第26話 皆から悩みを相談される私
次の日…離れに相談に来たのは当のエヴラール先生だった。
「ど、どうもエヴラール先生…お久しぶりですね」
「オレリー様も。もしやまた胃腸の調子が悪いのでは?」
「ええ…ま、まぁ…」
次から次へと悩み相談に来る奴らがいるので疲れました。
先生は胃腸薬をくれて私に相談した。
「実は私も悩んでいまして…。なんか最近怪しい目つきでオトテール伯爵令息(クソ野郎)が私のことやたら見つめてきたりするんですよ…手を握られそうになったりもしましたから必死で避けましたけど…」
と言う。まぁ男からの好意なんて向けられても先生も困るだろうな。
「なんか…花束を渡されたりしました…凄く困りました」
そりゃそうだろうね。男から急に花束を渡されても。
「流石の私もオトテール伯爵令息の気持ちに応えるわけにはいかないのです…。オレリー様ならオトテール伯爵令息から聞いているかもしれませんが、私…実の姉に恋をしておりまして…」
「ああ、はい聞きましたよ。先生が禁断の恋をしているなら自分もしてもいいと思ってるようですよ」
と言うと眉間にシワが寄る先生。
「オレリー様…残念ですが私は今後姉と共にこの国を出ようと思うのです。というか姉と駆け落ちすることにしたんです」
「えっ!、片想いじゃなかったんですか!?先生は?」
「まぁ、それはギリギリ表向きでして、実は姉のルチルとは愛し合っておりそしてついに先日子供が宿ったことが判明したのです。医者である私だからこそいち早く気付いたので、二人で国を出ていくことになりました。なので侯爵家にお仕えすることももうなくなります。オレリー様には本当のことを知っておいてもらいたくて!」
なんちゅうこった!!
ここも子供できとんかい!!
「ともかくそういうことですので後は…オトテール伯爵には上手く伝えといてください!!」
と先生は無責任にも押し付けて胃腸薬をたくさん置いてった。
「大丈夫かオレリー?」
ぐったりした私を支えるヴァンサン。
「う、うんなんとか。なんで皆私に言いに来るんだろ?」
「オレリーが話しやすいからじゃない?」
「うーん…」
どうなんだそれは?
そして数日後に暗い顔してクソ野郎がやってきた。
「エヴラール先生が消えた…。しかも彼のお姉さんも一緒に消えたみたいで先生の家は大騒ぎしてる。僕はもうどうしたらいいのかわからない!!先生がいないなら生きてたってしょうがない!」
と懐から短剣を見せたのでヴァンサンがそれをいち早く蹴り上げ短剣は食器棚の下に潜った。
「おい、いい加減目を覚ませ!あんた、3人の子供がいるんだぞ!?産まれたら3人の父親なんだぞ!?悪いことは言わないから早く奥様かジャネット様と結婚しろ!」
とヴァンサンが言う。
クソ野郎は初めてハッとした。
「そうかそういえば僕の子供が3人も同時にできたんだった!…この所冷たくされていたけど皆まだ僕のこと好きかなぁ?」
知らんわ!!
数日後にはお母様とジャネット・リュシーがご立腹で訪ねてきた。
3人とももはやブチ切れていた。
「なんなの?あの人本当に!お姉さんがエヴラール先生と駆け落ちしたから今度は今までのこと許してくれって私達に頭を下げてきたのよ?」
とお母様。
「……お姉様…私達もはや許せません。流石にあんないい加減な男が父親になるだなんて嫌ですわ。結婚したって私達三人意外にもたくさん愛人を作りまくるに決まってますわ!!
ですから私達…3人で育てることにしましたの!」
「…その方が子供のためと思いまして…。もちろん奥様やジャネットさんに夜会で本当に良い人が見つかりましたら結婚なさってくれても良いという話になりました」
とリュシー達3人はもう迷いなくそう言い切った。
ようやくクソ野郎を捨てる気になったようだ。母は強しね。
「あのクソ野郎は本邸から荷物を纏めて出て行って綺麗に掃除させることにしたからオレリーちゃんはいつでも戻ってきていいのよ?」
「まぁ、お母様…そんなこと言って…子育て中私に侯爵家の仕事を押し付ける気なのでは?」
「あら!おほほほほ!そのままヴァンサンさんと結婚してしまってもいいのよ!?」
とお母様が笑うが私とヴァンサンは言った。
「「断る!!」」
と。
でも確かに3人が子供を産み落ち着くまでは私はお母様の代わりに領地経営を手伝うことになった。
そしてそれが終わったらヴァンサンと結婚して田舎の靴屋に戻って一緒に暮らすことにようやく話は纏まった。
もちろんクソ野郎はすごすごと荷物を纏めて侯爵家から出て行った。時期侯爵の座とエヴラール先生と言う好きな人と子供の父親の失格で相当な憔悴をしていた。
まぁこれでこのクソ野郎にも会うことはないだろう。最期にクソ野郎は私に
「今までご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした…。さようなら。幸せになってください!!オレリー様!!」
と言い残して数日後に伯爵家に戻った彼は首を吊り亡くなったと訃報が届いたのだった。
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