろう?
「……イヤだった、のかな」
分からない、今まで考えたこともなかったことだから。
てるのことを考え出すと頭から離れなくて、胸が苦しい……。一体この感情は何なんだろう?
なんて考えていると、何処からかまたてるの声が聞こえてきた。
てるの声だと反応すると、きゅーっと胸が締め付けてきて、声が出なくて何だか顔が熱くなってきた。
「……やっと見つけた、探したよ」
「ごめん、なさい……」
何故かてるの顔がまっすぐ顔が見れない。
「こっちこそごめん……変なことしちゃって」
私は顔を小さく横に振った、再び静かな時間が流れる。
気付いたらてるが隣に居て、私の頭をてるの方へと抱き寄せた。
「……!」
「……さっきの話、聞いてた?」
「……少しだけ」
「そっか、俺さ好きな人が居るんだ」
えっ……
「すっごく頭良くて、料理も出来て……可愛くて」
それって私のクラスメイトの人?とは聞けなかった。
「普段は無口で物静かだけど表情豊かで、俺が近くに居ると一緒に笑ってくれる……そんな人」
少なくとも私じゃない、また胸が締め付けられる。
「……でも、気付いたのは今年入ってから」
今年から?どういうこと……?
「って、何言ってるんだろ俺……帰ろうぜ奏」
さっきの真剣な表情とは打って変わって、いつもの表情をするてる。
今度は手を握られてる。まるであの頃のように。
「……うんっ」
てるの好きな人ってどんな人なんだろう?気になって仕方がない私だった。
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